首相会見では、司会を務める内閣広報官が手もとの座席表を見て記者を指名している

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ジャニーズ事務所が2023年10月2日に開いた記者会見で、複数の記者の名前や写真を入れた「NGリスト」が会場に持ち込まれていたことが明らかになった。このことで改めて注目が集まっているのが首相会見のあり方だ。

ジャニーズ会見が「1社1問」なのに対して、首相会見は「1人1問」。恣意(しい)的な指名が指摘されているという点も同じだ。では、首相会見に「指名NGリスト」は存在するのか。

「フェアです。ちゃんと全体を見ています」と言っていたのに

「NGリスト」の存在はNHKが10月4日に報じた。これを受けてジャニーズ事務所は、リストは会見を運営した外資系PR会社が作成したとしており、「事務所の関係者は誰も関与しておりません」などとする見解を報道各社に出した。

ジャニーズ会見では、指名されないことを批判する記者に対して、司会者は

「フェアです。ちゃんと全体を見ています」

と主張する一方で、会見後半では

「えっと...色々顔を覚えられなくなってきました。では、こちらのブロック行きます」
「初めてですよね?多分」

とも発言している。このくだりを、台湾メディアは「面白い」と報道。司会者が記者の顔を覚える必要性が疑問視される中での、リストの存在の発覚だ、

対する首相会見では、司会者が手もとの座席表を見ながら記者を指名している。21年2月2日に開かれた菅義偉首相(当時)の記者会見では、山田真貴子・内閣広報官(同)が持つ座席表の内容を記者席から確認することができた。写真は、J-CASTニュース記者が日本インターネット報道協会から代表取材する写真(スチール)記者として撮影した。

記者席は3列29席。1〜2列目は内閣記者会の加盟社で、全員の社名と記者名が印字されている。1列目の中央3人(日経新聞、時事通信、テレビ東京)には「幹事社」の説明がついている。3列目はフリーランス、雑誌、ネットメディアなどの記者が座るスペースで、やはり記者名は事前に印字されている。つまり、「指定席」だ。3列目の記者名の下には「フリーランス」「外国プレス」「日本雑誌協会」「日本インターネット報道協会」といった属性が手書きで書き込まれている。

「指名NG」と書いてあるわけではないが...

この座席表には、「指名NG」といった表現は確認できなかった。この日の会見では、幹事社2人(日経、テレ東)に続いて、毎日新聞、フリーランス、NHK、北海道新聞、産経新聞、TBS、ラジオ日本、ジャパンタイムズ、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーの順に指名された。

一見、さまざまな種類の媒体に指名しているように見える一方で、媒体によって指名の回数に偏りがあるという不満は根強い。東京新聞は23年7月、21年10月の岸田政権発足以来「官邸の記者会見室での単独の会見」21回で指名された回数を媒体ごとに集計した記事を掲載している。それによると、内閣記者会常勤社19社のうち、最も指名が多かったのは産経新聞の13回。NHKの12回、日経、読売、毎日、朝日の各紙とフジテレビの9回と続き、最も少なかったのは東京新聞・中日新聞とTBSの4回だった。記事では「恣意的な差配や選別が行われている可能性がある」とする識者の談話も紹介している。

関連質問さえぎる点も共通

21年4月に立憲民主党の山井和則衆院議員が出した質問主意書では、

「質問するメディアの指名の回数は、報道の自由や国民の知る権利の保障の観点から、団体や個人のバランスを踏まえて平準化した方が良いと考えますが、政府の見解を示してください」

などと質問。政府は

「内閣記者会に所属する記者といわゆるフリーランス等の記者のバランス等を勘案しつつ、限られた時間の中でより多くの記者が質問できるよう努めているところである」

と答弁している。

ジャニーズ会見と首相会見は、原則として関連質問を受け付けない、という点でも共通している。ジャニーズ会見では司会者が「1社1問」を繰り返したのに対して、首相会見では首相の冒頭発言が終わると司会者が

「社名とお名前を明らかにしていただいた上で1人1問、御質問をお願いいたします」

と宣言して質疑応答に入る。20年12月25日の会見では、答弁漏れを指摘する記者の声を、司会者が

「すみません。申し訳ありません。お一人1問でお願いいたします」

とさえぎる場面があった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)