3月20日に韓国で行なわれた開幕戦から4月28日まで、大谷翔平はロサンゼルス・ドジャースの一員として30試合を経過した。

 そのすべてに「2番・DH」として出場。139打席で打率.336(122打数41安打)と出塁率.399、OPS(出塁率+長打率)1.038を記録した。長打はホームランが7本、三塁打が1本、二塁打が14本の計22本。5盗塁を決め、盗塁死は一度もない。


大谷翔平のバッティングに変化あり? photo by Getty Images

 まだレギュラーシーズンの6分の1強、あるいは5分の1弱を終えたところだが、ロサンゼルス・エンゼルスでプレーした過去6シーズンと比べると、今シーズン最初の30試合の打率.336は、自己最高を記録した昨シーズンの打率.304を大きく上回っている。出塁率.399とOPS1.038は、昨シーズンの出塁率.412とOPS1.066に次いで高い。

 各シーズン最初の出場30試合のなかでも、今シーズンの数値は高水準だ。

 それまで、30試合の時点で打率.290以上は、2018年の.291(103打数30安打)と2023年の.308(117打数36安打)。出塁率.370以上は、2018年の.376と2023年の.374。OPS.900以上は、2018年の.930と2021年の.954、2023年の.921だった。

 出場30試合を終えた時点の7本塁打は、2021年の10本に次いで多く、2019年と2023年に並ぶ。30試合で7本塁打以上の過去3度のうち、2019年のシーズン本塁打は18本ながら、2021年と2023年は40本を超え、46本塁打と44本塁打を記録した。

 最初の30試合で二塁打14本と長打22本は、どちらも、2021年の9本と21本より多い。シーズン最多は、二塁打が2022年の30本、長打は2021年の80本だ。

 MLB公式のスタットキャストのデータを見ていくと、今シーズンは右方向の打球が多い。3分割した方向のうち、プル(右)が47.5%、ストレート(中)が31.3%、オポジット(左)は21.2%だ。蛇足ながら、左打者の大谷は右方向の打球がプル、右打者は左方向の打球がプルとなる。

 今シーズンを含む通算の打球方向は、プルが37.9%、ストレートが36.1%、オポジットは25.3%。過去2シーズンも、通算とあまり変わらない。

【今シーズンの打球は「これまでよりも速い」】

 ただ、今シーズンはいつになくプル・ヒッティングの割合が高いというわけではない。2021年は今シーズンと似ていて、それぞれ46.6%、30.6%、22.9%だった。2021年の場合、最初の30試合の方向は、39.8%、36.4%、23.9%なので、プルの割合は最初の30試合よりも31試合目以降のほうが高い。

 ちなみにドジャースのプル・ヒッターは、大谷ではなく、同じ左打者のマックス・マンシーだ。今シーズンのマンシーの打球方向は、プルが60.7%、ストレートとオポジットは19.7%ずつ。昨シーズンもプルの打球が半数以上を占めていた。

 また、今シーズンの大谷は、グラウンドボール(ゴロ)が少なく、ラインドライブ(ライナー)の打球が多い。こちらの割合は、グラウンドボールが32.3%、ラインドライブが36.4%、フライは27.3%だ。

 過去6シーズン中5シーズンは、グラウンドボールの割合が42.5%を超えていた。最も低い2021年でも、ほぼ40%の39.7%だ。ラインドライブは、最も高かった2019年が30.9%、2番目は2018年の27.6%。2020年〜2023年の4シーズンは、いずれも25%に達していない。

 今シーズンはラインドライブの割合が高く、それが二塁打の量産となっている──と読み取ることもできる。

 打球のスピードは、例年どおり極めて速い。過去3シーズンの平均初速は、2021年が93.6マイル(約150.6キロ)、2022年が92.9マイル(約149.5キロ)、2023年は94.4マイル(約151.9キロ)。今シーズンは94.5マイル(約152.0キロ)だ。

 今シーズンの打球は「これまでよりも速い」と言ってもいいかもしれない。初速115マイル(約185.1キロ)以上の当たりは、2021年〜2023年の各シーズンが10本、5本、11本であるのに対し、今シーズンはすでに4本を数える。

【新たな傾向として空振りの少なさも目につく】

 大谷の打球初速トップ5は、2024年4月27日のシングルヒットが119.2マイル(約191.8キロ)、2022年4月10日の二塁打が119.1マイル(約191.7キロ)、2021年4月12日の二塁打(1試合2二塁打の1本目)が119.0マイル(約191.5キロ)、2024年4月23日のホームランが118.7マイル(約191.0キロ)、2023年8月29日の二塁打が118.6マイル(約190.9キロ)だ。5本中2本、最速と4番目に速い打球を今年4月に打っている。

 これらのうちで最速の打球は、菊池雄星(トロント・ブルージェイズ)が投げた98.2マイル(約158.0キロ)のフォーシームを打ち返したものだ。菊池の被打球の初速はアウトになったものも含め、通算が平均90.5マイル(約145.6キロ)、今シーズンは平均89.4マイル(約143.9キロ)だ。速い打球を打たれることが多い投手ではない。

 今シーズンの4月28日を終えた時点で、118マイル(約189.9キロ)以上の打球は、メジャーリーグ全体で2本しかない。大谷がひとりで2本、ほかの選手たちは合計0本だ。3番目に速い打球は、ブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(トロント・ブルージェイズ)が打った二塁打の117.6マイル(約189.3キロ)。この打球は大谷の119.2マイルと同じ試合で記録された。

 大谷のほかの傾向としては、空振りの少なさが目につく。今シーズンの空振り率は23.2%だ。ストライクゾーン内とゾーン外のどちらも、例年と比べて空振りが少ない。これまでの各シーズンは、2021年の空振り率35.0%を筆頭に、27%を下回ったことがない。

 その結果として、今シーズンの三振率は18.0%にとどまっている。過去6シーズン中、最も三振率が高かったのは2021年の29.6%、最も低かったのは2023年の23.9%だ。

【メディアが騒いでいた得点圏打率も上昇】

 一方、今シーズンの四球率10.1%は、2022年の10.8%に近く、2021年の15.0%と2023年の15.2%からすると、かなり低い。もっともこの差は、敬遠四球が大きく影響している。四球率15%以上の両シーズンとも、敬遠四球は20以上。今シーズンは、まだゼロだ。

 なお、もともと懸念する類(たぐい)の数値ではないと思うが、得点圏打率も上昇している。最初の19打数の得点圏打率.053(1安打)に対し、その後の15打数の得点圏打率.333(5安打)だ。

 今後、数値は変動していくものの、ここまでの結果と内容からすると、今シーズンはこれまで以上のシーズン成績を残してもおかしくない。