「肋軟骨炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
突然、胸に痛みを感じる「肋軟骨炎(ろくなんこつえん)」についてご存知でしょうか。
肋軟骨炎は、肋骨や胸骨を繋ぐ関節や肋骨と肋軟骨の接着部に炎症が引き起こされる原因不明の疾患です。
詳しい原因については不明であるものの、激しいスポーツ・外傷・ウイルスや細菌感染によって発症することもあり、原因として考えられるものは様々です。
今回は、肋軟骨炎の症状や原因・なりやすい人の特徴・治療方法・対処法などを詳しく解説していきます。
肋軟骨炎の症状と原因
肋軟骨炎はどのような病気でしょうか?
肋軟骨炎とは、肋骨と胸骨をつなぐ胸肋関節、もしくは肋骨と肋軟骨の接合部に炎症が生じる疾患です。肋軟骨接合部痛や下部肋骨疼痛症候群と呼ばれることもあります。左側の第2肋骨から第5肋骨にかけて痛みが生じることが多いといわれていますが、実際には両側すべての肋骨に痛みが生じることもあります。胸に強い痛みを感じることから、「心臓や肺の病気なのではないか」と心配して受診される人が多いです。
しかし、心臓や肺とは関係がないため、生命に関わることはほとんどありません。肋軟骨炎は治療によって症状が改善することが多く、合併症や後遺症はほとんど報告されていません。
しかし、症状が慢性化する場合や、痛みが強くて日常生活に支障をきたす場合は、適切な治療を受ける必要があります。
症状を教えてください。
肋軟骨炎の症状としては以下のようなものがあります。体を動かした際に胸が痛い
深く息を吸ったり、咳をしたりすると胸が痛む
肋骨に沿うように背中や胸部に強い痛みを感じる
胸に鋭い痛みや圧迫するような痛み、患部を押すと痛みが増すような症状が肋軟骨炎の特徴です。上半身の運動や深呼吸を必要とする身体活動に関連することが多く、くしゃみ・咳・過度な運動でも悪化することがあります。
一部の肋骨だけでなく、複数の肋骨に痛みが生じることもありますので、他の疾患との鑑別が重要です。痛みがひどい場合は医師の診断を受けるようにしましょう。
発症する原因を教えてください。
肋軟骨炎の原因は明確にはわかっていません。しかし、一般的には以下のようなものが原因とされています。外部からの強い刺激
重いものを持ち上げる
激しい運動
ウイルスや殺菌などによる感染
交通事故による衝撃やスポーツによる外傷など、外部からの強い刺激も主な原因の1つです。
また、重いものを持ち上げたりゴルフなどの体を捻るような運動を繰り返し行ったりすると、肋軟骨炎が生じることがあります。
その他にも、ウイルス感染や細菌感染により発症することもありますが、詳しい機序については不明です。性別でいえば、男性よりも女性の人が発症しやすいという特徴もあります。
肋軟骨炎にストレスは関係していますか?
先にも説明しましたが、肋軟骨炎は外的要因や普段の生活により、胸部が損傷することで発症することが一般的です。ストレスも無関係ではありませんが、発症する原因としては考えにくいとされています。しかし、ストレスが原因で肋軟骨炎による痛みが悪化する可能性は考えられるでしょう。
肋軟骨炎の痛みが悪化したり、なかなか改善しなかったりするようであれば、専門機関に相談しましょう。
肋軟骨炎の治療方法
どのような人がなりやすいのでしょうか?
肋軟骨炎は、基本的に性別や年齢に関係なく発症する可能性がありますが、以下のような人が発症する可能性が高いとされています。日常的に激しい運動をする人
40代以上の人
女性
疲労がたまっている人や免疫力が低下している人
姿勢が悪い人
胸部に大きな外傷を負った人
ストレスを感じやすい人
胸部への強い衝撃や負荷がかかることによって肋軟骨炎を発症しやすいといわれています。そのため、日常的に激しい運動や肉体労働をしている人は注意が必要です。
また、若年層よりも中高年層のほうが胸部に負担を受けやすい傾向にあるでしょう。性別では、女性のほうが男性よりも発症率が高いです。
肋軟骨炎に限ったことではありませんが、疲れていたり免疫力が下がっていたりする人は、炎症性の疾患にかかりやすくなります。その他、日常的に姿勢が悪い人は、肋骨と軟骨に負担がかかるため、肋軟骨炎を発症しやすくなる可能性が考えられるでしょう。
ストレスについては先述の通り、痛みを増強させる原因となることがあります。
しかし、これらはあくまで一般的な傾向であり、個人差があります。他の疾患が隠れている場合もあるため、適切な診断と治療を受けることが重要です。
肋軟骨炎を疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか?
