ガチ中華で、当たりのお店を選ぶコツとは?(写真:筆者撮影)

中国本場の味が楽しめる、ガチ中華が日本で増え始めて数年。都内を中心にコロナ禍で閉店した飲食店の後に出店する形で、瞬く間に店の数が増えた。

最近はコロナの影響もおさまってきていることや、店の数が増えすぎて飽和状態にあることもあり、珍しい食材や、日本では馴染みのない地方の料理など、今までのガチ中華とは違った新たなタイプの店も少しずつ増えている印象だ(過去記事:都内で増えまくる「ガチ中華料理店」生き残りの鍵)。

筆者はガチ中華という言葉が広まる2017年頃から、東京近郊でオープンするガチ中華の店の開拓にハマり、食べ歩いている。コロナ禍で旅行に行けなかったこともあり、池袋や上野などのガチ中華の店に食べに行くことが気晴らしになって、1年間で200回以上ガチ中華を食べていた。いままで行った店の合計は300店以上にも上る。

今回はガチ中華を食べ歩く中で、知り合いや友人からよく聞かれた店の探し方や、外さない注文の方法など、美味しい名店に辿り着くガチ中華の攻略法を紹介したい。

どうやって新しい店を探す?

ガチ中華の店の情報をSNSで発信する中で、最も聞かれたのが、新たにオープンする店をどうやって探しているかだ。

いくつか方法はあるが、最も活用していたのは中国版Instagramの小紅書(RED)だ。Instagramと同じように日本に暮らす中国人がガチ中華のレビューを投稿していたり、店のオーナーがアカウントを開設して新規オープン店の情報を発信していたりする。

またInstagramやX(旧Twitter)と同様に、REDもユーザーがよく見ている投稿を学習し、フォローしていなくてもおすすめの投稿がタイムラインに出てくるようになっている。ガチ中華の投稿ばかりを検索していた筆者のREDのタイムラインは、いつしかガチ中華の出店情報がたくさん流れてくるようになり、新店舗情報をキャッチアップできるようになっていた。

最近は店に通うようになって仲良くなったオーナーから、別の知り合いがガチ中華の店をオープンするという情報を教えてもらったり、ガチ中華の店に置いてあるタブレットタイプや、QRコードをスマホから読み取るタイプのメニューを導入している中国系企業の営業の人と知り合ったことで、新店舗情報を教えてもらう機会も増えた。

もちろんガチ中華が集まっている池袋や上野、高田馬場などを散歩して見つけることもある。中華物産店や中国人が経営するネットカフェなどは、街歩きで見つけることが多い。

美味しい店を選ぶコツ

ガチ中華の店が増えてくると、「流行に乗って儲かりそうだから」、といった理由でほかの業界から飲食店に参入する中国人も増えてきて、当たり外れも出てくるようになる。

中国でも適当に安い店に入るとやる気のない店員がなんとも微妙な料理を出してくることがあるし、日本にあるどんな店でも当たり外れがあるため、仕方ないだろう。

筆者はプロのグルメ専門家ではないので、細かい調理法までは言及できないが、店選びの際に気にかけているのは「店のオーナーや料理人の出身地と、店で提供している料理の地域が同じかどうか」ということだ。

中国は広いので中華料理・中国料理といえども地域によって特徴が違ってくる。四川料理は唐辛子や花椒を使った、麻辣(マーラー)な、辛い料理が有名だ。


辛い、麻辣な味が特徴の四川料理。湖南料理も辛さが特徴だが、四川料理の辛さとは異なる(写真:筆者撮影)

唐辛子と花椒を使う麻辣な四川省の辛さに対して、湖南省は唐辛子をメインにした辣(ラー)な辛さが特徴的だ。逆に上海料理は砂糖や醤油などを使った茶色くて甘めの料理が多いというように、地域ごとに大きく特徴が異なり、1つの地域でさえもさらに細分化される。

新しい店でどんな料理が出てくるかわからないときには、辛い料理が苦手な上海人が作る四川料理よりも、四川人が作る四川料理のほうが外れる確率が低いため、オーナーや料理人の出身地を確認しているというわけだ。

以前、四川出身の友人と東北人がオーナーの火鍋店に食べに行ったら、「この麻辣スープは赤いだけでコクがまったくない。水と同じだ!食べられない!」と酷評を食らってしまったことがある。

一方で、こうしたお店は日本ではそこそこの人気があるケースもある。実際には本場四川の火鍋を食べたことがある人は、中国人でもそこまで多くなく、日本人だとなおさら区別がつかないためだ。

店の大きさも当たり外れに影響

店の大きさも当たり外れにかかわることがある。100席ある店と20席しかない店だと、後者のほうが美味しい店である確率が高い。100席程度ある大きめの店は、不動産などほかのビジネスをしている中国人がガチ中華ブームの流れに乗って儲けようと飲食業に参入しているケースが多いためだ。

