「セリアック病」ってどんな症状?原因や対策も詳しく解説
セリアック病は食物アレルギーの1つで、グルテンに対する自己免疫疾患です。近年日本でも増加傾向にあり、辛い思いをしている方も多いのです。
こちらではセリアック病について解説しています。治療法や診察方法、また注意しなくてはいけない点などについて、さまざまな質問に応えています。
セリアック病について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
セリアック病の特徴
セリアック病とはどんな病気ですか?
セリアック病は本来人間の持っている免疫という仕組みを、何らかの原因で誤って認識し自分自身の身体を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
食物アレルギーの1つでグルテンに含まれるグリアジンを有害と認識することで起こります。セリアック病の人はグリアジンが体内に入るとそれを排除しようとT細胞の働きが活発化し、グリアジンのある小腸の粘膜を破壊してしまうのです。
このようにグルテンを摂取することで自分の免疫が自分自身を傷つけてしまう病気がセリアック病なのです。
小麦アレルギーとの違いは何ですか?
グルテンに含まれるグリアジンに対して自己免疫が働くのがセリアック病ですが、小麦アレルギーは小麦に対してアレルギー反応を起こすアレルギー疾患です。
また小麦アレルギーは即時型で数分から数時間でアレルギー症状が出ますが、セリアック病は遅延型自己免疫疾患で症状は1、2日後に現れます。
食生活では小麦アレルギーの小麦フリーに対し、セリアック病はグルテンフリーである点も少し違います。
発症しやすい年代や性別はありますか?
セリアック病は欧米で多く見られる疾患で日本での罹患者数は少なかったのですが、生活様式の欧米化で近年では増加傾向にあります。
男女差については日本ではほぼ同じ、欧米では女性の罹患率が高く重症化するのも女性が多いといわれています。年代としては乳幼児期に発症することは少なく、現在では成人よりも10代の子どもたちの罹患率が高くなっているのです。およそ70人に1人の割合で子どもたちはグルテン不耐症であるともいわれているのです。
セリアック病発症には遺伝的要素や環境的要素が大きく関わってきます。日本で比較的セリアック病の患者が少ない理由には白血球の血液型HLAを持つ人が少ないこととグリアジンの摂取量が少ないことが挙げられます。それでも胃腸への感染や手術などを引き金として、日本でも性別や年代に関係なくセリアック病を発症する可能性があるのです。
大人と子どもで症状に差があるのですか?
セリアック病は一度発症すると完治が難しい病気です。成人の場合には筋力低下や食欲不振と下痢症状が見られます。
子どもの症状としては、大人と同様の症状が現れる場合もあれば比較的症状が出にくい場合もあるのです。ただ虚弱で成長が遅くなる傾向があり、低身長や貧血などの栄養吸収の不足が原因と思われる症状が見受けられます。
完治の難しい病気ではありますが、一生上手く付き合っていく病気と考え定期的に検査や治療を行うことで安定した状態を保つことは可能です。
合併症などのリスクはありますか?
セリアック病そのものと合併症の発症についてはそれほど多くありません。ただリスクとしては甲状腺疾患やリンパ腫に罹りやすいことが挙げられます。
セリアック病に20年以上の長期間罹っている患者の場合、6~8%の割合で発症します。セリアック病では腸管の炎症が頻繁に起こり、リンパ球が増殖するのです。そのためにリンパ腫を発症しやすいのは事実です。
もちろん定期的な診断や治療を受け、グルテンフリーの生活を守ればリスクは下がります。リンパ腫や癌の早期発見のためには定期的に組織検査を行うことが大切なのです。
セリアック病の治療法
治療方法について教えてください。
セリアック病の治療方法はグルテンフリーの食事の徹底と薬剤治療です。
まず実行すべきことは、グルテンの含まれる食物を口にしないことです。小麦・大麦・ライ麦の摂取を避ける必要があり、パンやパスタだけでなく、スープや調味料にも気を配る必要があります。現在はグルテンフリーの食材も多く販売されていますが、食事に関しては管理栄養士の指導を受けると良いでしょう。グルテンフリーの食事を続けることで症状は大きく改善するのです。
重症化した場合には併せて薬剤による治療も行われます。処方されるのはアザチオプリンという免疫抑制剤です。免疫抑制剤により、免疫反応を促進するリンパ球(T細胞)の免疫反応を抑える効果が期待できます。その他副作用の点で問題のあったステロイドによる治療も副作用のほとんど無いオープンブデソニドにより効果的に取り入れられています。
どのくらいの期間で回復しますか?