肋軟骨炎を疑った場合、内科もしくは整形外科を受診することが適切です。もし肋軟骨炎の原因として感染症などが考えられる場合には、内科を受診しましょう。一方、痛み出す前に激しいスポーツや胸部の打撲などがあった場合には、整形外科を受診しても良いでしょう。
具体的にどの科を受診すればいいか迷った場合には、まずはかかりつけの医師に相談してみてください。
どのような検査で診断されるのでしょうか?
まず、患者さんの症状や経過を詳しく聞き取り、その後に患部の診察を行います。患部の診察では、患部の腫れや熱感・痛みの程度・場所・肋骨の動き・圧痛の有無などを確認するのが一般的です。一方、肋軟骨炎の症状が心臓疾患や肺炎など他の病気と似ている場合には、次のような検査で鑑別が行われることもあります。
血液検査
X線検査
MRI検査
CT検査
心電図検査
ただし、これらの検査は肋軟骨炎の診断に必ずしも必要ではありません。必要に応じて医師が判断し、適切な検査を行います。
治療方法を教えてください。
肋軟骨炎の治療では、痛みや炎症を和らげるための非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や痛みを和らげるアセトアミノフェンなどの薬が処方されます。また、湿布薬や温熱療法が推奨される場合があります。さらに、何らかの原因が考えられる際には、その疾患に対する治療が必要です。
例えば、細菌による感染症が原因で肋軟骨炎が引き起こされた場合には、抗生剤を服用します。その他、過度な運動が原因であれば安静に過ごすことが大切です。
日頃からストレスを強く感じている場合には、痛みが悪化することも考えられるでしょう。そのような場合には、上手くストレスを解消し、リラックスして過ごすことも重要です。
なお、姿勢などが原因の場合には、作業療法士指導のもと、身体の歪みを正し、関節や筋肉の調整を行う必要があるでしょう。
肋軟骨炎の予後と対処方法
肋軟骨炎は完治しますか?
肋軟骨炎は、適切な治療を行うことで完治が期待できます。炎症が落ち着けば、痛みや腫れなどの症状も改善されます。ただし、症状が治まっても、再発することがあるため、完全に治癒したとは言い切れません。
特に、肉体労働・激しいスポーツ・悪い姿勢・ストレスなど、痛みを増強させる何らかの原因が明確な場合には、それらの原因を取り除くことが必要です。
痛みを感じたときの対処方法を教えてください。
肋軟骨炎で痛みを感じた場合は、患部に負担がかからないように安静にして休息をとることが大切です。激しい運動や重い荷物の持ち運びなどは避け、軽いストレッチなどの軽度な運動で筋肉をほぐすことができます。炎症を鎮めるために、湿布薬や温熱パッドなどが有効です。特に痛みが強い場合には、温めるよりも冷やすことを心がけましょう。温度が高すぎたり低すぎたりすると、皮膚を傷める可能性があるため注意が必要です。
痛みが強い場合には、鎮痛剤を服用しましょう。ただし、痛みが強いからといって、薬を多く服用することは危険です。必ず、医師の指示に従い、適切な用法・用量で服用するようにしてください。
さらに、肋軟骨炎は姿勢の悪さが原因になる可能性があるため、正しい姿勢を保つことが重要です。座っているときは、背中を伸ばし、両足を床につけ、背もたれにもたれかからずに座るようにすると良いでしょう。
最後に、ストレスを軽減することも対処方法の1つです。ストレスが原因で肋軟骨炎の痛みが強くなることがあるため、ストレス発散を行うことも有効です。リラックスしたり休息を取り入れたりしてみてください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
肋軟骨炎は、胸部に負担がかかることにより発症することが多い病気です。多くの場合、数週間もすれば痛みが自然に治まってしまいます。しかし、人によっては長期間痛みに悩まされることがあるため、早めに受診することが大切です。
痛みが強い場合や長引く場合には、何らかの疾患が隠れていることもあります。心疾患や呼吸器疾患でも似たような症状が現れますので、気になるようであれば、医師に相談してみてください。
編集部まとめ
突然、胸に強い痛みを感じる「肋軟骨炎」は、激しいスポーツや外傷によって引き起こされることが多い病気です。
しかし、原因は様々で、感染症や悪い姿勢が引き金となることもあります。また、ストレスが原因で痛みが増強することもあるため注意が必要です。
肋軟骨炎が疑われるようであれば、できるだけ安静にして、リラックスして過ごすことを心がけましょう。
肋軟骨炎の症状は、他の病気とも鑑別しにくいのが特徴です。痛みが続いている場合は、我慢せず、医療機関へ受診してください。
参考サイト
NSAIDsとアセトアミノフェン(日本ペインクリニック学会)