オリックス・横山聖也【写真:橋本健吾】

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オリックスは今年のドラフト会議で1位から4位まで高校生を指名

 各球団の戦力補強も大詰めを迎えている。FA、トレード、新助っ人は即戦力として期待されるが、将来のチームを背負う幹となる選手はドラフト会議。今年はリーグ3連覇を果たしたオリックスが12球団唯一、1位?4位まで高校生を指名した。山本由伸、山崎福也の“2枚看板”の流出が決定的の中で、なぜ独自路線を貫けたのか。

「もちろん、喉から手が出るほど即戦力投手は欲しかったです。今年は大学生が豊作で高い評価をしていた投手はたくさんいました。ただ、何度も中嶋監督、福良GMと何度もミーティングをして今いる選手たち、まだ経験の少ない選手たちが活躍してくれる。あとは即戦力となる社会人3人は確実に獲れる。だからこそ、高校生でいけた」

 そう語るのは牧田勝吾編成部副部長だ。今年のドラフトでは1位に強肩、強打の遊撃手として横山聖哉内野手(上田西)を指名すると、2位からは河内康介投手(聖カタリナ学園)、152キロ左腕の東松快征投手(享栄)、強肩が魅力の堀柊那捕手(報徳学園)と将来性豊かな高校生を獲得した。

 ただ、ドラ1横山のポジションは紅林弘太郎内野手と同じ遊撃手。年齢的にも被ることになるが「周りの声を聞くと『紅林がいるのに?』という声が多かった。ですが、今年の戦い方をみれば“ポジションが被る”というのはそこまでリスクではないことを再確認しました」と口にする。

 今シーズン、紅林は調子が上がらず2軍スタート。代わり大卒2年目の野口智哉内野手が「1番・遊撃」で開幕スタメンに名を連ねた。結果的に紅林はキャリアハイとなる打率.275をマークしたが、143試合の長いスパンで考えると内外野を守る野口の存在は大きかったという。

「中嶋監督の起用、打順の組み方にフィットする選手。どんな選手でもシーズンフルで万全の状態でいくことはない。色々なシチュエーションを想定しないといけない。あと、横山君は高校生ですが肩の強さ、フットワークは今年のアマチュアでトップ評価させてもらった。1位でしか獲れないと判断していました」

選手、スカウト、コーチ、監督を経験した福良GMの存在

 常勝軍団を築き上げた中嶋監督は固定概念のない、臨機応変な野球で勝利を積み重ねてきた。2021年には高卒2年目の紅林を正遊撃手として、宮城大弥投手を先発ローテの一角として起用。今ではチームに欠かせない存在になっている。その他にも今年の日本シリーズ第1戦では高卒2年目の池田陵真外野手を1番に抜擢するなど、若手が活躍できる土俵は揃っている。

 何年も追いかけ、選手を獲得したスカウトからすれば、これほど嬉しいことはない。チャンスをもらい、結果を残せば早期から1軍の舞台で活躍することができる。「高校生は体を作って3、4年……」という球界の常識は覆りつつある。

「監督は全員を戦力として考えてくれている。嬉しいことにアマチュア側からも『オリックスさんに預けたい』との“いい言葉”しか聞かない。スカウティングもしやすくいい方向、流れができている。このような環境を作ってくれて我々は感謝しかないです」

 編成トップに立つ福良淳一GMの存在も大きい。選手、スカウト、コーチ、監督を経験しているだけに「我々の気持ちも、現場の気持ちも分かっている。全て経験しているからこそ、チームは機能しやすいと感じています。ドラフトの結果は数年後にしか分からない。ただ、失敗はない。全てが経験になると思っています」と牧田編成部副部長。リーグ4連覇を目指す2024年シーズンにどのような新戦力が現れるのか、今から楽しみだ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)