中国は政府主導でコンピューティング能力の大増強を図ろうとしている(写真はイメージ)

データセンターなどの「デジタルインフラ」の建設を加速するため、中国政府が政策的支援を強化している。

中国工業情報化省、国家インターネット情報弁公室、国有資産監督管理委員会など6省庁は10月9日、高品質なコンピューティング・インフラの発展を目指す「行動計画(アクションプラン)」を連名で発表。計算能力、ネットワーク伝送能力、ストレージ容量、アプリケーションなどの各分野について具体的な数値目標を提示した。

デジタルインフラの基盤である計算能力に関しては、第14次五カ年計画(2021〜2025年)が掲げた「2025年までに300EFLOPS(エクサフロップス)」の目標値を踏襲したうえで、そこに占めるAI(人工知能)コンピューティングの比率を35%に引き上げる目標を追加した。

(訳注:1EFLOPSは1秒間に10の18乗回の浮動小数点演算を実行する能力)

すでにアメリカに迫る計算能力

工業情報化省の統計によれば、中国全土のデジタルインフラの計算能力は2022年末時点で180EFLOPS。そのうちAIコンピューティングの比率は22.8%だった。アクションプランの目標を達成するには、2023年から2025年までの2年間に計算能力を(2022年末比で)1.6倍超、AIコンピューティング能力を同2.5倍超に増強しなければならない。

なお、政府系シンクタンクの中国信息通信研究院のデータによれば、2022年の世界全体の計算能力に占める国・地域別の比率は、首位のアメリカが34%、2位の中国が33%、3位のヨーロッパが17%、4位の日本が4%となっており、アメリカと中国が拮抗している。

中国政府は過去数年、デジタルインフラの強化に関する新政策を次々に打ち出してきた。

マクロ経済政策を統括する国家発展改革委員会は2020年4月、AIコンピューティング・センターなどのデジタルインフラを(政府が重点的に整備する)「新型インフラ」の対象に追加。2021年5月には同委員会など4省庁が共同で、全国のビッグデータを一体的に処理するための「コンピューティング・ハブ」の整備計画を発表した。


「東数西算」プロジェクトの下、中国内陸部に多数のデータセンターが誘致されている。写真は通信機器大手の華為技術が内モンゴル自治区に建設したデータセンター(同社ウェブサイトより)

2022年2月、国家発展改革委員会など3省庁は、華北の北京市・天津市・河北省エリア、華東の長江デルタエリア、華南の広東省・香港・マカオのグレーターベイエリアなど8カ所で「国家コンピューティング・ハブ」の建設を認可。さらに、中国内陸部を中心に10カ所の「国家データセンター集積地区」を立ち上げる計画を打ち出し、「東数西算」プロジェクトをスタートさせた。

(訳注:「東数西算」は、人口が集中し経済発展が進んだ東部の沿海部のデジタルデータを、電力や開発用地に余裕がある西部の内陸部のデータセンターで演算処理する体制を構築する国家プロジェクト)

データセンターが続々着工

こうした政策の後押しを受け、中国各地でデジタルインフラの建設プロジェクトが続々と着工。それに伴い、データセンター内に設置されるサーバー・ラックの総数も増加の一途をたどっている。


本記事は「財新」の提供記事です

国家インターネット情報弁公室が公表したレポートによれば、中国国内のデータセンターには2022年末時点で650万を超えるサーバー・ラック(標準ラック換算)が設置され、過去5年間の増加ペースは年平均30%を上回る。

また、データセンターに導入済みのサーバーの総数は2000万台を超え、ラックの平均利用率は58%となっている。

(財新記者:劉沛林)
※原文の配信は10月9日

(財新 Biz&Tech)