中国製EVの輸出急増は、ヨーロッパ市場などで波紋を広げている。写真は中国の港で船積みを待つ上海汽車集団製のEV「MG4」(同社ウェブサイトより)

中国製自動車の輸出拡大の勢いが止まらない。中国汽車工業協会が10月11日に発表したデータによれば、2023年1月から9月までの中国の自動車輸出台数は累計338万8000台と、前年同期の1.6倍に増加した。そのうち「新エネルギー車」の輸出台数は同2倍の82万5000台に達し、輸出全体の24%を占めた。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、プラグインハイブリッド車[PHV]、燃料電池車[FCV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

「2023年の通年では、輸出台数は450万台に達する可能性がある」。中国汽車工業協会の副総工程師を務める許海東氏は、そう予想する。

EUで相殺関税課されるリスク

とはいえ、今後のさらなる輸出拡大には不透明感も漂い始めた。EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会が、中国製EVに対する(中国政府の)補助金の調査に乗り出したからだ。

10月4日付の欧州委員会の声明によれば、この調査は2022年10月1日から2023年9月30日までの期間にEUに輸出された9人乗り以下の中国製EVを対象にしている。その結果次第では、EU域内で販売される中国製EVに相殺関税が課される可能性がある。

欧州委員会の説明によれば、調査の焦点は2つある。第1に、中国製EVが(中国政府から)補助金を受け取っていたかどうか。第2に、仮に補助金を受け取っていた場合、それらの中国製EVがヨーロッパの自動車産業に損害を与えたかどうかだ。


中国汽車工業協会は欧州委員会に対し、保護主義的な政策対応を慎むよう求める声明を出した(写真は同協会のウェブサイトより)

「中国製EVの海外市場での販売価格は、中国市場での販売価格よりも高い。このため、欧州委員会は反ダンピング調査を持ち出すことができず、反補助金調査に切り替えざるを得なかった。これは一種の保護貿易であり、ヨーロッパ・メーカーのEVを支援するのが目的だ」。中国汽車工業協会の許氏は、そう分析する。

エンジン車はロシア向け好調

許氏によれば、中国汽車工業協会は(業界団体として)中国メーカーが欧州委員会の調査に抗弁するための準備を積極的に支援している。

中国メーカーは、自社製のEVがEUの自動車産業に損害を与えていないことを示す証拠を提出しなければならず、このプロセスは一般的に長い時間を要する。しかし抗弁に成功すれば、欧州委員会の調査は中止になる可能性もある。


本記事は「財新」の提供記事です

一方、エンジン車の輸出に関しては(西側諸国の自動車メーカーが撤退した)ロシア向けの好調が続く。中国海関総署(税関)のデータによれば、中国製自動車の2023年1月から8月までのロシア向け輸出台数は54万4000台と、前年同期の7.7倍に急増。それらの大部分がガソリンまたはディーゼルを燃料とするエンジン車だ。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は10月11日

(財新 Biz&Tech)