見えますか? 最近発見された“くじら座”の超低光度矮小銀河
【▲ 超低光度矮小銀河「Donatiello II(ドナティエロII)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Mutlu-Pakdil; Acknowledgement: G. Donatiello)】
こちらは「くじら座」の一角を捉えた画像。横幅は満月の視直径の10分の1程度に相当します(視野は3.20×1.61分角)。画像の中央付近をよく見ると、淡い星雲のような天体がかすかに写っているのですが、わかりますか? この天体は「Donatiello II(ドナティエロII)」と呼ばれていて、超低光度矮小銀河(Ultra Faint Dwarf Galaxy:UFDG)に分類されています。
矮小銀河は星の数が数十億個以下という小規模な銀河の総称です。矮小銀河は表面輝度が低い(暗い)銀河なのですが、超低光度矮小銀河はその名が示すように、矮小銀河のなかでも特に暗いタイプの銀河です。暗い矮小銀河は古い時代から生き残ってきた銀河だと考えられていて、最初期に形成された星についての手がかりが含まれていると期待されています。
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Donatiello IIは、イタリアのアマチュア天文学者Giuseppe Donatiello(ジュゼッペ・ドナティエロ)さんによって最近発見されたばかりの銀河です。チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使って2013年から2019年にかけて観測が行われたプロジェクト「ダークエネルギーサーベイ(DES)」から公開されたデータを分析したDonatielloさんは、くじら座の隣にある「ちょうこくしつ座」の渦巻銀河「NGC 253」、別名「ちょうこくしつ座銀河(Sculptor Galaxy)」の周囲で非常に暗い3つの銀河を発見。これらはすべてNGC 253の衛星銀河(伴銀河)であり、Donatiello II、Donatiello III、Donatiello IVと名付けられました。
冒頭に掲載した画像は、アリゾナ大学のBurçin Mutlu-Pakdilさん率いる研究チームの提案に基づき「ハッブル」宇宙望遠鏡で取得されたデータから作成されています。欧州宇宙機関(ESA)によると、ハッブル宇宙望遠鏡を使った観測の結果、Donatielloさんの発見を独立して確認することができました。Donatielloさんが発見した3つの銀河は観測データから銀河の候補を自動検索するアルゴリズムに見落とされていたといい、このように識別が困難な天体については人間の目による昔ながらの方法が必要だということです。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚としてESAから2023年2月6日付で公開されています。
【▲ 超低光度矮小銀河「Donatiello II(ドナティエロII)」(オリジナル画像の中央付近を拡大したもの)(Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Mutlu-Pakdil; Acknowledgement: G. Donatiello)】
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Mutlu-Pakdil; Acknowledgement: G. DonatielloESA/Hubble - Can You Spot It?Mutlu-Pakdil et al. - Hubble Space Telescope Observations of NGC 253 Dwarf Satellites: Three Ultra-faint Dwarf Galaxies (The Astrophysical Journal)Martinez-Delgado et al. - Tracing satellite planes in the Sculptor group - I. Discovery of three faint dwarf galaxies around NGC 253 (Astronomy & Astrophysics)
文/sorae編集部