セリアック病の主な症状である腹痛や下痢は、グルテンの摂取をやめることで1、2週間で改善されるでしょう。
ただ完治した訳ではありません。セリアック病は完治し難い病気で、生涯上手に付き合っていくと覚悟を決める必要があるのです。もちろん定期的に検査や治療を行うことで通常の生活は維持できます。
グルテンフリーの食事療法についても医師や管理栄養士に相談し栄養面に注意をはらうことが大切です。
グルテンフリーの食事は続けなければならないのですか?
セリアック病はグルテンに対して異常な免疫反応が生じることで起きる病気です。グルテンフリーの食生活を行うことで症状は改善されます。この食生活は生涯続くものと考えましょう。
最近ではグルテンフリーの食材や食品も多く販売されています。医師や管理栄養士に相談は必要ですが、食事療法も無理なく続けられるように変わってきています。
食品のパッケージに記載された成分を確認して、でんぷん・充填剤・増量剤などの記載があるものは口にしないようにしましょう。こういったことを徹底するためには、管理栄養士に摂取不可の食材の一覧表などを提供してもらい常に気を付けることが大切です。
栄養不足などの心配はないのでしょうか?
食品に規制のあるセリアック病の場合、確かに必要な栄養が摂れず症状を悪化させてしまうこともあります。
栄養不足を補う意味でサプリメントでビタミンやミネラルの補給を行うことは有効と考えられています。
グルテンフリーであってもバランスのよい食生活を送ることで栄養不足を補うこともでき、癌などの発症を抑えることも期待できるのです。
セリアック病の診断方法と注意点
セリアック病の診断方法を教えてください。
セリアック病の診断方法は血液中にセリアック特有の抗体が含まれるかどうか、また十二指腸の細胞壁の絨毛の損傷の有無で診断します。検査内容としては次のようなものが挙げられます。
抗組織トランスグルタミナーゼ抗体検査
十二指腸生検
脱アミド化グリアジンペプチド抗体検査
遺伝子検査
上記検査結果を受け、アメリカの消化器病学会の定めるセリアック病の診断基準に則りセリアック病と診断されるのです。この検査については現状では限られた病院で実施しているにすぎません。
注意しなくてはいけない点は検査キットを導入しているかどうか、抗体検査が可能かどうかを確認することです。キットを導入していない場合は結果が出るまで長く待たされる可能性があるので気を付けてください。
過敏性腸症候群の人はセリアック病を疑った方がよいですか?
セリアック病の症状経過は、腹痛と慢性下痢であり、一見すると過敏性腸症候群と診断されることがあります。疾患が進行し重症化すると低栄養の結果として、全身倦怠感や貧血が生じます。過敏性腸症候群は精神的なストレスや自律神経の乱れから、便秘や下痢を繰り返すなど排便に異常をきたす病気です。
精神的なものとされストレスを溜めないよう、生活サイクルを整えながら経過を見ます。抗うつ薬を処方されてもなかなか症状が軽減せず、重症化していく場合はセリアック病の可能性を考えることも必要です。
もしもセリアック病ではないかと思い当たるなら、食生活をグルテンフリーに変えてみましょう。もちろん医師の診断を仰ぐ必要はありますが、グルテンを摂取しないことで症状が改善する場合もあるのです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
セリアック病は日本ではまれな病気ですが、今後は生活様式の変化などにともない増加することが考えられる病気といえるでしょう。
発症してしまうと完治は難しいのですが、グルテンフリーの食生活で症状の軽減や寛解が期待できます。暗い気持ちにならずに定期的に診察を受け、前向きに生活することが大切なのです。
注意しなくてはいけない点は、検査は海外に委託しているケースが多いです。例えば、抗筋内膜抗体は日本では測定できず、大学病院などの基幹病院でも海外の医療機関に依頼しております。
編集部まとめ
欧米では比較的知られているセリアック病ですが、パンやパスタといった小麦製品の摂取が多くなった日本でも患者の増加がみられます。
発症までに長い期間がかかることや、発症すると生涯完治することは難しいということから、受け入れ難い病気の1つといえるでしょう。
セリアック病と診断されても、グルテンを摂取しない食生活を続けることで症状は軽減し通常の生活が可能になるのです。
定期的な診断や検査は必要になりますが、病気と上手に付き合いながら前向きに生活していきましょう。
参考文献
セリアック病、グルテンが原因で自分の腸細胞を破壊する自己免疫疾患|グルテンフリーガイド
小麦アレルギー、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症の違い|グルテンフリーガイド
セリアック病の原因や症状とは? 日本で増加傾向にある理由|Medical Note
【グルテン不耐症】子どものセリアック病の関係とは?|みんな健康
セリアック病|MSDマニュアル家庭版
グルテン除去食など、セリアック病の主な治療法|Medical Note
セリアック病とは?症状・原因・治療法を紹介!|Hapila
過敏性腸症候群について|Medical Note