Intelの創業者であるゴードン・ムーア氏は「ムーアの法則」で「半導体の集積密度は18〜24カ月で倍増し、チップの性能が倍になってもさらなる小型化が進む」と集積回路の進歩に関する予測を行いました。この予測通りに半導体は進歩し、PCの性能も日々向上していきましたが、「以前に比べてソフトウェアの起動速度は遅くなっているのではないか」と、ソフトウェアエンジニアのジュリオ・メリノ氏が疑問を呈しています。

以下はメリノ氏が示した、Windows 11搭載のSurface Go 2で「エクスプローラー」「コマンドプロンプト」「メモ帳」「ペイント」を順番に起動しては終了しているムービー。CPUは動作周波数が2.4GHzのクアッドコアCore i5プロセッサ、メモリは8GBでSSD搭載です。



一方、600MHzのCPUに128MBのメモリ、HDD搭載でOSがWindows NT 3.51のPCで同じ4つのソフトを起動する様子がコレ。起動速度は「一瞬」と表現しても大げさではないレベル。



Windows NT 3.51はさすがにPCと比較して古いOSだったので、フェアな条件にするためにPCと同じ1999年に登場したWindows 2000で同じことを試したのが以下のムービー。やはり「一瞬で起動」と表現しても問題ないぐらいの反応の早さ。



そして「Surface Go 2ではパワー不足」との声に応えて、メリノ氏は3.5GHzの6コアCPUに32GBメモリ搭載のMac Proでも同じことをしています。その結果は、やはり起動は少しもっさりとしている印象……。



この話題はソーシャルニュースサイト・Hacker Newsでコメントを集めることになり、メリノ氏本人もコメントを投稿しています。

Hey folks, author of the Twitter thread here. It's pretty funny how a pair of cr... | Hacker News

https://news.ycombinator.com/item?id=36450457

メリノ氏によれば最初の2本の動画は5分ほどで撮影したもので、そんなに話題になるとは予想もしていなかったため、いろいろと問題を含んでいる認めています。

メリノ氏は20年前のPCを擁護するつもりはなく、I/Oやグラフィックス、高速なネットワークなど改善された点は多々あり、優れた言語と仮想マシンのおかげで新たなタイプの開発や展開もできるようになったと述べた上で、「UIは全体的に遅くなった」と問題点を指摘しています。

UIの問題は、メリノ氏が職場で使っていたZ4ワークステーションや、所有していたCore i7搭載のSurface Laptop 3、ムービーで示されているようにメイン機のMac Proでも感じるとのこと。

当該スレッドでは、メリノ氏の指摘を受けて「確かに、メモ帳はメモ帳のはずなのに、なぜこんなことになっているんでしょう?」と起動が遅くなったことに同意する声に対して、「最新のメモ帳はパッケージアプリケーションのUWP版なので、いろいろなシステムコンポーネントを必要とするため起動に時間がかかるのでは?」との推測や、「そもそも近年のソフトウェアは肥大化しすぎなのでは?」との推測が出ています。

また、「ハードウェアが高速になるよりも急激にソフトウェアの低速化が進む」というパフォーマンスに関する格言「ヴィルトの法則」に言及する人もいました。

なお、Twitterでは反応が多すぎて通知を切ったというメリノ氏の実験を「この調査結果に真剣に反対する人はいません」と認めつつ「現代のWindowsは非常識な動作をしている可能性があります。Windows 2000(Server)最高!」と言及する人や、その意見に「OS設計は、少なくともユーザー体験において、Windows 2000でピークを迎えました」と同意する声も見られました。