魅力的な誘いにやたらとイエスと答えてしまい、いつのまにか他人の優先順位の中で生きてはいないでしょうか?(写真:Elnur/PIXTA)

他人からの魅力的な誘いについ乗ってしまい、他人のやることリストのために時間を奪われていることはないだろうか。

でもそれでは、偉大な創造を成し遂げることはできないと「全米最高峰のインフルエンサー」ティム・フェリスは言う。彼はどのようにして自分の時間を守り抜いているのか。著書『巨神のツール 俺の生存戦略』の『富編』の中から、紹介しよう。

哲学者でプログラマーのデレク・シヴァーズは、僕のお気に入りの人間だ。

たいていのことにノーと言うには

彼の鋭い思考方法は、いつも僕を感動させてくれるし、彼が教えてくれた哲学、「もっちろん、イエス!」もしくは「ノー」はすっかり僕のお気に入りのルールになった。

彼のブログから抜粋しよう。


ついついやりすぎてしまう人や、気が散りやすいと感じている人は、僕が実践している新しい哲学に感謝するかもしれない。

何かにつけて、僕は、「もっちろん、イエス!」と言えなければ、ノーと言うことにしているんだ。

つまり、こういうこと。何かをすべきか否か決めかねているとき、自分が「ワオ!まったくもって素晴らしいぞ!もっちろん、イエス!だ」。こんな気持ちになれないときにはノーを言うようにしている。

たいていのことにノーを言っておけば、本当に自分の身を投げ出して全力で取り組みたいと思うような、めったにない機会のために、そして「もっちろん、イエス!」と言いたくなるようなことのために、時間を取っておける。

みんな忙しい。それはあまりにも多くのことを引き受けすぎているからだ。イエスを言う回数を減らすこと、それがそこから脱け出す方法だ。

「成功」するためには、多くの試みに「イエス」と言わなければならない。

自分がいちばん得意なものは何か、いちばん情熱を傾けられるものは何か、それを知るためには、壁に向かってたくさんボールをぶつけてみないといけない。

でも君の人生が外へ向けて球を投げることから、自身に向かってくる球から身を守る方向にシフトしたなら、最初の決めごととして、情け容赦なく「ノー」と言わなければならなくなる。

槍を投げる代わりに。楯を構えるんだ。

あまりに多くのことにイエスと言った結果…

2007〜2009年、それから2012〜2013年にかけて、僕はあまりにも多く、「クール」な物事にイエスを言ってきた。

南アメリカでの会議に出席したいか?

有名雑誌に、じっくり時間をかけて、人物評論を書きたくないか?

友人5人が参加してるスタートアップに投資しないか?

「もちろん! クールじゃん」。

僕はそんな風に答えると、カレンダーに印をつけていった。


後になって、その代償として、気分は散漫となり、その数の多さにすっかり圧倒されることになってしまった。

僕のアジェンダは、いつの間にか、他の誰かのアジェンダリストになり変わってしまっていたんだ。

「クール」な物事に、あんまりイエスを言いすぎてしまうと、生き埋めにされたような気分になる。

せっかく一流プレイヤーとしての実力を持っていながら、二流プレイヤーに甘んじることになってしまう。

まずは、自分の強みを磨いて、プライオリティを明確に打ち出すこと。そして、強みを持ち続けるためには、他人のプライオリティから自分を守らなくちゃいけない。

プロとして、ある程度成功を収めるレベルにまで達してしまえば、チャンスを失ったからといって、その世界から消えてしまうことはない。

それよりも、「クール」な物事の達成に溺れることで、君という名前の船は沈んでしまう。

自分を壊すための種まきはやめよう

このところ、新しいスタートアップに対して、「もっちろん、イエス!」と答えることが目に見えて減っていった。

それがそこから抜け出すサインだと思ったし、とりわけ大好きな仕事(書くこととか)が、投資にかけるエネルギーの10分の1でできることに気づいたのであれば、なおさらだ。

自分を壊すための種まきをするのは、もう止めることにした。

僕のお気に入りの時間管理エッセイの1つが、Yコンビネーターでおなじみの、ポール・グレアムによる『Maker's Schedule, Manager's Schedule(メイカーのスケジュール、マネジャーのスケジュール)』だ。

みんなにもぜひ読んでみてほしい。

ブラッド・フェルドをはじめ、多くの投資家たちが言うには、こちらで30分、あちらで45分、というように時間を切り貼りしているようでは、偉大な創造を成し遂げることはできない。

まとまった時間を確保しよう

誰にも邪魔されないまとまった時間――少なくとも3〜5時間――は点と点を結びつける場所として確保する必要がある。それも、1週間に1度では足りない。

このシステムをきちんと作動させるためには、複数日にわたって十分な遊びの時間も必要だ。正にCPU集約的な統合である。

僕の場合、1週間に3〜4日は、朝から少なくとも午後1時までは、「何かを創る」モードに入るようにしている。


僕が受動的でいるかぎり、このモードに浸ることは不可能だ。

メールで送られてくるこんなメッセージがある。

「僕たちはもう手一杯です。2万5000ドルであなたに是非ともこの仕事を引き受けていただきたいのです。締め切りは明日。何とかなりませんか?」。

これこそ、創造力を吸い取る元凶だ。

書くこと、何かを生み出すこと、それから大きなプロジェクトに取りかかること、それらすべてが恋しい。それらに「イエス」と言うことは、モグラたたきのように、次々現れるその他のゲームに対して、「ノー」を言うことなんだ。

(ティム・フェリス : 起業家、作家)