「守れるはずのお金を守れない」プロ野球選手の大きな“勘違い” 公認会計士試験に合格した元巨人選手が見た問題点
巨人→楽天の池田駿さんは超難関試験に合格したお金のプロ
2024年度、プロ野球選手の平均年俸は過去最高の4713万円に上る(日本プロ野球選手会調べ)。自分の腕1本で大金をつかめるという夢がある一方で、突然大金を得ることで舞い上がってしまう選手もいるのが現実だ。巨人と楽天でプレーし、引退後は超難関の公認会計士試験に合格した池田駿さんは、野球のプロ、お金のプロの双方の世界を知る希少な存在。現役時代から感じてきた「プロ野球選手とお金」の関係について教えてくれた。
「自分はプロに入ったからといって特に変わりませんでした。1万円の物を買うにも『高い』と思っていましたし」
自身の金銭感覚をこう口にする池田さんは、専修大から社会人野球のヤマハを経て、2016年のドラフト4位指名を受け巨人入りした。その後楽天に移籍し、2021年に自ら引退。2年間の猛勉強を経て、合格率が7%台という超難関の公認会計士試験に合格。野球とお金の世界で“プロ”となった珍しい経歴を持つ。その目でプロ野球界のお金の動きを振り返ると、思うことがあるという。
「選手には、なかなか税金の仕組みがわからないんだと思います。今は特にインボイス制度も始まりましたし。何億ももらっている選手は別ですが、年俸1千万円ももらっていない選手にとっては、守れるはずのお金を守れないということにもつながります」
プロ野球選手のような個人事業主とサラリーマンの大きな違いは、経費が認められる幅にある。経費は事業所得から差し引かれ、課税所得が減少して節税につながる。ただここでプロ野球選手は、大きな勘違いをしているケースが多いのではないかとみている。
経費は「使った分だけ返ってくる」わけではない
「お金は『使った分だけ返ってくる』と考えてるんじゃないのかなと思ったことはありますね。実際には経費として計上できるだけなのに。経費を作るためにお金を使っているようにさえ見えたこともあります」
高級車に乗る選手も多いが、これも「経費になるから」だとすればリスクのある行為だという。経費は、あくまで事業のために必要だから認められるもの。その範囲を逸脱するようなら、ぜいたく品として認められないケースもあるのだという。
さらに、池田さんは入団時の契約金などは“絶対使わない”と決めた口座に入金し、日常生活のために使う銀行口座とは分けていた。「よく、プロ野球選手の契約金は一般企業の退職金の前払いなどと言いますが、本当にそう考えていました」。実際にこのお金は、引退後の2年間、働かずに試験勉強に時間を費やそうとしたときに生活の原資となった。
池田さんが引退後の職業として公認会計士をイメージしたのも、プロ入り後に税理士から税金の仕組みについてレクチャーを受けた時に、自分があまりにも税金のことを知らないと気づいたからだった。
「自分が理解するだけではなく、他の選手にもやってあげられたら唯一無二ですよね」。 将来的には選手のお金周りだけでなく、キャリアのサポートまでできないかと考えている。「プロ野球は夢のある世界。ただ選ばれなければ行けない反面、多くの選手が戦力外になるのも現実なんです」。自らは入団時から引退後をイメージし、引退の1年前から公認会計士試験の勉強を始めていた池田さん。お金で困る選手が、少しでも少なくなるようにサポートしていく。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)