楽天証券もSBI証券も、新NISAを前に熾烈な争いを展開する。左は三木谷浩史・楽天グループ会長兼社長、右は北尾吉孝・SBIホールディングス会長兼社長(ともに撮影:風間仁一郎)

2024年1月4日からいよいよ「新NISA(少額投資非課税制度)」がスタートする。投資信託を売って利益をあげても、分配金をもらっても、1人生涯1800万円までは無税という、大盤振る舞いの新制度だ。

週刊東洋経済10月21日号では『新NISA革命』を特集。新NISAの仕組み、公募投信ランキングベスト200から、6000本ある投信のうちプロがお薦めの7本まで、資産運用の現場で今何が起きているか、その最前線を追った。


新NISAで資産形成をしたいなら、新たにNISAの専用口座を作る必要があるが、1人で1金融機関しか口座を持てない。2024年から非課税期間が恒久化されるため、生涯付き合うつもりで金融機関を選ぶ必要がある。

では具体的にどの金融機関を選べばいいか。銀行は投資信託のみ取り扱うので、個別株にも投資したいなら、証券会社、それもネット証券を選ぶのが得策だろう。

店頭でのアドバイスがない分、スマホ1つで取引を完結できるネット証券は、投信の本数が豊富だ。NISAでは金融庁が選んだ投信が投資対象。例えば、つみたてNISAの対象は約250本だが、既存の大手証券であれば数十本程度のところ、ネット証券なら200本程度はそろう。

米国株は2024年から売買手数料「無料」に

NISA口座の開設に当たっては、「投資したい商品」や「手数料」、さらに「ポイント還元」などの付加価値サービスもチェックしたい。大手ネット証券5社の特徴を比較してみよう(以下の内容は原則として現行NISAである)。

まず一般NISAの投信の品ぞろえは、SBI証券と楽天証券が2500本超で頭一つ抜けている。つみたてNISAの投信は大手5社が170本から200本程度で大差ない。近年需要が高まる米国株も、auカブコム証券と松井証券が24年から追加し、全5社で売買できるようになる。

また売買手数料は日本株や投信ではいずれも無料(米国株は2024年から無料)。もともと投信は最低100円から買付や積立ができるが、今や日本株でも数百円から投資できる「1株投資」は、松井証券を除く4社が対応可能である。

定期買付も初心者にはうれしい仕組みで、SBI証券ではつみたてNISAの積立頻度を毎日・毎週・毎月から選べる。

SBI証券はTポイント、Vポイントなど選択肢が豊富



近年ではポイント還元も目が離せない。ポイントは再投資や買い物などにも利用できるため、プラスアルファのサービスとして重視される。注目すべきは、投信をクレジットカードで購入するとポイントが貯まる、「クレカ積立」だ。

SBI証券では7種類のカードを使えるが、利用者数最大の三井住友カードは、積立金額の0.5〜5%のポイントを付与。ポイントを1%もらえるゴールドカードの場合、年間利用が100万円以上なら、翌年以降の年会費5500円が無料になる(クレカ積立分は年会費無料特典の対象外)。

“ポイ活”のヘビーユーザーが多いとされる楽天証券は、楽天カードで0.5〜1%のポイントを付与。クレカ積立とは別に楽天キャッシュでの積立もできるため、楽天カードからのチャージで0.5%を付与すれば、最大1.5%のポイントも手に入る。楽天カードと楽天キャッシュとの併用で月10万円まで積立可能なのは他社にないサービスだ。

auカブコム証券は1%だが、auユーザーが「auマネ活プラン」に加入しauPAYゴールドカードで決済すると、最大3%のポイント(13カ月以降2%)付与と、条件が合えば高還元も期待できる。なおマネックス証券はマネックスカード決済で1.1%である。

貯めたポイントはコンビニや楽天市場でも使える

またクレカ積立だけでなく、投信の月額保有残高に応じてポイントが付くサービスも各社は用意。SBI証券は最大0.25%、auカブコム証券は最大0.24%で、11月から開始する松井証券は最大1%を付与。楽天証券では月末に初めて基準残高に達した際に一定のポイントが与えられる。

貯めたポイントは各社ともNISAなどの投資に利用可能。SBI証券は現在Vポイントで購入できるのは投信のスポット買付のみだが、来春のTポイントとの統合で利便性が高まりそうだ。

投資を機に生活回りで優遇を受けられるサービスも見逃せない。SBI証券では投信の取引を条件に、対象のコンビニなどで三井住友カードを使うと、ポイント還元率がアップ。楽天証券では投信などのポイント投資で楽天市場での買い物の還元率が高くなる。

目下、各社ともにNISA口座開設でのポイント付与や、クレカ積立でのポイント還元率引き上げなど、新規顧客獲得に向けたキャンペーンを展開中だ。まだ現時点では新NISAの取扱商品などがすべて固まったわけではない。じっくりと研究し自身に合ったネット証券を選んでほしい。


(滝田 知歩 : マネーライター)