[6.3 J1第16節 FC東京 2-3 横浜FM 味スタ]

 2位の横浜F・マリノスがFC東京に3-2での逆転勝利を飾り、今節試合中止の首位・ヴィッセル神戸と勝ち点で並んだ。開始40秒でFWアンデルソン・ロペスが先制点を決めるも、前半のうちにFWディエゴ・オリヴェイラの2ゴールで一時逆転を許す苦しい展開。それでも後半は数的優位も活かし、ロペスとMFマルコス・ジュニオールの得点で再逆転し、思いどおりにならない展開の中で強さを見せた。

 試合後、横浜FMのケヴィン・マスカットは「すごくいいスタートは切れて素晴らしいゴールがすぐに入ったが、その後に自分たちがボールを持っているときになかなかボールを保持することができず、相手に取られ、攻守の切り替えの部分、カウンターで相手の怖さを出させてしまった」と前半の戦いぶりを反省。それでも「ただ自分も含めてチーム全体で責任を取らないといけなかった。後半は自分たちがこうやってやりたかった、見たかったパフォーマンスが見られた。両チームとも決定機があった中、違いは自分たちのパワー、自分たちが勝つという気持ちの強さ、そういうところの差が出たんじゃないかと思う。いい試合になった」と手応えを語った。

 横浜FMは今季、攻撃の要所とされるバイタルエリアをトップ下の西村拓真だけでなく、1トップのロペスも使う新たな攻撃システムにトライ中。そのことで相手のマークが分散し、深い位置に張っているウイングの破壊力を最大限に活かすことができており、この日も前半開始40秒に決まったA・ロペスの先制点は右サイドでヤン・マテウスが相手を剥がした形からだった。

 ところがその後は、FC東京の対策に苦戦した。バイタルエリアに顔を出すA・ロペスにはDF森重真人をマンマーク気味につけられ、西村にもMF青木拓矢が密着。そのことで縦パスがなかなか入らず、ウイングのエウベルとヤン・マテウスも孤立気味のままDF長友佑都とDF徳元悠平に対応された。さらにボランチの渡辺皓太と喜田拓也にも相手のインサイドハーフが近い距離感で見張っており、総じて攻撃に勢いを出し切れなかった。

 それでも後半は立ち上がりから勢いを取り戻し、普段どおりに押し込むことが可能になった。後半24分にFC東京のMF松木玖生の右肘がMFマルコス・ジュニオールの顔面に当たったことで、受けた側も「不運だった」(マルコス)と認める退場処分があったこともたしかに追い風とはなったが、後半17分の同点ゴールの時点で布陣が高い位置を取れており、選手交代の準備も含めて普段どおりの戦い方を取り戻しつつあった。

 マスカット監督は試合後、前半の戦いぶりについて「正直、選手だけの問題ではなかった。監督としても関わっているスタッフ全体でこの責任を負うべきだと思っている」と前置きしつつ、「強調したのは自分たちのサッカーが見せられていなかったので、勇気と自信を持つこと、そしてマリノスのサッカーをしようということ」だったと明かした。

 相手のマークが執拗なものだったとしても、そこにボールを出す選択をしなければ始まらない。そこで指揮官は「後半に向けてマリノスのサッカーをした上で相手が上回るのであればしょうがない」と働きかけ、戦況を手繰り寄せようと考えたようだ。

 その結果の逆転劇。マスカット監督は「交代で入ってきた選手も、自分たちがやろうとしているサッカーを上げるためのギアを入れてくれた。見ていて楽しかったし、後半は素晴らしいパフォーマンスを見せられた」と選手たちを称えた。

(取材・文 竹内達也)