「宮崎文夫容疑者の『あおり運転動画』が報じられてからというもの、通常の10倍のアクセスがありました。アクセスが集中しすぎて、サイトがダウンしたほどです。想定外のことで、ご迷惑をおかけしました」

【あおり運転動画】蛇行運転、幅寄せの末に恫喝

 こう語るのは、危険運転する車のナンバーを投稿するサイト「NumberData」の運営者・A氏だ。宮崎容疑者の「あおり運転殴打」事件が話題を振りまく中、同サイトはSNS上で大きな話題となっている。

 同サイトには、投稿者から寄せられた1万件もの“危険運転情報”が掲載されている。危険運転をした車のナンバープレートのほか、発生した日時、道路名や地名、あおり運転や幅寄せなど悪質行為の種類、車両カラーや車種などで分類されて公開されており、検索も可能。危険運転の多い車種のランキングも掲載している。

 宮崎容疑者の白いBMWについての情報も、7月時点で投稿されていた。


送検のため、茨城県警取手署を出る宮崎文夫容疑者=2019年8月20日午前6時56分 ©共同通信社

「ドライブレコーダーで撮影された危険運転の動画をよく目にするようになりましたが、SNSや掲示板など様々なサイトに分散していた。この危険運転の情報をまとめて共有できたら、安全運転の啓発につながって危険な運転を減らせるのではないかと考えました。

 サイト運営の技術を持った知人らと4、5人で運営し、費用はサイトの広告でまかなっています。今年3月に開設以来、1万件以上の投稿が集まっています。あくまで安全運転の啓発が目的なので、ここにナンバーを投稿されたことに気付いたドライバーが、今後気をつけて運転するきっかけになってくれたらと思っています」(A氏)

 A氏は、自営業の30代男性。サイト開設のきっかけは、2017年6月に起きた東名高速でのあおり運転死亡事件。無理やり停車させられた夫婦が、後続のトラックに追突されて死亡した衝撃的な事件だった。運転していた男は、危険運転致死傷罪が適用されて、懲役18年の判決を受けている。

朝方の常磐道、新東名は超危険!

「あおり運転には、時間帯や場所に大まかな特徴がみられますが、奇しくも、今回の宮崎容疑者が起こした時間と場所は、あおり運転が起きやすい条件と重なっています」(A氏)

 宮崎容疑者は午前6時15分ごろ事件を起こしているが、あおり運転は交通量の多い朝夕の時間帯、特に目的地に急ぐ心理が働いている朝方の時間帯に発生しやすいという。

 さらに、宮崎容疑者が事件を起こした常磐道での迷惑運転の投稿は多く見られるという。

「今回事件があった、常磐道は投稿の多い高速道路の一つですね。ただ、最近は新東名高速での被害が多い。新東名は最高速度が120キロの区間があるので、そこでトラブルのきっかけが起こるのだと考えられます」(A氏)

 実際に投稿されたあおり運転の動画を見ると、速度差のために“追い抜きたいのに追い抜けない”状況があおり運転の引き金になっている様子がうかがえる。新東名は、これまでの常識を超えた制限速度であるために、よりトラブルが起こりやすいという。

軽自動車やミニバン、ワンボックスカーに気をつけろ

「都市部で起こりがちで、とりわけ大阪や東海地区は多いですね。一般にイメージされている“運転の荒い地域”と重なります。車種別に見ると、意外にもスポーツカーは少なく、軽自動車やミニバン、ワンボックスカーなど一般に乗られているタイプが上位を占めています。高級外車などは、運転者も大事に乗っているせいか投稿は少ないです。

 車名として、最もよく投稿されるのはプリウスです。そもそも販売台数が多いですし、投稿時に車種が分からないと記載しない人も多いので、それだけ有名ということでしょう。今年4月に東京・東池袋で起きた高齢ドライバーが母子をはねて死亡させてしまった事故など、プリウスをめぐるセンセーショナルな印象が強くなっていますし、SNS上には悪目立ちするプリウスを撮影して『#今日のプリウス』というタグをつけて投稿するのが流行しているので、そんな影響もあるかもしれません」(A氏)

