準々決勝でブラジル、アルゼンチンの両強国、そして日本を破ったパラグアイが消えたことで、一時漂っていた、コパアメリカ(南米選手権)の様相はすっかり消えた。片や、当初コンディションの問題が指摘された欧州勢は、ベスト4に3チームが駒を進めた。このブログは、準決勝第1戦の前、つまり決勝に進出するチームの顔を知らずに書いているのだが、最低でも欧州勢が決勝に進出することは確かだ。

個人的には、オランダ対ドイツの決勝戦になればいいなと思っているし、さらに言えば、オランダが74年西ドイツ大会の雪辱を果たしてくれることを願っているが、そうならなくても、仮にウルグアイがまさかの優勝を飾っても、何の不満もない。

ポートエリザベスの準々決勝、オランダ対ブラジル戦を見たことで、僕のお腹はすっかり満たされた状態にあるからだ。

何を隠そう、僕は「オランダ対ブラジル」が、数ある世の中の対戦の中で、最も好きなカード、最も見たいカードになる。いつの場合でも、だ。「外れ」がないからだ。

98年フランス大会準決勝、94年アメリカ大会準々決勝、生で見たわけではないが74年西ドイツ大会2次リーグ最終戦と、ワールドカップで対戦した過去3試合はいずれも接戦。名勝負だった。ともに駆け引きなく、迷わず攻めるので、噛み合いが良いのだ。もちろんそれでいてレベルが高い。スター選手が多くいることもあり、華も備えている。エンターテインメント性重視の僕の中では、このカードこそが「決勝戦」なのだ。

もっとも、毎度、毎度この両国の対戦が、ワールドカップ本大会の舞台で実現するわけではない。今回の対戦も98年以来3大会ぶり。実現する見込みの方が低いのだ。僕が初めてワールドカップに出かけたのは82年スペイン大会になるが、両者の対戦を見るのは、28年間追いかけて今回で3度目。出会う確率は恐ろしく低い。サッカーの世界の広さを改めて痛感させられる事実である。僕にとっては、待ちに待った対戦だった。

予想通りというか案の定、いま僕は、悪くない「読後感」に、襲われている。さらに言えば、結果に対しても、だ。良いサッカーをしたオランダが、勝利を収めたからだ。

「外攻め」に徹したオランダに対して、ブラジルは「内攻め」を余儀なくされた。「ネルソン・マンデラ・ベイ」眺めの良い記者席から、俯瞰で眺めると、両者の違いは鮮明になるのだった。つまり、効率という点で、オランダはブラジルを上回った。オランダとブラジルのもう一つの違いは、プレッシングの能力だ。出来るだけ高い位置で、ボールを奪取しようとする精神の差が、勝敗を分けたポイントのひとつと言えるが、それも攻撃のルートと相関関係にあった。

ブラジルは今大会イチとも言える素晴らしい出来で、開始早々からオランダを攻め立てたが、オランダはロッベンを軸に外攻めで対抗。ブラジル自慢の両サイドバックを後手に追いやった。

4-2-2-2的なブラジルが、両サイドバックを上げられなくなると、攻撃が真ん中に偏ることは、その布陣の表記からも一目瞭然になる。

サイドバックをどう上げるか。どう有効に使うか。対峙する相手の両ウイングと、どう向き合うか。それが上手く行けば、その前で構える両ウイング(両サイドハーフ)のアタック能力は生きるが、それができないと両ウイングは孤立する。単独での局面打開を強いられることになる。

ブラジルのように、サイドバックの前で開いて構える選手が見えにくい場合は、攻撃のルートは真ん中に偏りがちだ。

現在のスペインも、その傾向が強いチームで、準決勝でドイツにやられちゃうんじゃないかと推理する最大の理由でもある。

少し前までの日本(岡田ジャパン)も、ブラジル、スペイン系(さらに言えば、今大会のアルゼンチンもその仲間に完全に入る)のサッカーだった。こりゃダメだと、言いたくなったわけだが、本大会では突然、3FW系のサッカーに変更。これまでとは異なる趣で、本大会を戦った。ベスト16入りという好成績は、布陣の変更以外のなにものでもないと僕は思っているが、サイドバックの上げ方は、最後まで上手くなかった。