鈴木みのり - Wherever(Lyric Video)

鈴木みのりが、自身もセラ役で出演するTVアニメ『黒の召喚士』でEDテーマを担当する。作詞・作曲はシンガーソングライターのMALIYAが、編曲は彼女も所属し、プロデューサーHarada Kosukeが主宰するクリエイティブ・プロダクションIsland State Musicが担当した。今まで以上に鈴木みのりの表現力が堪能できるR&Bテイストの楽曲で、鈴木みのりの新境地のようにも思えるが、本人に話を聞くとむしろオールドスタイルに近いという。デビュー前の自分と今の自分が重ね合わせていくような、そんな最新曲「Wherever」について。

覚えようという気持ちなく、毎日聴き続けていました



――まずは、アニメサイドからのオーダーやコンセプトなど、楽曲制作の出発点がどのようなものだったかから教えていただけますか?

鈴木みのり そもそも、『黒の召喚士』で監督をされている平池(芳正)さんは『マクロスΔ』に絵コンテで参加されていた方で、そのときから私のことを知ってくださっていたんですね。それで、私の担当ディレクターが、楽曲制作についてお伺いを立てたところ、鈴木みのりが歌うバラードを気に入ってくださっていたらしく、そういう楽曲を、というお話をいただきました。しかも、洋楽のような、アニメソングからはちょっと離れた雰囲気で、本編をクールダウンさせる楽曲にしてほしいということでした。自分としては、作品のイメージや、私が演じるセラのキャラクターを考えるともっと明るくポップな曲を想像していたので意外でした。それでディレクターさんが何人かクリエイターさんの候補を挙げられたんですけど、私も監督もMALIYAさんが歌っていた楽曲を気に入ったのでMALIYAさんにお願いすることになりました。

――鈴木さんがMALIYAさんの曲を選ばれた決め手というのは?

鈴木 そこはシンプルに、肩の力を抜いて穏やかな気持ちになれる曲だったので、自分が好きなテイストだったというところですね。あと、こういうタイプのバラードは歌ったことがなかったので。今年の5月にファンクラブ『みのり隊』の4周年記念生配信で、私の曲の人気投票を開催したんですけど、明るくてポップな曲が多いかと思ったら、sasakure.UKさんが作編曲された、少しシリアスな「わたしはわたしになりたい」とか、意外にもアルバム曲が上位に入ってきて。

――1位になった「Creosswalk」も少し落ち着いた曲ですね。

鈴木 自分としては、穏やかな曲を歌うのは自分が好きだから、という感覚があったんですけど、意外とファンのみなさんとは趣味が合う方なんだな、って。

スタッフ (笑)。

――ファンと趣味が合わなかったら辛いですものね(笑)。

鈴木 そういえば「リナリア」(5thシングル「サイハテ」c/w)という曲でも感触は良かったですし。なので、最近は落ち着いた曲を歌うことがなかったというところで、MALIYAさんの曲を選んだという面もありました。自分的にもこのタイミングで歌えることは嬉しかったですね。

――鈴木さんは表現力や歌唱力が魅力という印象が強いかと思っていましたが、ご自身としてはやはり『マクロスΔ』でフレイアのイメージが強いという感覚がありますか?

鈴木 そうですね。ソロデビューは『マクロスΔ』やワルキューレからきっかけを得たと思いますし、実際、フレイア・ヴィオンを少し意識したところから曲を作ってもいたので。やっぱり『マクロスΔ』は大きな作品だったので、届く声も大きいですし。勿論、自分の偽りの姿を出していたわけではないですけど、元気いっぱいなところを好きになってもらったような印象はありました。

――「Wherever」はR&Bテイストの楽曲ですが、鈴木さんは今までR&Bの楽曲を聴いたり歌ったりということはあったのでしょうか?

鈴木 落ち着いて聴ける曲は好きなので、流して聴いていることはありましたけど、特に好きなアーティストさんがいるわけでも歌ってみたこともなく。あと、アニソン界ってR&Bテイストの曲が……。

――ないですよね。

鈴木 ですよね。だから自分とも縁がなかったんだと思います。

――アニソンどっぷりの鈴木さんとしては(笑)。それでは今回はどのようにアプローチされていきましたか?

