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今後はフリーのプロデューサー

 今年1月期に放送され社会現象となったTBS系金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」を担当した磯山晶プロデューサーが同局を退社することが分かり、テレビ業界に波紋が広がっている。今後はフリーのプロデューサーとしてドラマを手がけるというが、主な舞台は世界最大の動画配信サービスNetflixとみられている。

【写真】TBSを電撃退社した“敏腕”プロデューサー

 放送記者がこう振り返る。

「磯山プロデューサーが手がけた阿部サダヲ主演の『不適切にもほどがある!』は宮藤官九郎の脚本によるオリジナル作品。低成長期の令和と安定成長期の昭和をタイムスリップしながら、コンプライアンスの厳しい令和における不適切な表現について幅広い議論を呼び起こすとともに、家族のあり方や夫婦愛について考えさせられるストーリーでした。平均視聴率は7.4%とまずまずでしたし、それ以上にコアな視聴者が熱心に考察を繰り広げたことで話題となりました」

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 実は「不適切にもほどがある!」には“元ネタ”があったようだ。それは2023年6月22日に全世界配信されたTBS制作によるNetflixドラマ「離婚しようよ」。脚本は宮藤官九郎と大石静で、プロデューサーはTBSスパークルの磯山晶プロデューサーだった。驚くのはその共通性だという。

「『離婚しようよ』も厳しすぎるコンプライアンスへの問題提起にあふれています。第1話冒頭から日本酒のCM撮影シーンが登場し『女房のお酌で今夜も純愛』という台詞に代理店が『“女房”というのは今時どうなのか。“パートナー”はいかがか』と監督に懇願する姿が描かれています。女房にお酌をさせるという古い価値観とその古い価値観への郷愁、あるいは日本の家制度と自由恋愛といった二項対立がクッキリと描かれていて見ごたえがあります」(前出の放送記者)

 確かに、昭和と令和の社会的な雰囲気の違いを対比した「ふてほど」との共通点が多いようだ。

「しかも、出演している仲里依紗、古田新太、錦戸亮、山本耕史らメインキャストがそっくり『ふてほど』に出演しています。『離婚しようよ』は東京と愛媛という地理的な距離、『ふてほど』はそれを昭和と令和という時間軸の距離に形を変えた続編ともいえます。両作品ともラストで、視聴者に呼びかける言葉が『寛容』だったことには驚きましたね。それほどテーマ性はそっくりです」(同)

日曜劇場に莫大な予算も……

 同局関係者によると、磯山プロデューサーはかねて「低予算のドラマをたくさん作っても、そのうち淘汰される。企画を練ってある程度お金をかけて確信を持って作りたい」などとTBS経営陣に理解を求めていたが、改革は進まなかったようだ。

離婚しようよ」のエグゼクティブプロデューサー・高橋信一氏は元日活の映像プロデューサー。Netflix Japan入社後はドラマシリーズ「新聞記者」「ヒヤマケンタロウの妊娠」「離婚しようよ」「御手洗家、炎上する」のほか、映画「浅草キッド」、世界的な大ヒットとなった「シティハンター」などを手がけてきた。その高橋氏とのコラボの中で独立への決意を固めていったのか。

 スポーツ紙の芸能デスクがこう指摘する。

「『離婚しようよ』は海外では『Let's Get Divorced』のタイトルで配信されており、配信直後から国内では4週連続でTOP10入り。そのうち2回が1位で、台湾でも1度9位に食い込みました。TBSの局内事情としては日曜劇場には莫大な予算を注ぎ込む一方、火曜・金曜ドラマは低予算状態が続いています。こうした不均衡に不満を持つプロデューサーが今後、次々と磯山プロデューサーの後を追うかもしれません」

 56歳という年齢から管理職として後進の育成も期待されていたはずだ。だが、「ドラマの予算配分において、TBSならではの根深い問題が残る限り、後進を育てようにも手だてがありません。クリエーターとしてドラマを作り続けられる環境を選んだのは当然でしょう」(前出の芸能デスク)。

 磯山プロデューサーについては一部で「Netflixへ転職」と報じられたが、実際にはフリーとしてNetflixと作品ごとに契約をしていくようだ。現在の所属はグループ内の映像制作会社「TBSスパークル」で、現在有給休暇を消化中という。

「『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『マンハッタンラブストーリー』などの人気作で、タッグを組んだ磯山プロデューサーとクドカンの信頼関係は固い。退社後の第1弾は、クドカン作品になる可能性が高いです。クドカンは小池栄子と仲野太賀が出演するフジテレビ系7月期ドラマ『新宿野戦病院』の完全オリジナル脚本を執筆中ですから、その次あたりで退社後の磯山プロデューサーとの初仕事が実現しそうです。1話あたり3000万円程度の民放ドラマに比べ、Netflixは億円単位で予算が付きます。磯山×クドカン×最新VFX(視覚効果)がそろい踏みすれば、極めてクオリティの高い作品が期待できるでしょう」(同)

 格段にバージョンアップした「ふてほど」の“続編”を観ることができる日は近い。

デイリー新潮編集部