人工知能(AI)チップスタートアップのCerebrasが新規公開株式(IPO)を申請しました。IPOの目論見書によると、Cerebrasの2024年上半期の売上高は1億3640万ドル(約200億円)、純損失は6660万ドル(約96億円)です。

AI chipmaker Cerebras files for IPO to take on Nvidia

https://www.cnbc.com/2024/09/30/cerebras-files-for-ipo.html



Cerebrasは2016年に設立されたAIチップメーカーで、アメリカのカリフォルニア州サニーベールに拠点を置いています。共同創設者のアンドリュー・フェルドマンCEOは、過去にサーバースタートアップのSeaMicroを立ち上げ、3億3400万ドル(約480億円)でAMDに売却した人物でもあります。

CerebrasはAIモデルのトレーニングに利用されるチップの開発に取り組んでおり、同社のWafer-Scale Engine 3(WSE-3)は地球上で最速のAIチップであり、AIトレーニングに重宝されているNVIDIAのH100よりも多くのコア数とメモリを搭載しているそうです。なお、WSE-3は「物理的に巨大」という特徴も有しています。

4兆個のトランジスタを搭載した世界最速のAIチップ「WSE-3」をCerebrasが発表 - GIGAZINE



なお、CerebrasはWSE-3のようなAIチップを販売するだけでなく、独自のAIチップをベースとしたクラウドコンピューティングサービスも提供しています。

そんなCerebrasが、現地時間の2024年9月30日(月)にIPOの目論見書を公開しました。CerebrasはナスダックでのIPOを計画しており、ティッカーシンボルは「CBRS」となる予定です。

目論見書によると、Cerebrasの2024年上半期の売上高は前年同期比で1470%増となる1億3640万ドル、純損失は前年同期比で14%減の6660万ドルです。Cerebrasは2024年上半期には収益増加を支えるために人件費が増加したと報告しています。なお、Cerebrasの2024年第2四半期の売上高は6980万ドル(約100億円)、純損失は5090万ドル(約73億円)でした。

AIチップ業界は急成長が著しい競争の激しい市場で、CerebrasだけでなくAmazonやGoogle、Microsoftといった大手テクノロジー企業も加わっています。なお、Microsoftはアラブ首長国連邦最大のAI企業であるG42に、2023年のMicrosoftの収益の83%となる15億ドル(約2200億円)を出資しました。

CerebrasはNVIDIAだけでなくAMDやIntel、Microsoft、Googleを競合相手として挙げており、「社内で開発されたカスタム特定用途向け集積回路やさまざまな民間企業」も競合相手となると目論見書の中で語っています。



また、目論見書の中でCerebrasのAIチップはTSMCが製造を担当しており、G42が2025年3月までに14億3000万ドル(約2000億円)相当のAIチップを購入する契約を結んでいることも明かされました。なお、G42はCerebrasのクラスA株を5%未満所有しており、Cerebras製品の購入量に応じてさらに株式を購入するオプションも用意されているそうです。

なお、テクノロジー関連に強い投資銀行のモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスはどちらもCerebrasのIPOに関与していません。CerebrasのIPOを主導しているのは、シティグループとバークレイズです。

Cerebrasの最大の投資家はベンチャーキャピタルのFoundation Capitalで、次にEclipse Venturesが続きます。目論見書によると、Alpha Wave、Coatue、Altimeterといった企業もそれぞれ少なくとも5%のCerebras株を所有しています。個人としてCerebras株を5%以上保有しているのは同社の共同創設者であるフェルドマンCEOのみですが、OpenAIのサム・アルトマンCEOなどもCerebras株を保有しているそうです。