鈴木 でも、この曲がすごく好きで。覚えようという気持ちはなく、寝る前とかによく聴いていたら自然と……、というところはありましたね。MALIYAさんが仮歌を歌ってくださっていたので、仮歌から発音やリズムの取り方を学ぶというか。現場でもたくさん教えていただきました。

――今までと違いを感じる部分はありましたか?

鈴木 私は気持ちを歌詞に乗せようとして、言葉をはきはきと歌っていると思うんですけど、「Wherever」は多分そういうことではないんだろうな、とは歌っていてすごく感じました。英語も少しあるんですけど、日本語部分も英語に聞こえるようにというか、「流れる」ということをすごく意識して歌っていました。

――いつもとは違う歌い方ということで苦労はされましたか?

鈴木 むしろ、デビュー前は(バラードを)声を張らずに歌ったり、元気な曲でも裏声を使ったりとかしていたので。カラオケとかでも、好きなアーティストさんが歌うバラードを、意図せずではありますけど、ニュアンスや歌い方を模倣するように歌ってはいたんですよね。ただ、『マクロスΔ』の歌も他のキャラクターソングも、突き抜けた方が気持ち良いので、そこから鈴木みのりとしても声を張るように歌ってきた感じでした。

――それではむしろ、デビュー後の歌い方は新たに得た鈴木みのりなんですね。

鈴木 そうですね、今の自分を昔の自分が見たら意外かもしれないです。『マクロスΔ』の「ルンがピカッと光ったら」や「一度だけの恋なら」みたいな曲は自分には似合わないと思っていたので。でも逆に、今この曲が来たことで、喉を軌道修正するようなところはありました。力を抜いて裏声を使う曲は歌っていないと忘れちゃうんですよね。

歌いたい音楽をわがままに求めていきたい



――完成した楽曲を聴いてみてはいかがでしたか?

鈴木 音が好きすぎて、このメロに声を乗せて歌えることが嬉しい、というのが一番の感覚でしたね。あと、自分の歌を客観視できるのってCDになってからなんですけど、今まで歌ってきたソロ曲のことを考えてみると、「こんな大人な曲を歌わせてもらえるなんて。でもそれに見合うだけの女性になったのかしら」という気持ちで。今も不思議なドキドキの真っ最中ですね。

――MALIYAさんにはレコーディングでも指導を受けたということでしたが?

鈴木 はい。いろいろとご指導していただきました。事前に、英語の発音が苦手なんです、

ということをとにかく伝えていたら、そこを重点的にチェックしていただきました。でも、発音を教えてもらうというよりはこの曲に多分あった歌い方をディレクションしていただく、という形でしたね。

――MALIYAさんとのやり取りの中で発見した部分はありましたか?

鈴木 いつも以上に「音」で感じないといけないんだとは思いました。いつも歌いながら音を聴いてはいるんですけど、クリックを気にしないというか、「歌おう、歌おう」としてはいけないんだろうということをすごく思いました。力を抜いて歌うということがどういうことなのか知った気がします。冒頭の「とめどない出逢い別れ 繰り返すなんのため」もずっと音が続いていく感じを意識しながら歌いました。ただ、ありがたいことに制作途中で歌詞やメロの修正が入って、そのたびに仮歌をもらったり私も録り直したりしていたので、本番までの間で楽曲に触れている時間が長かったんです。なので、体に染み込んでからレコーディング本番に挑めたとは思います。

――大人な楽曲という印象を持たれたということですが、歌詞について感情移入できる部分はありましたか?

鈴木 こういうときはよくあるな、と言うとまた暗くなっちゃうんですけど(笑)、「行き場のない感情」って皆も持つことがあると思いますし、それに加えて、音の力というか、むしろ音は減っているんですけど、それによって気持ちがより入るところはありました。そういう感情ってやっぱり無気力に近いというか。歌詞の登場人物も少ないですし、内に秘めたものをぽつりぽつりと、という感じで歌っていました。

――感情を込めることで、むしろはきはきとした歌い方から離れていくような。

鈴木 そうですね。寂しさや何かを探す気持ちが込められた歌詞なので、一人静かに、というところは意識していました。でも、「繋いだ手は last forever 変わらずそばで笑って」とも歌っているので、遠くから思いを馳せるような感覚もあって。あと、今回は『黒の召喚士』のキャラクターを意識して歌ったわけではないんですけど、なんとなく転生神メルフィーナ的な、触れられない距離でもずっと一緒にいるわけでもない、という立ち位置を想像しながら、天から声をかけるように歌いましたね。