 次に、代表的なあおり運転動画を挙げてあげてもらった。

 まず、千葉県での【事例1】だ。これまでのアクセス数でトップ5に入るというこの動画には、「あおり運転」「幅寄せ」「割り込み」「暴力・暴言」など、危険運転のトラブルにみられる代表的な事例が詰まっている。

【事例1 千葉県】蛇行運転、幅寄せの末に恫喝

 投稿者の記載によれば、交通事故後の誘導に従って停止していると、後ろからクラクションを鳴らされ、動画は、発進後に物凄い勢いで追いかけられたというシーン。その挙げ句、急な割り込みをされ、急ブレーキや蛇行運転をされた。なんとか逃げるも、先の信号で停止中に車から降りてきて「出てこいよ、窓開けろ」などと怒鳴り散らし、ドアを開けようとガチャガチャとドアハンドルを動かし、窓ガラスを何度も殴ってきたという。

【事例2 群馬県】山道で割り込みされて急ブレーキ

 この動画では、強引な形で前に出た車が急減速する様子が収められている。投稿者の記載では、一車線の道路で前方の青のフィットが急ブレーキをかけるので危険に思って前にでると、この動画のように強引な割り込みされた。ちなみに、このシーン後も、15キロに渡って延々とあおり運転をされたという。

「無理やり抜いた青いフィットに対して、危ないと思ってクラクションを鳴らすのは自然な反応ですが、それを相手にムキになったと解釈されてしまい、事態が悪化したケースかも知れません。あおり運転は衝動的に起こりますから、やられた側の反応次第でトラブルが大きくなるのです」(A氏)

【事例3 兵庫県】バイパスのど真ん中に停車させられる

「これはひどい事例です。動画で撮影されているシーンの前に何があったか分かりませんが、何かトラブルがあったにせよ、道路上で求める対応とは思いません」(A氏)

 投稿されたばかりというこの動画。バイパスで走行中に突然幅寄せをされた上に、左車線から追い抜かれ、前に出るとハザードランプをつけて行く手を阻む。さらに蛇行運転して強制的に相手を停車させ、降りてきた男性は運転手に対して身振り手振りで感情を顕にしている。ドライバーの恐怖の伝わってくる映像だ。

あおりトラブルが起こりがちな「3つのパターン」

 A氏によれば、あおり運転によるトラブルが起こる局面は大きく3つだという。

(1)まずは「追い越し車線」の走行。追い越し車線での速度差が原因でトラブルになるケースが多くみられるという。

(2)そもそもの「車間距離」の不足からトラブルになるケース。あおった、あおられたの感じ方は車種によっても違う。「特にアルファードやハイエースのような大柄でフロントノーズの短い車は、普通の距離で走っているつもりでも、前を走る車があおられていると感じることがあります」(A氏)。

(3)「合流」の場面。割り込みのつもりはなくても、ちょっとした認識のすれ違いで、トラブルになるという。

あおりトラブルを回避する方法はある

 あおり運転のトラブルを避ける方法はあるのだろうか。

「まずは、あおられないことが大事ですから、追い越し車線は必要以上に走らず、車間距離をとって走る。無理に割り込んできた車にもムキにならず、構わないことです。

 そして、なにより冷静に、自分が安全に走行することだけに集中する。動画でも、『あおった側』『あおられた側』の両者がムキになって、『どちらが先に手を出したか』と巡って喧嘩になるケースが多く見られる。

 それでもあおられたら、サービスエリアやコンビニに逃げ込む。もし、道路上に止められてしまったら、周りの交通状況に気をつけながら、車から降りずに窓も閉めて対応するのが一番だと思います。ムキになって降車して言い寄ってくる人も、相手が電話している様子を見ると『あ、警察が来るな』と思いますし、ドアにロックが掛かっていたら、どこか冷静になるものです」(A氏)

 まだ続く夏の行楽シーズン。心穏やかにドライブを楽しみたい。

(「週刊文春」編集部/週刊文春)