SNSで話題になり、人気や評価の高いコスメを好んで買う人は多いものです(写真:Fast&Slow / PIXTA)

「バズコスメ」とは複数のSNSで話題が連鎖し、その結果、売り上げが向上した化粧品のこと。SNS総フォロワー数575万人超の美容メディア「MimiTV」で事業責任者を務める中谷友里さんは300点のバズコスメを調査・分析した結果、「SNS売れ」した商品に共通する6つの法則を見つけました。

そのうちの1つ「『3つのフェーズ』で話題化している」という法則について、中谷さんの著書『バスコスメ300点を徹底分析してわかった 美容×SNSマーケティング 「売れ」の法則』から一部を抜粋・再編集してお届けします。

発売前から美容オタクにリーチ

ユーザーのインサイトを的確に把握するため、私たちは「美容感度」というものさしを取り入れています。美容に関するモチベーションや情報収集・発信力などから、生活者を下記の3つに分類しました。

美容オタク: 美容に対するモチベーションが特に高く、能動的に美容情報を収集&発信している

美容ミーハー:美容・食・服・音楽など、美容に限定せずトレンド情報を総合的にチェックしている

美容マス:美容商材に対するこだわりは弱く、人気商品や定番品を利用する


美容感度の違いで生活者を3つに分類(出所:『バズコスメ300点を徹底分析してわかった 美容×SNSマーケティング 「売れ」の法則』)

美容メディア「MimiTV」が美容情報に対するアクションについて15〜44歳の女性3607名を対象にインターネット調査をおこない、その結果をもとに対象者を分類したところ、「美容オタク」が全体の15%、「美容ミーハー」が34%、「美容マス」が51%という結果になりました。

それではバズコスメが実際に販売実績を上げていく裏側で何が起きているかを探っていきましょう。「SNS売れ」を実現させるためには複数のSNSで連鎖的に話題が広がっている状態を作り出す必要があります。

実際に「複数のSNSで話題の連鎖」が起きているとき、具体的に「誰が」「いつ」「どこで」「どのような」発話(投稿)をしているのでしょうか。それを説明するためにまず、商品の「発売前」「発売時」「発売後」の3つのフェーズに分けて考えていきます。

連鎖の起点となるような話題を創出するには、「発売前」の期待値向上と情報拡散がとにかく重要です。私たちはこのフェーズを「評判形成期」と呼んでいます。そしてこのフェーズでの発話を担うのはアーリーアダプターである美容オタクです。

その発話の多くは、美容オタクが愛用するX(旧Twitter)で見られます。あらゆるSNSプラットフォームを使いこなす「美容オタク」ですが、「本音のプラットフォームであること」、「検索機能の使いやすさ」、「オタク向けのプラットフォームである」といった理由から、特にXを好んで活用する傾向が見られます。

商品の発売前から生活者、特に美容オタクと美容ミーハーの期待値をいかに最大限高めておけるかが、SNSマーケティングの成否を分けると言っても過言ではありません。

発売後はSNSで話題が加速

そして「評判形成期」の次のフェーズが「発売時」における「話題化」です。商品の発売前に評判形成の基盤が築かれていると、発売時に、実際に商品を購入・使用した人たちの口コミが数多く投稿されていきます。

すでに美容オタクや美容ミーハーの間で評判となっており期待値が高いからこそ、実際にその商品を買って試した感想をいち早くシェアしたいというモチベーションが生まれるのです。

このフェーズになると、情報を受け取り拡散していくのが美容ミーハーメインになってくるため、XだけでなくInstagramでも投稿が多く上がるようになります。

こうして「SNSで話題らしい」「最新トレンド」美容商品として、より多くの美容ミーハーに認識されるようになり関連する投稿も増えていきます。


「SNS売れ」する商品はどのように話題となり、売り上げを出していくのか(出所:『バズコスメ300点を徹底分析してわかった 美容×SNSマーケティング 「売れ」の法則』)

また、インフルエンサーによる投稿も「話題化」を加速させる要素の1つです。

インフルエンサーの中でも感度が「美容オタク」の美容系インフルエンサーであれば1つ前の「評判形成」のフェーズで投稿することが多いですが、それ以外のインフルエンサーであればSNS上である程度話題になった「話題化」のフェーズにおいて、トレンドネタとして取り上げるケースが多く見られます。

最後に、発売後の「評判定着期」のフェーズに入ります。「評判形成期」「話題化」を通して醸成されたSNS上での評判や熱量が、一過性のものに終わらず継続し定着していくフェーズです。

ここでは美容ミーハーを中心に、より多くの人がさまざまなプラットフォームで「SNSで話題の〇〇、使ってみた」というように口コミを投稿するようになっていきます。Xで始まりInstagramで広まった話題がYouTubeやTikTokにも波及し、さらにはメディアや店頭でも「SNSで話題の商品」として取り上げられるようになります。

このようにSNSでの盛り上がりが継続し、商品の人気が定着し定番化した頃、美容マスが「これが人気、定番らしい」「これを選んでおけば失敗しなさそう」と認識し購買に動くのです。

人気定着までの3フェーズ

3つのフェーズを経て話題化し、評判定着した商品の具体的な事例をあげてみましょう。

プチプラコスメで有名な某化粧品メーカーから、フェイスパウダーの限定品が発売されることになりました。同メーカーの人気アイテムの姉妹品的な立ち位置だったこと、発売前にマーケティング施策としてギフティングやPR投稿をおこなっていたことなどから、美容オタクの間で話題となっていました(評判形成期)。

そして発売されると使用感の良さや機能性の高さを評価する投稿がInstagramで多く見られるようになります(話題化)。店頭で売り切れる日もあり「手に入らない!」とさらに話題を集めます。

その後、TikTokやYouTubeで「どのくらいトーンアップできるか」「毛穴が隠れるって本当?」といったその商品の検証動画が続々と上がるようになりました。

発売からしばらく経った今でもフェイスパウダーの「徹底比較」や「ランキング」などのまとめ投稿に頻出するなど、定番商品として人気が続いています(評判定着期)。


ここまで読んでいただいて、「3つのフェーズは理解できたけど、商品はもう発売してしまっている……」と思われた方もいるかもしれません。

「評判形成期」を商品の「発売前」としているのはイメージしやすくするためのものであり、すでに発売済の商品であっても、「発売時」を「SNSでの盛り上がりを最大化したいとき」と置き換え、「〇月〇日から」とタイミングを設定することで、そこを目指して話題の連鎖を生み出していくことは可能です。

「評判形成」「話題化」「評判定着」のフローは1回こなしたら終わりではなく、繰り返しおこなうことで売り上げを伸ばし続けることができるのです。

(中谷 友里 : 美容SNSメディア「MimiTV」事業責任者・エグゼクティブプランナー)