「ゴミのデザインはそこで捨てられるゴミの量に影響するのか?」を調べるために、都市の景観に溶け込むグレー1色のゴミ、派手にオレンジ色で塗ったゴミ、ポイ捨て防止を伝える子どもの絵をプリントしたゴミの3種類を設置して捨てられたゴミの量を比較した結果を、スウェーデンのイェブレ大学で建築工学やエネルギーシステムを専門とする研究者らが示しています。

Managing waste behavior by manipulating the normative appeal of trash bins: Lessons from an urban field experiment - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667378923000585

Rubbish bins designed with children's drawings rejected by residents

https://phys.org/news/2023-11-rubbish-bins-children-residents.html



イェブレ大学の研究者らは、ゴミの外観を変更することで通行人への印象を変化させ、ポイ捨てを減らすことができると考えて、スウェーデンの中央部にある都市・イェブレの街中に設置されているゴミ9つの外観を変更しました。

研究者らが設置したゴミは以下の3種類。一番左の「A」は、従来街中に設置されていたグレーのゴミ。「B」は幼い子どもたちが描いたポイ捨て防止ポスターをプリントしたゴミ。「C」は目立つようにオレンジ色で彩色されたものです。



3種類のゴミを3つずつ設置した上で、研究者らはゴミ内のゴミの重量と体積を1カ月間毎日測定しました。期間中、ゴミの位置は入れ替えられ、すべてのタイプのゴミがすべての設置場所に置かれるように調整されています。

結果として、最も効果的だったのはオレンジ色のゴミで、平均で2kg以上のゴミを集めました。続いて灰色のゴミは1.5kgのゴミが捨てられましたが、子どもの絵が描かれたゴミは平均0.5kgと大きく下回っています。

研究に参加した心理学教授のパトリック・ソルクヴィスト氏は「事前の推測では、従来の目立たないグレーのゴミよりも、オレンジ色のゴミと子どもの絵が描かれたゴミの方がより多くのゴ​​ミを集めるだろうと考えていました。しかし結果は、オレンジ色は高い効果を見せましたが、子どもの絵は驚くほど弱い効果でした。その理由はおそらく、子どもの絵はポイ捨て防止の規範的なメッセージになっていたため、人々に反発心を誘発したためだと推測されます。人々の行動に影響を与えようとする場合、規範的なメッセージを使用することは必ずしも効果的な方法ではありません」と語っています。

子どもの絵が描かれたゴミの効果が弱かったのは、それがゴミだと気付かれにくかったという可能性があります。そこで研究チームは補助的な調査として、ゴミの写真を数人の参加者に見せました。以下のグラフは、左から従来のグレー、子どもの絵、オレンジ色のゴミに関する棒グラフで、縦軸は「写真の中にゴミがあると気付くまでの時間」を示しています。グラフによると、オレンジが最も気付かれやすいですが、子どもの絵のゴミはグレーのゴミよりも発見されやすかったことがわかります。



事前の推測と実験結果に大きな差異があったことから、「この研究結果は、さまざまな解決策を大規模に導入する前に、その有効性を評価することの重要性を強調しています」とソルクヴィスト氏は指摘しています。

オレンジ色のゴミは目立つため、街を行く人々に「ゴミがあるならそこで捨てよう」と思わせる効果が高かったと考えられます。しかし、オレンジ色の派手なゴミは、グレーのゴミと比べて都市環境に溶け込まないという問題点もあります。一方で、都市環境を考慮して効果の薄いゴミを設置しても、ポイ捨てが増加して景観は悪化することはもちろん、深刻な環境汚染にもつながります。「景観を考慮しながら実用性を最大限に高める、スタイリッシュなソリューションが必要です」とソルクヴィスト氏は述べています。