子どもの反抗期に悩む親は多いといいますが、親の接し方のほうに問題があるかもしれません(写真:マハロ/PIXTA)

【質問】

中2の息子と小5の娘がいます。2人とも、ここ最近反抗が激しく困っています。思春期なのでしょうがないと思いつつも日々がバトルです。子どもがまだ小さい頃、親の言うことを聞いていたのが懐かしいです。こうしてだんだんと大人になると思うのですが、毎日のことで親の私も参っています。どのように反抗期の子どもに対応していけばいいでしょうか?

(仮名:大竹さん)

男の子は中2の9月、女の子は小5で変わる

筆者はこれまで35年間、保護者面談や母親からの相談への回答を行ってきましたが、子どもの思春期や反抗期についての相談もかなりの数になります。それだけ親として対応が難しい時期ということだと考えられます。

思春期は、親である自分もかつて通ってきた道ですが、親になると親視点で子どもをコントロールすることがあり、いつしか子ども視点で思春期を見ることを忘れてしまいます。

そもそも思春期とは何歳ぐらいのことを言うのでしょうか。かつては13歳頃からとされていましたが、今は10歳頃からとされているようです。また、女子のほうが幅があり、8〜9歳頃から17〜18歳頃まで、男子の思春期は10〜14歳頃が一般的なようです。

筆者は母親を対象としたセミナーを年間180回ほど行っており、その中で思春期の子がいる場合、次のようなことを伝えています。

「思春期といっても幅がありますが、だいたい男の子は中2の9月で変わります。女の子は小5で変わります

もちろん個人差があるため、その年に必ず変わるというものではありませんが、これまで4000人以上の小中学生を直接指導してきた経験から、そのような傾向があることを感じています。ですから大竹さんのお子さんは、まさに子どもから大人への切り替わる思春期のど真ん中にいると思われます。

さて、この思春期という言葉と同時期に使われる言葉として「反抗期」という言葉があります。筆者は特にこの「反抗期」という言葉に着目しています。というのも、保護者から「うちの子、反抗期なので何を言っても反発されて、コミュニケーションを取ることが難しいです」といった相談が後を絶たないからなのです。

「反抗期」という言葉を使う場合、その内実として「子どもが反抗するのは、反抗期であることが原因だ」と思っている節があるようなのです。つまり、反抗期という時期だから、子どもは反抗していると思っているようなのです。

確かにそのような側面がないこともありません。子どもから大人へと体が変わる時期であり、ホルモンバランスの変化から、ちょっとしたことでイライラが出てくることもあるでしょう。また、先輩、後輩のように異年齢間での交流が始まり、そこから反抗心が芽生えるケースもあります。しかし、果たしてそれらだけが原因で子どもは反抗しているのかどうか、疑わしい面もあります。

反抗されることには、理由がある

反抗期が原因で子どもの扱いが難しいという親御さんに対して、筆者は次のように回答してきました。

反抗されるということは、反抗されるような言い方をしているからかもしれません。もし反抗される言い方をしなければ子どもは反抗しません。思春期を迎えるまでは反抗するという概念がなかったため、嫌々やっていただけであって、以前も子どもは反抗したいと思っていたかもしれないのです。でも子どもは成長し、“ようやく反抗することができた”ということを意味するのではないでしょうか」

大抵、このような回答を聞くと、親御さんたちはとても驚かれます。子どもの反抗期に問題があったと思っていたのに、実は親の対応が間違っていたのではないかと言われたからです。

そもそも冷静に考えれば、反抗の前には、何らかの“アクション”がなければ反抗のしようがありません。その“アクション”とは「親からのある言動」ではないかということです。

筆者は、子どもの反抗期は子どもから親への“次のメッセージ”であると考えています。

「自分へのこれまでの対応と変えてほしい」

つまり「これまでのような子ども扱いではなく、大人として扱ってもらいたい」というメッセージであるということです。

もしそれが読み取れたならば、親はこれまでとは異なった対応をする必要があります。では、どのように変えていけばいいでしょうか。「大人として」とは具体的にどのような対応でしょうか。

それは次のような状態で接していくということを意味していると考えています。

「思春期の子には特に、人格を持った一人の人間として尊重しつつ対応する」

この言葉を聞いて、「いや、まだ子どもなんだから、尊重以前に親の言う通りにさせる必要がある」と思う人もいるかもしれません。

確かに、子どもは大人ほど人生経験がありません。間違ったことをしたり、生活習慣が乱れたりするかもしれません。その場合は教えてあげる必要があります。

しかし、教えるというのは、“上から目線”の代表的声かけである「指示」「命令」「脅迫」「説得」ではありません。教えることは、叱る怒るとも異なります。もし、叱り口調で子どもに“教えて”いるとしたら、子どもは、教えられているとは思わず、それは怒られているとしか受け取りません

思春期を迎えた子どもと“大人”として接する

特に思春期の子どもは、自我がはっきりしてきており、上から目線の言葉を特に嫌います。親としては教えていると思っていても実際はそうではなく、親子関係を悪化させるだけに至っているかもしれないのです。

親は子どもが小さい頃から育ててきた経緯があるため、子どもを自分より下の存在だと思いがちです。しかし、子どもは親のことを上の立場の人とは思っていない可能性があります。例えば、親に対してタメ口をきいたり、反発したり、言うことを聞かないことがあります。もし、親を上の立場であると認識していれば、江戸時代の武家の家庭のように、タメ口や反発などありえません。

ということは、子ども側から見れば、上の立場でもない人から、「指示」「命令」「脅迫」「説得」をなぜ受けなければいけないのかと思っているかもしれないのです。そのように受け取れば、思春期を迎えた子どもが反抗することも当然の結果であると考えられます。

以上のように、思春期は単なる子どもから大人への変わり目であるというだけでなく、反抗という形で、「親のこれまでの対応を変えてほしいというメッセージ」であると考えてみてください。時には、子どもを叱る怒ることもあるかもしれませんが、通常は一人の人格を持った人間として接してみるのです。

そのような接し方をしていると、親がイラッとするような反抗は少なくなると思います。そして、逆に、思春期を迎えた子どもと「“大人”としての楽しい会話」ができるようになっていきます


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(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)