――メルフィーナを意識して歌ったわけではないけれども、彼女に近い女性像が頭に浮かんできたわけですね。

鈴木 包容力のある感じとか。自分も葛藤するものがありつつもあなたと出会えたことで光が見えてきた気がする、というところですね。希望をつかむというよりは、希望の光が見えてきて……という流れみたいなところはすごく意識しました。

――鈴木さんの感じる『黒の召喚士』の見どころも教えてください。

鈴木 アフレコしているときからバトルシーンがたくさんで、PVを見ていてもサテライトさんが力を入れていることがわかるので、バトルシーンは見てほしいと思いますね。あとは、OPテーマもかいりきベアさんによる新しいプロジェクト「レトベア」というところも見どころというか、聴きどころだと思います。

――あらためて、今回の新曲はご自身にとってどのような1曲になりましたか?

鈴木 デビュー前は10代だったこともあり、それから演じているキャラクターも自分の声も明るかったので、この業界に入る前には想像していなかった楽曲を歌わせてもらいましたし、それを皆に受け入れてもらうことで自分の力になったんですね。ただ、そこを踏まえた上で、自分が気になっていたものとお客さんが求めるものは必ずしも合致しないということは感じていました。それはマイナスの意味ではなく、一つの勉強として、何でもやろうという気持ちを持って活動してきたんですけど、ここ最近、20代になって自分の意見も出てくる中で、一周回って、デビュー前に憧れていた音楽に出会えている感覚があるんですね。だから、ここ最近のシングルや今回の「Wherever」で、しばらくは自分のやりたいことやいいと思う音楽をわがままに求めてみたいな、と思いますね。

――自分でもっと作詞作曲を突き詰めていく気持ちは?

鈴木 やってみたいですね。ただ、作曲は「リナリア」で、一度だけ共作させて頂きました。

――ピアノか何かで?

鈴木 「ラララ」でした。

――楽器経験は?

鈴木 楽器経験はほぼなくて、ギターのコード弾きだけ少し。ただ、DTMにも興味はあります。先日、自分のレギュラーラジオに占い師さんをゲストに呼んだとき、作曲や舞台といった新しいことをどんどんと、と言われて、「よし、作曲するか」って気持ちにはなっています。単純だから(笑)。



INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

●配信情報

Digital Single

TVアニメ『黒の召喚士』EDテーマ

「Wherever」



作詞・作曲:MALIYA 編曲:Island State Music

8月7日配信開始

配信リンク一覧はこちら

音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて8月7日より配信開始!

※対応ストリーミングサービス:Apple Music、LINE MUSIC、Spotify、YouTube Music、Amazon Music Unlimited、AWA、KKBOX、Rakuten Music、TOWER RECORDS MUSIC、ANiUTa

●作品情報

TVアニメ『黒の召喚士』

放送・配信中

【スタッフ】

原作:迷井豆腐(オーバーラップ文庫刊)

原作イラスト:黒銀(DIGS) / ダイエクスト

コミックス:天羽 銀(「コミックガルド」連載)

監督・シリーズ構成:平池芳正

キャラクターデザイン:大島美和

サブキャラクターデザイン:大橋幸子

モンスター・プロップデザイン:稲田 航

美術設定:加藤賢司(スタジオパインウッド)

色彩設計:鈴木依里

撮影監督:内田奈津美

編集:松本秀治

CGIスーパーバイザー:後藤浩幸

CGIディレクター:中村玲菜

音響監督:本山 哲

音楽:未知瑠 / Yuria Miyazono

音楽制作:フライングドッグ

音響制作:ブシロードムーブ

アニメーション制作:サテライト

オープニングテーマ:レトベア(unknown Vo:10fu)「頭ん中DEAD END」

エンディングテーマ:鈴木みのり「Wherever」

製作:黒の召喚士製作委員会

【キャスト】

ケルヴィン:内山昂輝

エフィル:石見舞菜香

メルフィーナ:上田麗奈

クロト:蘭笛

ジェラール:秋元羊介

セラ:鈴木みのり

リオン:宮本侑芽

アンジェ:稲垣 好

©迷井豆腐・オーバーラップ/黒の召喚士製作委員会

関連リンク



鈴木みのりオフィシャルサイト

http://e-stonemusic.com/minoringo/

TVアニメ『黒の召喚士』公式サイト

https://kuronoshokanshi.com/