すばる望遠鏡で撮影された星ABぎょしゃ座bの画像 (c) T.カリー/すばる望遠鏡

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 従来惑星の形成は、恒星誕生直後に、その周りに形成された星間物質ディスクに存在する微惑星どうしが、恒星を周回する際に衝突。合体しながら、徐々に成長していくボトムアップアプローチと呼ばれるプロセスで説明されてきた。だがNASAエイムズ研究センターらの研究者は、この常識を覆す形態を示す太陽系外惑星を発見したことを、発表した。研究論文は、4月4日にネイチャーアストロノミーで公開された。

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 この惑星は、200万年前に誕生した木星の9倍ほどの規模を持つガス惑星で、ABぎょしゃ座bと呼ばれている。この星の誕生プロセスは、ディスク不安定性アプローチと呼ばれる。最初に存在した恒星の周りの巨大な星間物質ディスクが冷えて、重力によりディスクが1つまたは複数の惑星質量の断片に急速に分裂して形成されたものと推定されるという。

 ボトムアップアプローチは、惑星が徐々に成長していくプロセスであるのに対して、ディスク不安定性アプローチは、惑星が誕生した時点で既に非常に大きな存在である。また、ABぎょしゃ座bは、恒星から93天文単位という非常に遠い公転軌道にあり、同じ系には公転軌道半径が430〜580天文単位の位置にもう1つの原始惑星の存在が確かめられている。

 これらの惑星は、ディスク回転軸が地球の方向を向いているために、ディスク回転運動を真上から観測できる状態にある。それが新しい惑星の誕生プロセスを導き出すきっかけにもなった。ABぎょしゃ座bがボトムアップアプローチでこの大きさに成長するには膨大な時間がかかるため、誕生からたった200万年で木星の9倍の規模に成長できるとは考えられないのだ。

 この観測結果は、地上のすばる望遠鏡観測データと、ハッブル宇宙望遠鏡望遠鏡観測データとの組み合わせにより、13年間にも及ぶ長期間の原始惑星公転軌道データ解析によってもたらされた。ディスク回転運動の検出は、ハッブル宇宙望遠鏡の長期間にわたる安定稼働がなければ得られなかった貴重なものであると、研究者らは主張している。

 いずれにせよ、太陽系での惑星誕生とは全く異なる惑星形成プロセスがあることが証明されたことは、驚きに値する。