Tリーグ開幕に向け調整する石川佳純

 昨シーズンは、日本生命レッドエルフの4連覇で幕を閉じたTリーグ女子。今シーズンは パリ五輪代表選考の対象になったことに伴い、日本の絶対エースである伊藤美誠(スターツ)も加入し 、その壁をより強固なものとした。

 だが「今年こそは......」と、虎視眈々と初の栄冠を狙っているのが、木下アビエル神奈川だ。過去3度の準優勝を誇るが、いずれもプレーオフ・ファイナルで絶対女王相手にあと一歩及ばず。それでも今シーズンは日本生命レッドエルフから平野美宇が加入し、最大のライバルを迎え撃つ態勢は整っていると言っていいだろう。

 今回は、木下アビエル神奈川発足から4年間エースとしてけん引してきた石川佳純に、現在のチーム状況からTリーグ初優勝に向けての意気込み、パリ五輪に対する今の心境について聞いた。

平野美宇加入で層の厚いチームに

――今シーズンからは新たに平野選手が加入しましたが、チームにとって大きな存在となるのではないでしょうか。

 そうですね。私にとってもすごく嬉しいです。平野選手とは普段からダブルスを組んでいるのでよく一緒に練習していますし、木下アビエルに加わってからは、より練習する機会が増えました。

――では、東京五輪でも見られた"かすみう"ペアが、Tリーグでも実現する可能性がありますね。

 はい。オーダー次第によっては、ペアを組む可能性は十分にあると思いますよ。

――それは楽しみです。木下アビエルは石川選手をはじめ、移籍してきた平野選手(2000年生まれ)、勢いのある木原美悠選手(2004年生まれ)や長粼美柚選手(2002年生まれ)、そして張本美和選手(2008年生まれ)と各年代のバランスのいいチームになったように思います。

 本当にその通りで、いろんな世代の選手が揃っていて、すごくいいチームだなと感じています。チームワークもいいですし、みんなとはほぼ毎日一緒にいるので、とてもいい雰囲気のなかで練習できていると思います。

――最大のライバルである日本生命レッドエルフには、伊藤選手が入りました。参戦決定の知らせを聞いた時はどんな思いでしたか。

 やはり日本のトップ選手が全員、Tリーグに参加するのはすごくいいことですし、お互い切磋琢磨することでさらに盛り上がると思います。伊藤選手の参戦発表を聞いた時は、嬉しかったですね。

――4連覇中の絶対女王、日本生命レッドエルフの牙城を崩しての初優勝が期待されますが、今シーズンはチームとしてどう戦っていきたいですか。

 もちろん日本生命さんは、ものすごく強いチャンピオンチームなので、それに勝つためには私たちも全力を出し切らないといけません。今シーズンの木下アビエルは選手層が厚くていいチームになっていますので、チャレンジャーとして優勝目指して頑張りたいです。

 ただ、今シーズンから女子は1チーム(京都カグヤライズ)増えて6チームになったので、例年以上に優勝することは難しくなると思います。でも、私にとっては高いレベルで試合ができるのでとても嬉しいですし、それはファンのみなさんも望んでいることだと思っています。より多くの試合でハイレベルなプレーを見てもらうことが、卓球ファンが増えるきっかけにもなると思うので、みなさんにはたくさん現地で試合を観戦してもらえたら嬉しいですね。

Tリーグ初優勝、世界選手権出場に向けて全力尽くす

――ここからは石川選手ご自身のことについても伺いたいと思います。海外遠征が続いていましたが、現在のコンディションはいかがですか。

 最近は国際大会が通常どおり開催できるようになって、試合をする機会をたくさんいただけているので、試合勘は戻ってきています。あとは自分の力をどれだけ出せるか。自分の卓球に集中し、いいプレーができるように準備しています。

――Tリーグに向けて、今取り組んでいること、今後さらに強化していきたいポイントはどこでしょう。

 技術面ではサーブレシーブ、体力面ではフィジカル強化、精神面では平常心で戦うためのメンタルトレーニングを中心に、課題に取り組んでいます。この3つのバランスを調整しながら、試合のなかで毎回、反省と改善を繰り返して、最高のプレーにつなげていけたらと思っています。

――今シーズンはパリ五輪代表選考も兼ねています。石川選手は東京五輪後、3年後に向けては「ゆっくり休んで考えたい」と話していましたが、その後、心境の変化はありましたか。

 難しいですけど、現時点ではとくにないですね。私自身、これまで五輪には3大会出場させてもらっていますけど、気持ち的になんとなくやって出られるものではないことはわかっています。ものすごい覚悟が必要なんです。本当にパリ五輪を目指す覚悟が決まれば......、という感じです。今は目の前の試合を一戦一戦、集中して臨んでいきたいと思っているので、まずは9月10日に始まるノジマTリーグを全力で戦い抜きたいです。

 それにTリーグはパリ五輪もそうですが、来年の世界選手権の代表選考にも影響があるので、そういう意味でも目の前の試合に全力を尽くしたい。直近の目標がノジマTリーグ初優勝、そして世界選手権出場なので、それに向けて1回でも多く勝てるように頑張ります。

【Profile】
石川佳純
1993年2月23日生まれ、山口県出身。世界ランキング(最新)9位。小学1年から卓球を始め、小学6年で初参戦した全日本選手権で3回戦に進出。全日本選手権ジュニアシングルスで史上初の4連覇を達成し、17歳の時に全日本選手権のシングルスで優勝するなど、数々の実績を残す。2012年ロンドン五輪でシングルス4位、団体銀メダルを獲得。16年リオ五輪で団体銅メダル、21年東京五輪で団体銀メダルに輝いた。