ホストの売掛払えず風俗店に…「北の大地」にまで広がる被害、支援団体が旭川支部立ち上げ
悪質ホスト問題が東京・歌舞伎町から全国へと広がりを見せる中、被害者支援にあたる一般社団法人「青母連」の北海道・旭川支部がこのほど発足した。支部長の男性は「北海道中の被害相談を受けて行きたい」と意気込みを語り、青母連本部は「被害相談の多い北海道での支部立ち上げは意義がある」と全面的にバックアップしていく意向を示している。（ジャーナリスト・富岡悠希）
●「困った人を助ける活動をもっとやりたい」
支部長となり、北海道旭川市で6月12日午後に記者会見を開いたのは、一般社団法人北海道探偵協会代表理事の岸本和幸さん（51）。この日に先立ち、筆者はオンラインで岸本さんにインタビュー取材した。
岸本さんは探偵として、浮気・不倫・ストーカー調査や人間関係のトラブル対処に当たりながら、2011年にNPO法人「北海道駆け込み相談所」を設立した。
この相談所では、本業の知見を活かしつつ、地域パトロールやいじめ・DVなどの困りごと相談に乗ってきた。旭川の本部以外に札幌・紋別・小樽・岩内の4カ所に支部を構え、現在は十数人のメンバーで活動している。
岸本さんは上記のような活動をしつつ、十数年来、メディアを通して、青母連代表で公益社団法人「日本駆け込み寺」を創設した玄秀盛さんを追ってきた。
「困った人を助ける活動をもっとやりたい」と考えていた岸本さんは今春、上京して玄さんと1時間ほど面会。その過程で、悪質ホスト問題の深刻さを知り、「微力でも役立ちたい」と支部の立ち上げに動いた。
●北海道・すすきのから被害相談が増えてきた
悪質ホスト問題は、ホストクラブが集中する歌舞伎町が発火点になり、昨秋以降、国会などでも取り上げられる社会問題となってきた。
今春、歌舞伎町の主だったホストクラブが売掛金廃止などの「自主ルール」を導入したが、生き残りをはかる店やホストは、ほかの地域に移っている。青母連によると、最近は、札幌すすきのと大阪のミナミ・キタの両地域から、新たな被害相談が目立って増えてきた。
岸本さんの元にも、すでに相談所メンバーから悪質ホストの被害報告が上がっている。支部を構える地域で、メンバーの娘の友人である女性が、ホストにハマって多額の借金を作り、札幌の性風俗店で働いているという。その女性の両親も「いまだ事態を把握できてない」（岸本さん）という中、女性の状況が心配されている。
北海道は広大だが、岸本さんは「旭川から札幌まで、高速道路を使えば1時半程度で行ける。活動範囲は道内全域です」と意気込む。
●「若年女性を悪質ホストがいじめている」という問題意識
こうした岸本さんの熱意を支えるのは「（若年女性という）弱いものを（悪質ホストが）いじめている」という問題意識だ。
すぐに問題対処にあたる必要があるが、岸本さんには強みがある。本業の探偵業や相談所の活動を通して、すでに地域や行政・警察にネットワークを有している。また、張り込みなどの調査活動やトラブル現場の対処法も身に着けているのも心強い。
それでも、岸本さんは「まだまだ未熟なので、青母連本部に指導していただきながら、一つひとつ事案に対応していきたい」と謙虚だ。
●行政の問題意識が東京に追いついていない
青母連本部の事務局長・田中芳秀さんによると、北海道の被害ケースは、道内で完結して、女性が本州などに流れないという。
ホストクラブが多いのは札幌すすきので、そこでホストにハマった女性は、函館や旭川など道内各地の性風俗店に働きに行く。
こうして世間の狭い道内を周遊する分、女性の身バレリスクが高くなるので、娘を助けたい両親などが行政・警察に相談することを躊躇してしまうというのだ。
独特な「内内の関係」（田中さん）が、声を上げにくい構図に繋がっているという。こうした背景がある分、田中さんは、岸本さんによる旭川支部の立ち上げに期待する。
「今回、旭川支部の立ち上げで動いてみて、行政・警察などの意識が東京には追いついていない部分があるのがわかった。被害相談の多い北海道での支部立ち上げは意義がある。岸本さんたちの動きによって、道内全体の意識改革にもつなげていきたい」
