袴田巌さん

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件の裁判をやり直す再審公判で、静岡地裁は26日、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)に無罪判決を言い渡した。国井恒志裁判長は、確定判決が犯行着衣と認定した「5点の衣類」など検察側証拠について「三つの捏造がある」と断じた。冤罪を訴え続けた袴田さんは悲願の判決を得た。

 戦後、死刑事件の再審無罪は5例目。これまでの4例は検察が控訴せず確定している。袴田さんの再審で検察が控訴するかどうかが今後の焦点となる。

 国井裁判長は判決理由で、5点の衣類、その一つのズボンの端切れ、自白したとする調書にそれぞれ捏造があると指摘。5点の衣類は、捜査機関によって血痕が付けられ、隠されたとした。血痕の赤みについて「1年以上みそ漬けされた場合、赤みが残るとは認められない」とし、弁護側の主張を支持した。

 また、検察官調書に関し「肉体的・精神的苦痛を与えて供述を強制する非人道的な取り調べで作成された。実質的な捏造と評価できる」と述べた。

袴田巌さんの再審無罪判決を受け、静岡地裁前で笑顔の姉ひで子さん(左)=26日午後

みそタンクから見つかった「5点の衣類」(支援者の山崎俊樹さん提供)

支援者(右)と日課の散歩をする袴田巌さん。静岡地裁は再審判決公判で袴田さんに無罪を言い渡した=26日午後、浜松市

袴田巌さんに無罪を言い渡した静岡地裁の再審公判判決を受け、歓喜する支援者ら=26日午後、静岡市