伊吹藍は綾野剛しかありえない。
そんな声が回を追うごとに高まっている。


ドラマ『MIU404』(TBS系、毎週金曜よる10時〜)は、警視庁“機動捜査隊”(通称:機捜)の刑事である伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)がバディを組み、事件解決に奔走する。『アンナチュラル』『逃げ恥』の脚本家・野木亜紀子が手掛けるストーリーの面白さ、脚本の妙は言うまでもないが、そこにいるキャラクターに命を吹き込む役者陣の演技がまた格別だ。


31日に放送された第6話は、綾野演じる伊吹の相棒・志摩(星野源)の過去が明らかになるという、大注目の回。言ってみれば“志摩回”だが、その中で「何度見てもここの演技が凄まじ過ぎる…」「ここの綾野剛の演技が神レベルでヤバかった」と、視聴者の心に強く刻まれたシーンがある。(以下、一部ネタバレあり)


綾野剛が演じる伊吹藍というキャラクターは、頭で考えるより体が先に動く野生のバカ。刑事としての常識にも欠ける。明るくて人懐っこく、情に厚い。佇まいも含め少年のよう。おちゃらけた人物だが、どこかで本質を感じ取っている。

九重(岡田健史)を巻き込んで志摩の過去を探り始めた伊吹。しかし、隊長・桔梗(麻生久美子)に「面白半分に調べることではない」と釘をさされた。ここからが凄かった。


「相棒なんて一時的なもの」という桔梗に対して、「俺が4機捜に来たのがスイッチだとして」と口調自体は軽い調子で話し出したのだが、「玉突きされて入った俺が、404で志摩と組むことになって二人で犯人追っかけてその一個 一個 一個全部がスイッチで!」。感情とともに表情にも声にもみるみる熱がこもり、その本気さが伝わってくる。そして溢れ出るように言った「何だか、人生じゃん?」。第3話で、志摩(星野源)が九重(岡田健史)に、ピタゴラ装置を使って「誰と出会うか、出会わないか。この人の行く先を変えるスイッチは何か」と語る場面があるが、伊吹(綾野剛)は“むじい”言葉ではなく、いかにも伊吹らしい表現で話した。「一個一個、大事にしてえの。諦めたくねえの。」少し涙ぐみながらも最後は「志摩と全力で走るのに、必要なんすよ」と、ふっと笑ってみせた。



相棒への熱い想いが見えるこのシーンは、「なんでこんなに心に響くんだろ?」「涙が出てきた」「伊吹藍がまっすぐすぎて泣く」「こんな凄い説得の仕方、見たことない…」などと大反響。「本人と役の境目が全然ないように見えた」「綾野剛にしかできない演技」「これぞ綾野剛!っていう独特な間と言い回し」「表情の変化やばい」「綾野剛の真骨頂だった」と、綾野剛の演技に絶賛の声が続出した。


「面白半分じゃないっすよ」と話し出す一瞬前の表情から(いや、なんなら九重と呼気チェックしてきゃっきゃしているところから)、「大好き、隊長」とそそくさとシャワーに向かう九重との去り姿まで、ぜひセットで見て欲しい。その振り幅を感じられることだろう。

『MIU404』は、ちょっとした会話にもびっしり伏線が張り巡らされた作品。スピーディーにテンポよく進む展開の中で、大事な言葉の一つ一つが視聴者の心に残っている必要がある。伊吹は、一見軽い調子のフラフラ感がありながらも、奥には芯があり温かさもあるキャラクター。

サングラスをかけていることもしばしば。その表現は決して簡単なものではないと思うが、それを見事な緩急で、しかもとびきりチャーミングに見せる綾野剛は、やはりこのドラマの核。志摩(星野源)と電話で話すシーンでの「教えて」という短い一言(画面上では声だけ)にもやさしさが溢れていた。番組公式HPの撮影レポートには、綾野のアドリブ部分や現場で提案した工夫などが紹介されており、芝居にかける熱意が伝わってくる。この後どんな演技を見せてくれるのかますます楽しみになってくる。


第6話で志摩の過去は明らかになったが、伊吹の過去はまだほとんど明かされていない。“殺しても死なない男”伊吹 藍は、404になる前、どんな“一個 一個”をたどって来たのか、気になって仕方がない。



■金曜ドラマ『MIU404』
毎週金曜よる10:00〜10:54

(C)TBS