卓球界のパワーヒッター早田ひな。Tリーグ5連覇&パリ五輪出場に向け「今の自分に固執せず進化し続けたい」
日本生命レッドエルフの4連覇に貢献した早田ひな
9月10日、5年目を迎えるTリーグがいよいよ開幕する。昨シーズン、女子は日本生命レッドエルフがプレーオフ・ファイナルで日本ペイントマレッツを3−0で下し、リーグ発足から4連覇を達成。他を寄せ付けない絶対女王として君臨し続けている。
初年度からエースとしてチームを支えてきた早田ひなは、8月に行なわれたTリーグ初の個人戦「ノジマカップ」決勝で、昨シーズンまでチームメイトだった平野美宇を4−1で破り優勝。リーグ5連覇に向けて、早田としては好スタートを切ったと言えるだろう。
そんな彼女に、今シーズンから新たにチームに加入する伊藤美誠に対する気持ちや、パリ五輪に向けての想い、今後の自身の卓球スタイルなどについて聞いた。
Tリーグで"みまひな"ペア実現も――まず、日本生命への伊藤選手加入の発表を聞いた瞬間、率直にどんな気持ちでしたか。
はじめは信じられませんでした。7月のオンライン会見直前まで本当に誰も知らなかったから、Tリーグ参戦の発表を聞いた瞬間、思考が停止しちゃいましたね。いつもノリで「Tリーグ出てよ!」と言ってはいたんですけど、「えっ、本当に出るじゃん」みたいな(笑)。そういう驚きが隠せなかったです。
伊藤選手とは2017年に初めてダブルスを組ませてもらっていますが、それから、(それぞれのスタッフを含めた)「チーム美誠」と「チームひな」は、国際大会や全日本選手権、個人合宿などでも支え合って試合に臨むことがよくあります。アスリートとしてはもちろん人としても尊敬している「美誠」「チーム美誠」が加入してくれたことは自分にとっても心強いです。このTリーグでも一緒のユニホームを着て戦えることは本当に嬉しく思います。
――これまでの4シーズン、ダブルスは一度も出場していませんが、伊藤選手と組むことは考えていますか。
それについては監督が決めることではありますが、ノジマTリーグでたくさんのお客さんが観に来てくれるなかで、一度は「みまひな」のダブルスを組んでみたいなっていう気持ちはありますね。それに伊藤選手が加わることで、2人ともシングルスで出たり、どちらかがダブルスで出場したりと、オーダーの幅が一気に広がると思うので、そういう意味でも今シーズンの日本生命レッドエルフはすごくおもしろいんじゃないでしょうか。
――確かに、オーダーを考えるだけでもファンは楽しめますね。5連覇を目指すにあたり、昨シーズンまでチームメイトだった平野選手が加入した木下アビエル神奈川の存在は、どのように感じていますか。
もともと木下アビエルには石川佳純選手、木原美悠選手、長粼美柚選手、張本美和選手と実績豊富な選手や、勢いに乗っている選手が揃っていますし、そこに平野選手が加わったので、さらに勝つことが難しいチームになったなと感じています。
そのほかのチームも戦力が上がってきているので、どこが勝つのか、日本生命は5連覇できるのかっていうのは本当にわかりません。それぐらい日本のトップ選手がTリーグに続々と参加してきていますから。なので私としては、試合で当たったチーム、対戦する選手に対して、「自分が絶対に1点をとる」という強い気持ちを持って戦うのみかなと思っています。
――Tリーグはパリ五輪代表選考対象になり、2年後に向けても重要なシーズンになると思います。どういう気持ちで臨もうと考えていますか。
まず、これまではエース(※)で使ってもらっていましたが、強い選手がどんどん出てきているなかで、今後は勝てないことも増えてくるかもしれません。そういった時に、パリ五輪の選考ポイントが頭に浮かんで焦りを生み、自分の卓球を見失わないとも限らない。そうならないために、一戦一戦、集中して試合に臨みたいですね。その先に、自ずと結果もついてくると思いますから。
※シングルス2点起用のこと。1つの対戦で、延長戦(ビクトリーマッチ)含め最大5マッチ行なわれるが、延長戦(シングルス)になった場合に2度目の出場が認められる。
――では、今シーズンを通じて技術面で強化していきたいポイントがあれば教えてください。
中国人選手も日本人選手も向かってくる時の強さだったり、攻撃力がすごく上がってきているので、単純に力だけではなく、それ以外の部分も強化する必要があると思っています。どちらかというと、私はパワーヒッター。その長所を生かす意味でも守備から攻撃につなげる練習だったり、サーブレシーブからの連続性を意識した練習を心がけています。それらを試合中に思い切って出していけたらいいなと考えています。
――今後、どんな卓球スタイルが構築されていくのか、今から楽しみです。
私自身も楽しみです。強化するといっても、イチからスタートするぐらいの気持ちでどんどん感覚を変えていくことが重要だと思っています。それにはすごく勇気が必要にはなるんですけど、変えることができた時には「ここがとれるようになるんだ」と、新しいことに気づいたり、発見することにつながるので、今の自分に固執せずに進化し続けていきたいです。そして、進化し終えた自分が一体どういう卓球スタイルになっているのか。そんな未来を想像しながら、毎日を楽しみに頑張っています。
――東京五輪ではリザーブという立場でしたので、その進化した姿を、パリ五輪で披露できたらいいですよね。
そうですね。本当にそこに向けてやっている感じです。今後のTリーグでの試合のなかで少しでも新しいことに取り組んでいくことが、次の自分につながっていくと思うので、楽しみながら、思い切って挑戦していけたらと思っています。
【Profile】
早田ひな
2000年7月7日生まれ、福岡県出身。4歳から卓球を始め、全国中学校卓球大会で全国初優勝を飾ると、その後はインターハイ、ジャパントップ12などで国内タイトルを獲得。20年の全日本選手権大会ではシングルス、女子ダブルスで2冠を達成した。世界選手権やワールドカップでメダルを獲得するなど、国際大会でも好成績を収めている。Tリーグでは日本生命レッドエルフに所属し、ノジマTリーグ 2018-2019シーズンおよびノジマTリーグ 2020ー2021シーズンで前期MVP・シーズンMVPを受賞。チームのエースとして4連覇に貢献した。