東京都市大学付属中学校・高等学校/写真提供:ONETES(首都圏模試センター)


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受験率18.06%の過去最高水準、2026年入試で「共学校人気」が再び加速

 2026年1月〜2月にかけて首都圏の各地で行われた中学入試が、2月中旬にはほぼ一段落しました。4年連続で私立・国立中学受験者数が「5万2000名台」を超え、受験率は「18.06%」という過去3番目の高さとなりました。

 変わらぬ中学受験ブームのもと、2026年の入試では、“サンデーショック”(2月1日が日曜日と重なったことによるプロテスタント系ミッションスクールの2月2日への入試日移行)の年ということもあり、さまざまな人気傾向の変化や目立った動向などが見られました。

 その中のひとつに「わが子中心の学校選び」という志向が、特に中堅の難易度の私立中に目立ってきたことが挙げられます。今回は、首都圏の中で、すべての入試回トータルの受験者数が目立って増加した東京都内の私立中高一貫校の男子校・女子校・共学校の「TOP5」を挙げ、その背景にある「選ばれた理由」をお伝えしていきましょう。

 2026年に東京都の私立中は全体的に受験者数を増やしましたが、以下のグラフにあるように、その増加分のほとんどは共学の私立中の受験者増によるものです。

 2021年〜2023年まで続いたコロナ禍の入試では、それ以前の「共学校(≒大学付属校)人気」から一転して、男子校・女子校の「男女別学校」への人気回帰が目立ちましたが、その後、再び「共学校人気」が高まる傾向が東京・神奈川でも目立ってきました。

資料提供:ONETES(首都圏模試センター)


攻玉社や暁星など「伝統男子校」の逆襲、独自教育とグローバル化が人気上昇の要因

 そうした状況でなお、受験者数を増加させた東京都内の私立男子校は、より求心力が強まったと見てよいでしょう。

資料提供:ONETES(首都圏模試センター)


 東京都市大学付属中(世田谷区)は、これまで設けられていた「I類」と「II類」のコース制とコース別入試を今年から発展的に解消して一本化。また、新たに「算数・理科」の2教科入試を導入したことで、受験生が得意な科目を生かして受験できるようになりました。これが好感を持たれ、受験者数が増加しました。

 この「算数・理科」入試を導入する私立中は男子校だけでなく、女子校、共学校にも少しずつ増えていますので、今後の傾向としても注目しておきたいところです。

 攻玉社中(品川区)は、東京と神奈川をつなぐ東急目黒線「不動前」駅から徒歩2分という交通至便な立地にある、創立160年の歴史を持つトラディショナルな男子進学校です。

 数学、オランダ語、航海術などを教授する蘭学塾「攻玉塾」をルーツに、明治期から多くの傑物を輩出してきた伝統を受け継ぎ、いまも大学進学と将来の目標に向けて、真っすぐに努力する校風が特徴です。

 その一方で、男子校の中では最も早くから「帰国生教育(入試)」に力を入れ、「国際学級」を設けてきた先進的な存在でもあります。

 同校は来春2027年入試から「国際学級(帰国生)入試」を1月10日から5日に変更します。「国・算」型と「英語1科」型どちらかの選択で行われてきた入試と受け入れ後の教育体制を、近年の受験生と保護者の希望に添った形で進化させることを公表しています。

 後述する城北中も「帰国生入試」の新設を公表していますので、「男子校のグローバル化(ダイバーシティ化)」は、こうした男子進学校でも今後の注目点といえるでしょう。

 京華中(文京区)は、難易度(入試予想偏差値)は中堅にあたる男子進学校ですが、面倒見が良く、6年間で入試時の偏差値以上に生徒の学力を伸ばしています。そして、「良い大学入試結果をあげている」学校として、毎年受験関係者へのアンケートでランキング上位に校名を連ねる私立中です。同系列の京華女子中とのキャンパス一体化なども好感を持たれているようです。

 城北中(板橋区)は、伝統的に“文武両道”と評されることの多いトラディショナルな男子進学校です。毎年安定した人気を集める私立中高一貫校ですが、やはり「男子を伸びやかに大きく成長させる」校風とノウハウをもつことが特徴です。

城北中学校・高等学校の2026年入試風景/写真提供:ONETES(首都圏模試センター)


