正大投資は市場環境の悪化を受け、上海証券取引所への上場申請を自ら取り下げた。写真は同社子会社の飼料工場(正大投資のウェブサイトより)

中国の畜産大手の正大投資(CPインベストメント)が、上海証券取引所でのIPO(新規株式公開)を断念したことがわかった。10月8日、同取引所の情報開示を通じて、同社が自ら上場申請を取り下げていたことが明らかになった。

正大投資のIPOの目論見書によれば、同社は最大5億6700万株を売り出して150億元(約3072億円)を調達する計画だった。そのうち107億6300万元(約2204億円)を広東省湛江市、湖北省威寧市など中国国内17カ所の豚肉加工場と養豚場に投資し、残りは運転資金に充てるとしていた。

タイのCPグループが間接支配

1996年設立の正大投資は、養豚用飼料の生産・販売および自社施設での養豚・食肉加工が事業の2本柱だ。同社の経営権はタイ最大のコングロマリットであるCP(チャロン・ポカパン)グループが間接的に支配する。

CPグループは、タイ籍華僑の謝易初(エークチョー・チエンワノン)氏と謝少飛(チョンチャルーン・チエンワノン)氏が1921年に創業。中国市場に早くから進出し、投資分野は畜産、食品、小売りを中心に製薬、不動産、金融、メディアなど多岐にわたる。

前述の目論見書によれば、正大投資の2021年の業績は売上高が464億5800万元(約9513億円)、純利益が5億500万元(約103億円)だった。同社の飼料生産量は同業の上場会社との比較で中国3位、豚の出荷頭数でも業界のトップ5に入っている。


中国国内の豚肉価格は直近のピークの半値近くに落ち込んでいる。写真は正大投資の子会社の養豚場(同社ウェブサイトより)

財新記者の取材に対し、正大投資は上場申請取り下げの具体的な理由についてコメントを避けた。業界関係者の間では、上場断念の背景には最近の豚肉価格の低迷があるとの見方が一般的だ。

9月以降だけで32社が上場断念

市場調査会社の卓創資訊のデータによれば、中国国内の豚肉の平均価格(生きた豚の出荷ベース)は2022年1〜3月期の時点で1キログラム当たり11.70元(約240円)だったが、同年10月には2倍以上の同26元(約532円)超に高騰した。

ところが、2022年10〜12月期に入ると需給バランスが崩れ、価格は下落に転じた。2023年に入ってからも冴えない値動きが続き、6月末時点の平均価格は13.74元(約281円)とピークの半値近くに落ち込んでいる。


本記事は「財新」の提供記事です

中国の国内景気の減速を受け、このところ上場申請を自ら取り下げる企業が相次いでいる。その数は9月以降だけで32社に上り、正大投資のほかにも鶏肉料理チェーンの徳州扒鶏、中国茶の製茶・小売りの八馬茶業、加工食品の鮮美来食品など、食品および飲食関連の企業が目立つ。

(財新記者:祝宇歓、孫嫣然)
※原文の配信は10月11日

(財新 Biz&Tech)