昨今は円安の影響もあり、どこの店でも料理人の確保に苦労している。オープン当初にいた腕のいい料理人が別の店に移籍してしまったり、中国に帰国してしまったりしていることもある。

同じ店でも、初めて食べに行ったときは美味しかったが、しばらくして食べに行くと味が変わっていることもある。大きめの店であればあるほど料理人の確保に苦労しており、味のクオリティーを維持することが難しいのだ(味のクオリティーの維持に課題を感じ、セントラルキッチンで調理した料理を各店舗に運ぶことで、どこの店でも同じ味の料理が食べられるように工夫している店もある)。

20席ほどの小さめの店の場合は、ビジネス目的というよりは、オーナーが自分の出身地の料理を日本でも食べてほしいという思いで開いた店、であることが多い。オーナーが料理人を兼ねていることも多いので、店が続く限りはクオリティーが一定に保たれる。中でも、上海人が開いた上海料理店や内モンゴル人が開いた内モンゴル料理店だと、たいてい美味しい料理にありつける。


四川料理の麻辣雞とアヒルの滷味(写真:筆者撮影)

もちろん、店の大きさだけがすべてではないが、その裏にある事情までみると当たりの店を引ける確率が高くなる。

料理注文のコツ

店までたどり着いたはいいが、ガチ中華に慣れていないとどんな料理を頼んだらいいのか悩んでしまうこともあるだろう。

中国在住時に1人で入った店で何も考えずに美味しそうな2品頼んだところ、とても1人では食べきれない量の料理が2品出てきて、泣く泣くテイクアウトしたり、お腹をパンパンにさせたことが何度もある。

料理の頼み方については人数にもよるが、仮に4人だとしたら冷菜1品に肉や野菜などの炒め物1〜2品、肉や魚などの煮込み系が1〜2品、水餃子や炒飯、麺などの主食を1品、スープ系を1品と、料理の系統や味付け、使っている具材をバランスよく分けて注文すると飽きることなく食べられるだろう。

炒め物は辣子鶏(唐辛子と鶏肉の揚げ炒め)だから、煮込み系は酸菜魚(酸菜と白身魚の煮込み)にする、といったような具合だ。


巨大な鍋を使った煮込み料理、「鉄鍋炖」は東北地方の郷土料理だ(写真:筆者撮影)

また、店によって1品の量が極端に多かったり少なかったりとバラツキがある場合もあるので少しずつ頼んで足りなかったら追加注文する、というのもオススメだ(中国人と食事に行っても不夠再点:足りなかったらまた頼もう、という会話がよくされている)。

メニューが多すぎて迷ってしまったら、店員さんに聞くと、たいてい看板メニューやおすすめメニューを教えてくれるので、聞いてみるのもいいだろう。量が足りるかどうかも聞くと、ざっくりだが「あと1品頼んだほうがいいかも」、や「ちょうどいいくらいですね」と教えてくれる。

ガチ中華の店では、日本人向けに、誰もが知っている麻婆豆腐や回鍋肉(ホイコーロー)がメニューに載っていることが多い。

これらは四川料理なので、四川料理の店であれば本場の味が楽しめるが、広東料理の店や上海料理の店で四川料理を頼むと味が微妙だったり、日本人向けの味付けになっていることが多い。せっかく北海道料理が美味しいお店に行ったのに、沖縄料理を頼んでいるようなイメージに近いかもしれない。

飲み物に関しても、当たり外れがある。店によってはビールサーバーの洗浄をきれいに行っていないために、プレミアムモルツの神泡のはずが、ムラがある泡になっていたり、そもそも生ビールの味が微妙なこともある。ハイボールやサワーのウイスキー、焼酎の味が濃すぎたり、薄すぎたりする店も多い。ドリンクでの外れを防ぐためには、青島ビールなどの瓶ビールや、ペットボトル、缶に入っているドリンクを頼むのが外れ回避の方法だ。

料理を頼みすぎて食べきれなかったり、外れな料理を頼んでしまったりすることも“ガチ中華あるある”なので、それを前提にして食べに行くのもガチ中華の楽しみのうちの1つだと思うのも、心意気としては大事なのかもしれない。

五感で中国現地の雰囲気を味わえる

海外旅行ではハプニングやトラブルがつきもののように、ガチ中華も中国に旅行に来ているかのような雰囲気が五感で味わえるのが醍醐味の1つともいえる。

もし食べに行く日までに時間があれば、事前に食べに行く店に関しては、どこの地域の料理を出している店で、その地域ではどんな料理が食べられているのかをググっておくと、より楽しくて現地に近いガチ中華体験が得られるだろう。

(阿生 : ライター)