 毎年、堅調な大学進学実績をあげる一方で、ICTやAI活用、グローバル教育の充実など、近年に求められる新たな教育展開にも積極的に取り組んでいます。

 昨年末には、2027年入試から、これまで2月4日に実施してきた第3回入試を廃止して2月1日午後に「算数1科入試」を新設し、さらには1月5日に帰国生選抜を新設することを公表して話題を集めています。新設される「算数1科入試」は、算数が得意な多くの男子受験生の注目を集めることになるでしょう。

 暁星中(千代田区)は、交通至便な都心の一等地にあり、小・中・高の一貫教育で、ファン層からの根強い人気を集めてきた名門の男子進学校です。

 現在は、2月2日と2月3日午後に2回の一般入試を行っていますが、2026年は両日ともに志願者・受験者数を増加させています。歌舞伎界をはじめ、幅広い分野で活躍するOBを輩出してきた同校の独特の魅力が見直されてきた印象を受けます。

山脇のSTEAM、頌栄の英検活用、女子学院…2026年女子校人気を二分した要素

 東京都の女子校で2026年に受験者数を増やしたTOP5は以下の私立中です。

資料提供:ONETES(首都圏模試センター)


 首都圏の女子校の中で最も人気増加が目立ったのが、山脇学園中(港区)です。

 近年は女子校でも、もともと定評のあった英語教育やグローバル教育に加え、STEAM(理系+アート)教育にも力を入れる私立中が徐々に増えつつあります。

 山脇学園中は赤坂という東京の都心部に位置するキャンパスながら、かつて山脇学園短期大学があったスペースを生かしたイングリッシュ・アイランド、サイエンス・アイランドなどの特別な施設を持ち、「英語入試」や「算数1科入試」を女子校ではいち早く導入したことも、そうした教育姿勢を象徴しています。2027年以降の入試でも注目される女子校です。

 それ以外の4校は、ミッションスクールと呼ばれるキリスト教主義の女子校が並んでいます。

 女子学院(千代田区)、立教女学院(杉並区)は、サンデーショックにより、例年の2月1日から2日に入試日を移行したこともあり、事前の予想通り受験者が増加しています。この2校は現在では希少な「1回しか入試(一般入試)を実施しない」難関女子校です。

 頌栄女子学院(港区)は、毎年ほとんど変わらない安定した人気を集める、キリスト教主義の女子校です。港区白金という都心の一等地に緑も多い広いキャンパスと蔦のからまる趣ある校舎を持つ、独特の雰囲気が魅力の学校です。

 2026年入試では、従来から行ってきた第1回(2月1日)・第2回(2月5日)の両方で、従来の4科目入試に加えて、「国語・算数と英語資格(英検)による見なし得点」での反映を行う「英語利用入試」を新設したことで話題を集めました。

 同校は古くから「帰国生の受け入れ(帰国生入試)」を積極的に行ってきた学校で、首都圏の女子校では最も多くの帰国生を毎年受け入れ、ハイレベルな英語教育を実践してきた特徴ある女子校です。時代のニーズを受けて「英検利用入試」を新設したことは、同校の教育姿勢を考えると自然な流れという見方もできるでしょう。

 晃華学園(調布市)は、カトリック系のミッションスクールで、「一人ひとりのタラント(神様から与えられた才能)を伸ばし、他者や社会のために役立てる」という、真摯で堅実な教育に定評のある女子校です。

晃華学園中学校高等学校/写真提供:ONETES(首都圏模試センター)


「他者との共生」をめざし「多文化共生の世界に開かれた品格ある女性」の育成を掲げる教育方針は、いま世界で求められるダイバーシティの創出という意味で時代のニーズともマッチしています。郊外に位置するため、都心部の小規模なカトリック校とは違って緑の多い広いキャンパスでのびやかな学校生活を送れることも魅力です。

 受験者数増加のTOP5には入っていない女子校の中では、「グローバル×STEAM×探究」と本格的な高大連携の先進校ともいえる富士見丘中(渋谷区)などが人気を高めていることも注目です。

桜丘や安田学園が示す、ICT活用や探求学習を深める「21世紀型教育」の成果

 2026年入試でエリア(都県)全体の受験者数が増加に向かった東京都で最も受験者数の増加が目立った学校の多くが、難易度(入試予想偏差値)では中堅に位置する共学校です。

