「婚前交渉はNG」と教わったDAIGOの姉・影木栄貴がアニメキャラに大恋愛した理由「2次元の恋は私を傷つけない」

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ミュージシャンでタレントのDAIGOさんの姉で、漫画家の影木栄貴さん。44歳で婚活を始め、50歳で結婚するまでの道のりを綴ったエッセイ『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA)が話題です。お母さまから性について厳しくしつけられたことで、恋愛免疫力ゼロのまま大人になったという影木さんに、恋愛観と婚活を始めた理由を伺いました。(全3回中の2回)

【写真】「婚前交渉NG」と教えられ28歳で初めて彼氏ができた影木栄貴さん ほか(全14枚)

「婚前交渉はいけないもの」と刷り込まれ

漫画編集者として働いていたころの影木さん

── 比較的、普通の家庭に育ったものの、男女交際や性的なことについては“超箱入り”だったとか。お母さまから性について厳しくしつけられていたそうですが、「婚前交渉はNG」と教えられたということでしょうか?

影木さん:そうです。当時はそういった直接的な言葉はなかったですけど、高校生のときに「結婚する前に男の人と何かあると、別れた後に脅されたりするかもしれない」と。今でいうリベンジポルノをされると遠回しに言われたわけです。とにかく結婚前に関係を持つのはダメ!って言いたいことは伝わってきました。父も同じ考えで、小さいころからエッチな番組とか本とか、そういった類のものはいっさい見せてもらえなくて。とはいえ、性欲は3大要求のひとつじゃないですか。そこで、独自に探す旅に出たわけです(笑)。

── 中学生のときに、いとこの幽木遊貴さん(金丸信氏と竹下登氏の孫であり、のちに影木さんと一緒に同人活動を始める)から同人誌のBLの存在を教えてもらい、ハマったそうですね。親から「性的なものはダメ」と言われるほど、こっそりBLなどにハマっていったという。

影木さん:BLを読んだり描いたりしても、基本的に私自身に傷がつくわけじゃないですよね。だから、BLは別にいいじゃない?と思っていました。

── とはいえ、安全な範囲内で楽しんでいるわけで、ある意味、真面目ですよね。その後、28歳で初めて彼ができたものの3か月で別れ、30歳でつき合った彼とも長くは続かなかったそうですね。理由は何だったと思いますか?

影木さん:自分にコンプレックスがあったのが大きかったのかなと思います。貧乳だし、ムダ毛が濃い目なのも気にしていて。なにより、自分の股間の形を見たときに…なんてグロいんだと衝撃を受けてしまって…。

── わかります…!そう感じる人は多いかもしれません。

影木さん:こんなものを見せたら、相手に引かれるんじゃないかと思っちゃったんです。それで、28歳で初めてつき合った彼とは最後までできませんでした。それが、私の身体的コンプレックスが原因なんじゃないかと思うと、そのこと自体もショックで。その後、30歳のときにつき合った彼と初体験をしたのですが…結局、性の不一致でお別れしました。

── コンプレックスがあったから、最終的に心も体も許せなかったのでしょうか。

影木さん:そういうところがあった気がします。もともと男性に対する免疫がなさすぎたうえに、小学生のころに痴漢に遭った経験から、どこかで生身の男性が気持ち悪いと感じていたんです。つき合った彼にも問題はあったけれど、私自身のコンプレックスや変なプライド、正しくない性知識や、生身の男性への嫌悪感などなど、いろいろな原因が重なって、長続きしなかったんじゃないかな…。

── 2番目の彼と別れた理由のひとつがアニメ『機動戦士ガンダムSEED』のキャラクターであるアスラン・ザラに恋をしてしまったから、だそうですね。仕事がまったく手につかなくなり、連載漫画を中断してアスランの同人誌を描きまくっていたとか(笑)。3次元の恋と2次元への恋との違いは何でしたか?

影木さん:2次元の恋は私を傷つけないんです。彼らに対してプライドもコンプレックスも何もないので、とことん愛せますよね。私がアスラン・ザラにしたいことを漫画にして描いて、同人誌として出す。それに共感してくれた人たちが買ってくれる。最高な循環じゃん!みたいな(笑)。

── 誰も傷つけないですもんね。

影木さん:3次元の恋は、やっぱり些細なことでも傷つくことが絶対ある。だけど、2次元の恋はそれがないのが安心できるのかなと思います。

発作で倒れ「ひとりでいるのが怖くなった」

── 30代はアスラン・ザラに人生一番という大恋愛をされて。その後、44歳で本格的に婚活を始めたそうですが、きっかけは何でしたか?

影木さん:漫画に全力を注いで無茶していたこともあって、43歳のときに自律神経に不調をきたし、突然発作に襲われて家で倒れたことがあったんです。そのときは実家に戻っていたので、両親に助けられてなんとかなりました。でも、DAIGOは結婚して実家を出てしまったし、これで両親が順番通り先に亡くなったら私はひとりぼっちになる。倒れたときは死ぬほど苦しかったので、ひとりで発作に襲われたら、絶対にパニックになるだろうと思いました。

44歳で婚活を始め、50歳にしてめでたく結婚!

── それほど強い発作を経験したのですね。

影木さん:すごかったです。発作の症状はその後もたびたび起こったので、家に誰もいないと不安で心臓がバクバクして、怖かった時期がありました。そういう体験をすると、“おひとりさま”という選択肢がありえなくなってしまった。もしも両親が私が死ぬまで生きていてくれたら、私は一生結婚しなくてもよかったんですけど。どう考えても順番的に私は残されてしまうので、ひとりは絶対に嫌!と思って、婚活を始めることに。自由でいたいけれど、とても寂しがり屋でひとりだと死んじゃうっていう。わがままなんですけどね。

今も実家で暮らしていて、両親から「働くニート」と言われている私ですが、この前、父が心不全で入院したときには、私が家族のサポートを完璧にこなしたんですよ。それで両親は、思いのほか私が役に立つと気づいたみたいです(笑)。

PROFILE 影木栄貴さん

えいき・えいき。漫画家。1996年『運命にKISS』(新書館)でデビュー。以後、少女漫画、BL漫画、百合漫画、エッセイ漫画などで活動中。現在は原作・原案を多く手掛ける。代表作『LOVE STAGE!!』はアニメ化、映画化、タイではドラマ化もされた。今年5月に、50歳で結婚した経緯をつづったエッセイ『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA)を上梓。母方の祖父は第74代内閣総理大臣の故竹下登、弟にBREAKERZのボーカル・DAIGO、義妹は北川景子。

取材・文/小新井知子 写真提供/影木栄貴、KADOKAWA