「今年こそやせる!」という希望をかなえるなら、体についた脂は「油」で落としましょう(写真:NOV/PIXTA)

新年の目標に「健康のためにも今年こそはやせる」と意気込んだものの、よく思い返せば、昨年も、その前も同じように決意をした、そんな人も少なくないのではないでしょうか。

自身もなかなかやせられなかったという医師の齋藤真理子氏は「休みが明けると何かと忙しくなることが多いので、やると決めたダイエット法も忘れることが多く、そのまま何もしなくなる人が多い。だからこそ、効果はゆるやかでも本当に簡単で、続けられるダイエット法を試すべき」と指摘します。そこで今回「今年こそはやせる」という願いを成就させるための方法を、齋藤氏の著書『勝手に内臓脂肪が落ちていく食事術』から、一部編集、抜粋して、紹介します。

忙しくてもできるダイエットじゃないと意味がない

一度は、何かしらダイエットを試して、いつの間にかやらなくなった、挫折してしまったという経験があるという方にお聞きします。なぜダイエットをやめてしまったのですか?

おそらく、無数の理由(言い訳?)が頭の中に思い浮かんだのではないでしょうか。何かしらの理由をつけて、いつのまにかやめてしまう。

その繰り返し。特に、忙しいときほど、その傾向が強いように感じます。かつての私もそうでした。「健康のためには、やせたほうがいいですよ」と患者さんには言いながらも、いざ自分がダイエットをしようとしたときには、仕事や子育ての忙しさを理由にサボってしまい「明日から、明日からは」とずるずる先延ばしにしていました。

このままではダメだと感じ、忙しくても、続けられるダイエット方法はないか、実践と研究の末に編み出したのが「齋藤式満腹やせメソッド」です。

この「齋藤式満腹やせメソッド」のカギともいえるものが、MCTオイルです。

MCTと英語なので、ちょっとケミカルな感じがしますが、MCTは中鎖脂肪酸の英語名 Medium Chain Triglycerideの略称で、母乳や牛乳などの乳製品、さらにはココナッツなどのヤシ科植物の種実に含まれる成分です。さらに言えば、MCTオイルが食卓に並んだのはまだ歴史が浅いですが、50年以上、医療や介護、スポーツなどの現場では使われてきたものなのです。

セレブが手に入れた体質を簡単に手に入れる

このMCTオイルによって簡単に内臓脂肪が勝手に燃える「脂肪燃焼体質」になるのです。

以前ハリウッドで流行った「ケトジェニックダイエット」というものを聞いたことがないでしょうか? これは、糖質を極端に制限して、体内のエネルギー不足を起こすことによって、脂肪を「ケトン体」という物質に変えてエネルギーにする「脂質代謝」を呼び覚ますというダイエット法です。

ところが、この「ケトジェニックダイエット」は極端なカロリー制限や糖質制限を行うため、心臓に負担がかかり、一歩間違うと心臓発作の危険性が高まるケースもあると指摘されました。

何より、糖質をほとんど摂らない過度な食事制限は、適度なタンパク質と十分な脂質を摂らないと体が飢餓状態になるため、しっかりした栄養の知識や、食事の管理が不可欠でした。

そのため、健康意識の高いセレブやインフルエンサーたちは、「ケトジェニックダイエット」を行うときに、運動や栄養の専属トレーナーをつけて管理していた人も多かったと聞きます。そんなこと、お金もかかりますし、なかなかできるものではありませんよね。

そこで、MCTオイルです。MCTオイルは分子構造が小さいため体内で素早く消化されるため、多少の糖質を摂ったとしても、脂質代謝の機能(脂肪燃焼回路)が目覚め、体内の脂肪を使って、どんどんと「ケトン体」を作るようになるのです。

つまり「ケトジェニックダイエット」と違い、ケトン体を作り出すのに激しい糖質制限は必要ありません。

MCTオイルをかければ、大量に食べるのはダメですが、糖質を適度に食べる分には大丈夫。糖質をエネルギーにする機能(糖燃焼回路)と脂肪燃焼回路の両方が作動し、脂肪がエネルギーとして減っていくという状態になります。