資料提供:ONETES(首都圏模試センター)


 一部では「身の丈受験」とか「ゆる受験」などと呼ばれることもある、「あまり無理をせず、通える範囲で合格可能性の高そうなわが子にとっての良い学校を選ぶ」という学校選びの傾向は、この4〜5年で首都圏全体に広がり、そうした志向の家庭は年々増えてきました。当社ONETES(首都圏模試センター)では、“マッチング受験”と称していますが、言い換えると、「わが子中心の学校選び」という表現もできるでしょう。

 文教大学付属(品川区)は、2026年入試における都内の人気増加校の典型といえるでしょう。

 今年の人気動向のひとつとして、いわゆる「湾岸エリア」や「大井町エリア」、埼玉県と隣接する「王子エリア」、常磐線沿線の中学受験熱の高まりを担っている千葉の「柏市エリア」など、再開発や若い世代の移住などで、児童生徒数が増加しているエリアからの通学に便利な(通いやすい)私立中に人気増加傾向が見られました。

 文教大学付属は東急池上線・大井町線「旗の台駅」から徒歩3分という好立地にあり、先の「大井町エリア」の学校でもあります。

 また、近年の人気増加校の要因のひとつ、「グローバル×STEAM×探究」という、いま日本の教育の課題とされる教育の充実に積極的に取り組んでいる学校のひとつであり、なおかつ大学付属校という利点も併せ持っています。

 そのほかにも、人気増加校には、適性検査型入試や英語入試、思考力入試、プレゼンテーション入試、グループワーク入試などの「多様な入試」で、公立中高一貫校の志望者を含む、より多くの受験生に間口を開いている私立中も見られます。

 安田学園(墨田区)は、両国高校附属中白鷗高校附属中の2校の都立中高一貫校と近いこともあり、適性検査型入試では、都内で最多の受験者数を集める私立中のひとつです。同時に、4科で行われる教科型の入試(午後入試も含む)でも受験者数を増加させ、すべての入試回で志願者数が増加しています。

 近年の英語・グローバル教育と私学の中でもいち早く探究学習に力を入れてきた成果もあり、大学進学実績を着実に伸ばしています。2025年入試から中学の募集定員を増やしたことも、受験生と保護者にとって受験のしやすさにつながっています。

 青稜中(品川区)は、前述の大井町エリアで進学校として着実に成果を伸ばし、高校入試では日比谷高校をはじめとした都立のトップ進学校との併願受験校としてすでに定着しています。神奈川の武蔵小杉や東京の豊洲エリアなど、児童数の増えている新興住宅地エリアから通学しやすい大井町エリアの私立中高一貫校の進化の先駆けになっています。

 東京農業大学第一(世田谷区)は、この1〜2年で、それまで2月1日午後に行っていた第1回入試を同日午前に移行して求心力を高めたことをはじめ、高校募集を停止して中高一貫教育に力を入れる方向性を示したことが、人気増加の要因のひとつになっている印象です。

 東京農業大学の学校法人全体がもつ教育のリソースをフルに生かして、体験を重視する教育や、新たな学問分野につながる先進的な学びが、中学受験生の保護者にも好感を持たれているといえるでしょう。

 世田谷エリアも、都立中高一貫校がすべて高校募集を停止し、中高一貫体制になったことをむしろ追い風にして、中学受験ブームがさらに広がっているエリアです。

 桜丘(北区)は埼玉県と隣接し、周辺には近年の再開発地域もあって児童数が比較的多い「王子エリア」の私立中です。

桜丘中学・高等学校/写真提供:ONETES(首都圏模試センター)


 私立中高一貫校の先駆け的な存在であったICT活用をはじめ、やはり「グローバル×STEAM×探究」学習の重視など、中高生の未来につながる力を育てる教育に期待が寄せられている印象です。

 以上のように、本稿では東京都内で受験者数を増やした私立中「TOP5」の学校と、その人気増加の要因を紹介しました。そうした人気傾向からは、他の私立中を志望している受験生や保護者にとっても、リアルな人気のトレンドを感じ取っていただくことができるはずです。

 この先大きく変化する社会で「より良く生きる力」を育てるため、私立中高一貫校の教育はめざましい進化を遂げています。多くの小学生の保護者と、中学受験に関わるすべての方々に注目していただきたいと願っています。

筆者:北 一成