日本マクドナルドHDは「最高益」の勢いをどこまで維持できるのか。

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国内で新型コロナウイルスが猛威を振るった最初の年となった2020年は、外出の自粛やテレワークの拡大で外食産業にとって極めて厳しい年となった。だが、そんな中でも激変した消費者のニーズを巧みにすくい取り、過去最高益を更新した外食企業もある。国内で2900店舗を超える「マクドナルド」を展開する日本マクドナルドホールディングス(HD)だ。

20年12月期連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前期比11%増の312億円となり、9年ぶりに過去最高を更新。直営店とフランチャイズチェーン(FC)店の店舗の売り上げを合計した全店売上高は7%増の5892億円で、こちらも過去最高を更新した。オンライン記者会見で決算内容を説明したサラ・カサノバ社長兼最高経営責任者(CEO)は、21年も新型コロナの感染が収束せずに不確実性の高い年になるとの見通しを示して「絶えず変化するお客様のニーズとご期待にお応えできるよう尽力してまいります」と述べた。

10年近く前からデリバリーやドライブスルーに注力

多くの外食企業は2020年の緊急事態宣言下で、店舗の休業や営業時間短縮を余儀なくされ、売り上げが減少して業績に打撃を受けた。日本マクドナルドHDも店内飲食の売り上げは前年割れしたが、代わりにテイクアウト、ドライブスルー、デリバリーの売り上げが大幅に増加したことが最高益の原動力となった。特にデリバリーとドライブスルーは10年近く前から日本マクドナルドHDとして注力しており、消費者が「巣ごもり」「非接触」を望むようになったコロナ下のニーズに合致した。

そのうちデリバリーでは、店舗の従業員がバイクなどに乗って運ぶ「マックデリバリー」の全国展開を2012年に開始していた。すっかり定着した「ウーバーイーツ」もマクドナルドでは17年から導入店舗を広げていた。19年には「出前館」による宅配も加わり、コロナ下の20年には全国に本格展開を果たした。

ドライブスルーについても、11年には市街地の小型店を閉めてドライブスルーを併設する郊外型店にスクラップ・アンド・ビルドする方針を掲げており、その年には自動車が通過するレーンなどを刷新して利用しやすくした新型店舗をオープン。そこから全国に拡大させていった。

価格競争に巻き込まれないための販売戦略の一環だったが...

2010年代前半は、ちょうどデフレ下で外食産業に値下げ圧力が強かった頃。デリバリーやドライブスルーの強化は、ファストフード業界の価格競争に巻き込まれないための販売戦略の一環として導入されたものだったが、当時は思いも寄らないパンデミック下で功を奏した。ちなみに当時の経営トップは、最近私生活に関する事件で名前が報じられた「プロ経営者」だ。

日本マクドナルドHDは21年12月期の連結業績予想も増収増益を見込み、営業利益は2年連続で最高益を更新する想定だ。コロナ下における消費行動の変化に対応が遅れて苦戦する同業他社を尻目に、いち早く適応した日本マクドナルドHDの強さは当面続きそうだ。