「au新プランはわかりにくい」発言の武田総務相に「無能」と批判が集まるワケ
1月18日、第204回通常国会が招集された。大臣席の武田良太総務相
菅政権が「高すぎる」とやり玉にあげている携帯電話料金。1月13日には、KDDI(au)がデータ容量20ギガバイトで月額2480円のプラン「povo(ポヴォ)」を公表し、NTTドコモやソフトバンクと合わせて3大キャリアの新プランが出そろった。
だが、これに噛みついたのが武田良太総務相(52)。KDDIの新プランに対して、「非常に紛らわしい発表で、“最安値” と言いながら結局他社と同じ値段だ。無用なトラブルがおきないよう、もっとわかりやすいやり方を考えていただきたい。非常に残念だ」とこき下ろしたのだ。
武田総務相の会見での発言に、ネットでは「どこが紛らわしいんだ」「auは嫌われてる?」との疑問の声が相次ぎ、専門家たちも首を傾げた。
すると武田氏は、1月19日の閣議後記者会見で、「音声通話をあまり利用されない方にとっては、ありがたい制度。料金プランのさらなる低廉化が進むことはいいことで、(KDDIの高橋誠社長が使った)“最安値” という言葉が誤認を導くことを懸念した」と、批判を受けてトーンダウンし、釈明したのだった。
さて、ネット民が武田氏に抱いた疑問は正しかったのか。ITジャーナリストの篠原修司氏に聞くと、「若者のユーザーにとっては、いいプランだと思います」と話し、こう続けた。
「当初、武田総務相は『非常に紛らわしい』と言いましたが、auの新料金プラン『povo』は、IT業界を取材してきた私からすると、非常にわかりやすいものです。
ドコモやソフトバンクの値下げ新プランは、一定のユーザーには不要な『通話5分かけ放題』を最初から抱き合わせて2980円にしています。
一方auの『povo』は、ユーザーが『かけ放題』をつけるかどうかを選べるようにしたんです。つまり、『かけ放題』が必要ないユーザーは、ほかの2社のプランよりも500円安く使える。かけ放題がほしい人は、他社と同じ月額2980円となるわけです。
おそらく武田大臣は、auの発表をリアルタイムで見ずにコメントしてしまったのではないかと思いますよ。総務省の大臣記者会見の発言記録を見る限り、質問した記者のほうも『最安値と言ってましたが、横並びではないか』と聞いているんですが、そもそもauはホームページでも、“最安値” とは謳っていないんです」
懸案のau新プランには、ほかの大手2社にない、先進性すらあるという。
「これまでのような“家族割で1000円引き “光回線を契約したら割引” みたいな複雑なものではなく、ユーザーごとに、“いるもの” “いらないもの” を選べるようにしたところが非常に評価できるプランなんですよ。
とくに若者層は、『通話かけ放題』は選ばないと思います。KDDIの高橋誠社長が会見で述べていますが、auユーザーの6割以上が、通話時間は一カ月で10分未満だそうです。auの通話料金は30秒で20円なので、10分間かけても400円。だから、電話のかけ放題をつけないほうが、得をするユーザーのほうが多いと言えます。
また『povo』には “トッピング” という仕組みがあって、これはドコモとソフトバンクと比べて、KDDIにとって非常に有利に働くかもしれません。この仕組みは、たとえば出張で特定の日だけ通信料が増えそうなときに、“200円で24時間だけデータ通信し放題” という使い方ができるんですね。
現在、各社のプランでは “ギガチャージ” などといって、通信料を使うぶんだけ追加しないといけませんが、だいたい500円から1000円ほどかかってしまう。それが200円で済むなら、ユーザーにとってとても大きいメリットになる。一日ごとにデータ通信量に大きな差が出る人ならば、“トッピング” のサービスはとても助かるものだと思います」
それにしても武田氏は、なぜKDDIに噛みついたのだろうか。やはり旧電電公社だったNTTは、総務省にとって特別なのか……。
「武田大臣が “ドコモびいき” か、どうかはわかりません(笑)。しかし、KDDIの高橋社長が以前『国に携帯料金を決める権利はない』と発言したことに、武田大臣は『非常にがっかり、常識で考えてほしい』と怒っているんですね。
武田大臣がそれを引きずって、KDDIに批判的になっている……とは考えすぎかもしれませんが、KDDIの新プランへの批判は明らかに捉え方がズレています。
『わかりにくい』発言の後から、ツイッターの『武田総務大臣』というハッシュタグのサジェストには、『無能』という単語が出てくるようになりました。若者のユーザーが多いツイッターでは、そういう反応をされてしまうんです
今後も武田大臣が、KDDIに対して同様の批判をするようなら、“KDDI嫌い” “ドコモびいき” という認識をネット民に抱かせてしまうことは、あるかもしれませんね」
武田大臣にとって、思わぬ “しっぺ返し” になってしまったようだーー。