「脂」を落とす「油」でやせる

実際、糖質だけを摂ったときよりも、MCTオイルを一緒に食べた方が、糖質もエネルギーとして早く燃焼され、体脂肪になりにくいという研究結果が発表されています。

また、「ケトン体」は、エネルギー代謝をつかさどるミトコンドリアが活性化するという効果があり、それによって基礎代謝が上がります。

「ケトン体」になることによって脂肪が減って基礎代謝が上がる。このダブルの効果によって、体は、勝手に脂肪が燃える体「脂肪燃焼体質」へと変身していきます。

MCTオイルを摂るだけで、ハリウッドセレブたちがお金と多くの苦労をして手に入れようとした、「脂肪燃焼体質」にラクに近づけてしまうのです。

では、どうやってMCTを使っていくのがよいのか。方法は簡単、いろいろな料理にかけるだけです。

「良薬口に苦し」さながらのそんなイメージは、MCTオイルには無縁。基本的には、香り、匂いはほぼなく、味も感じない、「すべてが透明な油」こそが、MCTオイル。和洋中、どんなお料理にかけても、「えっ、本当に入ってる?」と感じるぐらい、味を邪魔しなかったという感想が多くの方から聞かれます。

オイルというと、スープやサラダ、パスタという洋風なものに合うイメージがあるかもしれませんが、お味噌汁やご飯などにも非常によく合います。

コーヒーや紅茶などのドリンク、ヨーグルトや果物などのデザートにかけても違和感なく摂れるはずです。

また、無味といいましたが、かけることによってオイルのコクが加わり、おいしさがひと段階レベルアップしているようにも感じる人も多くいるようです。

オイルをかけるとなると脂っこくてしつこくなるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、非常にさっぱりとしてきれのいいコクなので、老若男女問わず楽しめると思います。

食べる量は、少量で大丈夫

1つ注意点としては、最初はちょっとの量からスタートしてください。

MCTオイルは腸内環境にもダイレクトに働きかけます。

そのため、BMIが高めで、今まで糖質を多く摂ってきた方や脂質のエネルギー代謝がしにくい体質の方は、お腹が少々ゆるくなることもあるので要注意です。

まずは、そのような症状がみられずに、さらに脂肪燃焼効果も出たというデータがある、1日小さじ1/2からはじめてみるとよいでしょう。

そこから体調を見ながら、1週間後に小さじ1/2を2回、3回と増やしていってください。内臓脂肪を燃やす効果を高める場合、小さじ1/2の量を1日3回摂れるようになるとよいでしょう。

そして、1週間ぐらいそれを続けてみて、何も異常がないようでしたら、1回の量を小さじ1に増やし、徐々に量を増やしながら、1回の量を大さじ1までなら増やしてもいいですが、注意しておきたいのが、たくさんかければそれだけ効果が出るわけではないということです。

ちなみに、カロリーに換算すると1gで9㎉あります。カロリーを摂る=太るというわけでは必ずしもありませんが、大量に摂取するのは避けたほうがよいでしょう。

たとえ少量でも、摂った後、体がポカポカしてきて、代謝が上がっているのを実感できると思います。

あせらずに、体調を鑑みながら、楽しんでトライしてください。

MCTオイルの素晴らしいところは、さまざまな健康効果を示す研究結果が論文で出ているうえに、ネガティブな論文を見かけないところ。

そのため、私も安心してすすめられるのですが、先ほど説明した、慣れるまでにお腹がゆるくなることがあることと、空腹時の摂取を控えるところだけ要注意。

MCTオイルの効果を100%引き出す方法

MCTオイルに限らず、油は胃腸に負担をかけやすい食品です。空腹時に摂取すると、胃腸が刺激され不快感を覚えることも。空腹時は、少し何かを口にしてからMCTオイルを摂るといいでしょう。

そのほか健康面以外の注意点を2つほど紹介しておきます。

●ホットコーヒーや温かいお料理はOK、でも高温すぎるものにはご注意を

MCTオイルは発煙点が低いため、一般的な食用油の代わりとして、炒める・揚げるなどの加熱調理に使ってしまうと煙が出てしまいます。


調理したものの仕上げに「かける」「混ぜる」のがおすすめです。

●入れる容器には気をつけて

カップラーメンやコーヒーなどによく使われているポリスチレン製の容器、フタなどにかけると、容器やフタにヒビが入ったり割れたりということがあるようです。以上の注意点を守ることで、楽しく「MCTオイル生活」が送れるでしょう。

また、糖質を少しでもオフすれば、MCTオイルによるダイエット効果は上がります。なかでもおすすめなのが、「満腹豆腐ご飯」「ラク鳥ひき肉ご飯」です。お米1合に、目盛り1合分まで水を入れ、木綿豆腐1丁(300g)もしくは、鶏ひき肉200gを入れて炊くだけ。木綿豆腐のときだけ、お米1合分まで水を入れたときに、大さじ1杯分だけ、水を減らしてください。これで、主食の糖質を約4割カットすることができます。繰り返しになりますが、ダイエットは続かないと意味がないので、まったく糖質を摂らないという激しいダイエット法ではなく、効果がゆるやかでも、自分がずっと続けられる方法で糖質を減らしてみてください。

(齋藤 真理子 : 医学博士、日本形成外科学会専門医)