イタリア代表のパランテ投手【写真:Getty Images】

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WBC世界の投手たちをピッチングストラテジスト・内田聖人氏が分析

 連日熱戦が繰り広げられる野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。「THE ANSWER」では、多くのプロ野球選手を含め400人以上が参加するパフォーマンスアップオンラインサロン「NEOREBASE」を主宰し、最速155キロを投げる自身を実験台にしてピッチング理論やトレーニング理論を発信するピッチングストラテジスト・内田聖人氏が、独自の目線で世界の投手を分析する。今回は16日の準々決勝で日本と対戦するイタリア代表アンドレ・パランテ投手。日本のラーズ・ヌートバー外野手と同じカージナルスに所属し、昨年メジャーデビュー。中継ぎで47試合に登板、6勝5敗、防御率3.17を記録した24歳の中継ぎ右腕は「イタリア代表で最も厄介な投手」と内田氏が注目。その特徴として、NPBには多くない“カットするストレート”の威力を分析した。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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 イタリア投手陣の中では、パランテ投手が最も厄介な投手に感じています。

 投球のほとんどが真っすぐ。昨シーズンは全体の54%というデータがあります。球速も150キロ台後半。特徴的なのは真っすぐにジャイロ成分が入っていて、時々カット方向の変化を生じさせること。右打者からすると外に、左打者からすると内に、カットすることがあります。それが150キロ以上で来るのは脅威です。

 今大会は9日のキューバ戦で2番手で2イニングを1安打2四球、12日のオランダ戦も2番手で1回0/3を2安打2四球と、やや不安定ながら無失点。シーズン前ということもあり、仕上がり途上かもしれませんが、NPBでなかなかでそういう球を投げる投手はいない分、苦労する可能性はあります。

 NPBの投手は回転効率が高く、いわゆる綺麗なストレートや変化する球を投げる投手が多い。パランテ投手は少し落ちる、あるいはそのまま横滑りにカットするように感じる球を150キロ以上で投げる。大事な場面で投げる投手だと思うので、その球が厄介になると思います。

 メジャーで中継き・クローザーで真っすぐにジャイロ成分が入っている右投手といえば、マリアノ・リベラ投手やケンリー・ジャンセン投手が有名です。上手投げ投手の球の平均値からすると、基本的に真っすぐはシュートしながらホップするという打者の意識がありますが、その逆に来るので予想外に感じてしまう。極端な話、左投手が投げる真っすぐのような軌道になります。決まったら、一番強い球かもしれません。

 いずれにせよ、パランテ投手の真っすぐも日本人投手の平均的な変化とは異なります。

直球だけではないパランテの特徴

 もちろん、パランテ投手の特徴はそれだけではありません。例えば、今挙げたカット系を含めた真っすぐに絞っていたら、今度はツーシームのファストボールが来る。シーム(縫い目)や風の影響で変化も変わり、シンカーのように動いたりそのまままっすぐ来たり。カット系とは対になる球が同じ球速帯で来るので対応が難しい。

 加えて、速球系に目付けをしていたら、今度はスライダーやさらに変化量が多いナックルカーブも持っている。さすが、メジャーリーガーという感じです。今まで日本が1次ラウンドで戦ってきた投手とは違う印象があります。

 今回、挙げたカット系の真っすぐについてはイタリアのシフトも絡んできます。気持ち良く打っていると相手の思うツボになって、意外と内野ゴロが増える可能性もある。WBCはまだ極端なシフトを敷くことができるので、警戒が必要かもしれません。

 もし登板があれば、そんな投手を侍ジャパンがどう打ち崩すのか、楽しみにしています。

■内田聖人 / Kiyohito Uchida

 1994年生まれ。早実高(東京)2年夏に甲子園出場。早大1年春に大学日本一を経験し、在学中は最速150キロを記録した。社会人野球のJX-ENOEOSは2年で勇退。1年間の社業を経て、翌2019年に米国でトライアウトを受験し、独立リーグのニュージャージー・ジャッカルズと契約。チーム事情もあり、1か月で退団となったが、渡米中はダルビッシュ有投手とも交流。同年限りでピッチングストラテジストに転身。2020年に立ち上げたパフォーマンスアップオンラインサロン「NEOREBASE」は総勢400人超が加入、千賀滉大投手らプロ野球選手も多い。個別指導のほか、高校・大学と複数契約。今も最速155キロを投げる。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)