メキシコ代表パトリック・サンドバル【写真:Getty Images】

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WBC世界の投手たちをピッチングストラテジスト・内田聖人氏が分析

 連日熱戦が繰り広げられる野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。「THE ANSWER」では、多くのプロ野球選手を含め400人以上が参加するパフォーマンスアップオンラインサロン「NEOREBASE」を主宰し、最速155キロを投げる自身を実験台にしてピッチング理論やトレーニング理論を発信するピッチングストラテジスト・内田聖人氏が、独自の目線で世界の投手を分析する。今回は20日(日本時間21日)の準決勝・日本戦に先発するメキシコ代表パトリック・サンドバル投手。大谷翔平と同じエンゼルスで先発ローテの一角を担う26歳の左腕について特徴を紐解いた。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 エンゼルスでプレーする大谷翔平投手の影響で、同僚のサンドバル投手の名前を聞いたことがある人も多いと思います。

 印象としては日本のプロ野球っぽさがある投手です。球種が真っすぐ、スライダー、チェンジアップが軸であること。ツーシーム、カーブもありながら、その3球種を満遍なく投げています。コントロールも良く、ピッチングのデザインが上手い。同じトンネル(ボールが通る軌道で一般的に本塁の手前7メートル前後の地点)から複数方向にボールを変化させることができます。

 真っすぐは伸びるというより、ややカットするタイプ。同じポイントからスライダーは曲がり、チェンジアップは変化量より奥行きで打者のタイミングをずらすタイプ。以前、日本戦で紹介したチェコのサトリア投手のチェンジアップよりも球が速い“強化バージョン”。全体の球速帯はMLBの左投手の平均からやや速いというレベルで、NPBではかなり速いレベルになります。日本からすると厄介な投手です。

 ウィニングショットは、右打者にも左打者にもチェンジアップを使えます。加えて、左打者にはスライダーを2種類使い分けている印象。球速がありながらも横にも縦にも変化があるスライダーと、もう少しカットに寄せたスライダー。球速は137キロ〜143キロで、6キロほどの差があります。

 打者やその前のボールから考えて投げ分けている印象。自分の良い球をひたすら投げるのではなく、そのあたりも日本人投手っぽい印象です。それが、メジャーリーグで昨年は27試合に先発し、防御率も3点を切っていて(2.91)、148回2/3イニングを稼げる要因につながっていると思います。

攻略の鍵は球数「日本らしい野球が大切」

 日本打線は大谷投手との同僚対決が注目を浴びると思いますが、大谷投手は左対左をあまり苦にしないので、自分のスイングをするだけ。

 それ以外の日本の打者がどう対応するか注目です。日本人っぽい投手と言いながら、具体的に近い投手がいるかと言うと、思い浮かびません。それは真っすぐの平均が150キロで、スライダーも140キロ前後。チェンジアップも奥行きを取りながらも少し変化させる点。

 1つの球種が圧倒的というより、3つセットで嫌な印象。3球種を使ってボールの変化量を見せています。変化量を出す時は球種の組み合わせが大事。サンドバル投手は変化させているように見せるピッチデザインが上手い投手。このレベルは日本ではなかなかいません。

 日本は主力に左打者が多く、1〜5番までは左打者が主体。右打者にはチェンジアップもあり、どう攻略するかは見ものです。鍵になるのは球数。佐々木朗希投手との投げ合いなので、打ち合いにはならず、5、6回まではロースコアが予想されます。いかに球数を投げさせながら、少ないチャンスや失投を点に結び付けるか。

 それこそ、日本らしい野球が大切。1点を確実に取りに行ける侍ジャパンの強みを生かして、決勝進出してほしいと思います。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)