ドル円、143円台後半まで買い戻し パウエル議長は利下げを急がない姿勢を示す=NY為替概況

 きょうのNY為替市場でドル円は143円台後半まで買い戻されている。先週末に自民党総裁選で石破氏が新総裁に決まったことによる円高・日本株安の流れが週明けも続き、ドル円は一時141.60円付近まで急落していた。しかし、総裁前の146円台半ばから一気に5円程度急落したこともあり、海外市場に入って下げ過ぎ感からの買い戻しが出たようだ。急落していた日経平均先物も海外市場で下げ止まり、ドル円は143円台後半まで買い戻される展開。

 午後のパウエルFRB議長の講演を受けたドル高もドル円の買い戻しをフォロー。議長は利下げを急がない姿勢を改めて示した。短期金融市場では11月FOMCでの大幅利下げの確率を35%程度まで低下させている。

 今週金曜日の米雇用統計など、今週は重要指標の発表が目白押しになる。直近のFOMC委員からの発言は、FRBがこれまでのインフレ重視から雇用に軸足を移していることを示唆しており、パウエル議長はインフレと雇用の目標はおおむね均衡していると述べていた。

 ユーロドルは一旦1.12ドル台に上昇していたものの、1.12ドル台に上昇すると蓋を被せられる展開が続いている。NY時間に入って伸び悩み、パウエル議長の講演を受けてドル高で一時1.11ドル台前半まで値を落とした。

 本日はラガルドECB総裁が欧州議会で証言を行っていたが、インフレ目標達成に自信を示していた。市場では次回10月の追加利下げ期待が強まっている。ただ、エコノミストからは、ECBは2%を下回るインフレにもかかわらず、慎重な対応に留まる可能性が高いとの指摘も出ている。

 ユーロ圏の主要4カ国は全て9月のインフレは2%を下回った。これは経済指標の低迷と併せて10月の利下げを観測を後押ししている。しかし、ECBはすでに9月のインフレが比較的低水準になることを予想しており、第4四半期には再び上昇に転じると述べている。さらにコアインフレはかなり高水準で推移しており、経済の低迷についても特にドイツについては循環的なものではなく構造的なものだと述べている。つまり、ECBはインフレの進展を保護するべく慎重な対応に留まると見ており、次の利下げを12月まで待つ可能性が高いという。

 ポンドドルも終盤にやや伸び悩み、1.33ドル半ばに一時下落した。ただ、1.34ドル台で上値を抑えられてはいるものの、下押す動きもなく次の上昇気流を待っている状況のようだ。

 本日は第2四半期の英GDP改定値が公表され、従来の前期比0.6%から0.5%に下方改定されていたが、ポンドの反応は限定的だった。しかし、エコノミストからは英経済が依然として他国よりも良好な状態にあることを考えると当然の反応で、今年の英経済は他国をアウトパフォームすると述べている。経済協力開発機構(OECD)が今年の英成長見通しを1.1%に上方修正していたが、それでもやや悲観的に見えるという。

 ただ、今週はポンドの重要なイベントもなく、その方向性は明日のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)と金曜日の米雇用統計に左右される可能性が高いとも述べていた。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美