マイナンバーカードは紛失しても大丈夫? 番号が他人に知れたら…

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 マイナンバーカードの普及は、政府にとっての至上命題とも言える。その至上命題が、図らずも新型コロナウイルスの世界的流行で実現に大きく近づいた。仮に国民の大半がマイナンバーカードを所持するようになったら、今度はそれを常時携帯しているか否かが議論の対象になっていくだろう。すなわち、マイナンバーカードは運転免許証のような「すぐに取り出せるもの」になるべきか……という議論だ。

 その賛否はともかく、ここでは「もしも国民がマイナンバーカードを携帯するようになったら」という想定で話を進めていきたい。そうなった場合、怖いのはカードの紛失である。誰かに盗まれたら最後、個人情報が漏洩してしまうのではないか?

◆ICチップに「重要な個人情報」はない?

 マイナンバーカードの紛失は、やはり怖い。このカードにはICチップが内蔵されている。チップには納税や年金、健康保険等の極めて重要な情報が収められている……と思われがちだが、実はチップ自体にそれらの情報はない。ひと言で言えば、チップは「鍵」である。

 重要な情報は複数のサーバーに分散管理されていて、その時必要な情報だけをその都度取り出すという仕組みだ。さらに、オンラインでのカード利用にはパスワードが求められる。これが大きな壁となって悪用を目論む者に立ちはだかる。

 このあたりは、政府広報も回答している。柴田理恵と鈴木福を起用した動画CMで「ICチップにプライバシー性の高い情報は記録されていない」ということをPRした。また、紛失時の電話対応窓口は年中無休という点も紹介している。

 マイナンバーカードには氏名や現住所が記載されているから、例えばストーカーにそれを盗まれたら一大事だ。が、その事態は運転免許証でも起こり得る。マイナンバーカードを紛失した(或いは盗まれた)からこそ、この情報が漏洩してしまう……というのは、裏面に記載のマイナンバー以外には見当たらない。

 そのマイナンバーも、ただ数字を知っているだけでは公的利用はできない。カードに転写されている顔写真と本人を照合する段階があるから、悪用目的のなりすましは困難と判断するべきだろう。

◆マイナンバーカードを紛失してはいけないワケ

 しかし、筆者は別の角度から「マイナンバーカードの紛失は重大問題」と提言したい。マイナンバーカードの再発行は、非常に長い時間を要するからだ。

 紛失が発覚したら、とりあえず警察に遺失届を出す。そこから在住の市区町村の役場に赴くのだが、申請書類を書いたその日に発行……というわけではない。自治体にもよるが、新規発行と同様に概ね1か月以上の日数が必要とされる。これが運転免許証であれば、免許センターに行けば即日発行される。マイナンバーカードにはそれに肩を並べられるだけの交付システムがない、ということだ。

 この部分は、マイナンバーカードの利便性に大きな影を落としている。

 政府はマイナンバーと預金口座の紐付け義務化の検討に入っている。必要な額の給付金を即座に振り込むための措置という説明だが、これが国民に知れ渡るとなおさら「マイナンバーカードを失くしたら口座情報が漏れてしまう、給付金をもらえなくなる」という心理が働いてしまうのではないか。そこへ「再発行に長い時間を要する」という点は、マイナス要素以外の何ものでもない。

 ならばマイナンバーカードを持ち歩かず、自宅の金庫に眠らせておいたほうが安全と考えるのは極めて自然な流れである。

◆マイナンバーカードがやるべき「改設計」とは

 マイナンバーカードが「財布の中の守り神」になるには、新規・再発行問わずカード作成の期間を今より大幅短縮しなければならないだろう。これは改善どころか改設計になるかもしれない作業だ。残念ながら、現状の設計ではサービス利用者は余計な不便を強いられる。

 年中無休の電話対応窓口は評価するべきだが、全体を俯瞰すればその仕組みには疑問符が拭えない。やや辛口な結論になってしまうが、上記の問題が解決しないうちはマイナンバーカードは普遍的な身分証明ツールになり得ないと筆者は考える。<文/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』