守田と2ボランチを組んで先発した田中。果敢に前線に飛び出していく思い切りの良さも見せた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)
 7月19日に行なわれたJリーグワールドチャレンジで、来日中のチェルシーと川崎フロンターレが対戦。Jリーグを2連覇中の川崎は終了間際にレアンドロ・ダミアンが決勝点を挙げ、新指揮官フランク・ランパードが率いるチェルシーを1−0で下した。

 この試合、両チームの先発メンバーにふたりの20歳が名を連ねた。ひとりは、チェルシーの俊英MFメイソン・マウント。そしてもうひとりが、東京五輪世代で目下売り出し中の川崎MF、田中碧だ。

 今季はリーグ戦で中村憲剛や、日本代表にも選出された大島僚太、守田英正といった”お手本”となる選手たちと肩を並べ、ここまで12試合に出場。アジア・チャンピオンズリーグのピッチにも立ち、6月にフランスで開催されたトゥーロン国際大会ではU-22日本代表の主軸を張り、チームの準優勝に貢献した。

 ボランチの一角でスタメンを飾った田中は試合後、世界屈指のメガクラブに所属する選手たちとピッチ上で相対するなかで、確かな手応えを得たと明かしている。

「正直な感想を言うと、個人としては彼らともっとやり合えるんじゃないかな、と。最初はスピード感に慣れなくてプレッシャーも感じたんですが、試合中はもっとできるなと感じていましたし、敵わない相手ではないのかな、と。

 チームでボランチというポジションを任されている以上は、攻守に渡ってチームを動かすのが僕の役目。相手の全体像を見ながら、自分たちが何をすればいいのか。相手は何を一番嫌がるのかということにもっと敏感になり、対策を立てなければいけない、と改めて感じました」

 田中は65分にピッチを退くまで、積極的な姿勢を貫いた。チェルシーの猛攻に遭いながらも、守備だけではなく、どうにか前線に飛び出してゴールを狙ってやろうという気概が、プレーににじみ出ていた。

 残念ながら、世界有数のボランチと評されるフランス代表MFエヌゴロ・カンテとの対戦は叶わなかった。それでもチェルシーのボランチコンビ、クロアチア代表マテオ・コバチッチと、名手として知られるイタリア代表ジョルジーニョのプレーぶりには、大いに感じ入る部分があったという。

「ふたりとも、難しいことはしていないのに、立ち位置や、首を振る動作ひとつでボールを奪えなくなるような場面があった。(世界との)差は間違いなくあったなと思います。彼らがふたりで試合をコントロールしているような――。前半と後半でまるでチームの様相が変わったのは、ふたりのボランチの実力なのかなと思いました」

 世界と戦うために──。田中が目ざすのは、世界のトップレベルと渡り合い、個人としても相手を圧倒できるような、スケールの大きな選手へと成長することだ。

「ゴール前の質だったり、彼らのパススピードだったりボール、浮き球、足下のコントロールだったりは見習うべきもの。海外の選手のフィジカルは強いけれど、それを日本人だからと言い訳にしていたら、世界と戦えない。

 フィジカルコンタクトを含めて、もっと恐れずに戦える選手になりたいし、違いを作れる選手になりたいです。現状に満足することはないので、まだまだ自分のなかでやるべきことはたくさんある」

 この試合で再び「世界」に触れた20歳。田中の理想である”試合を決める”選手として存在感を発揮した中村の雄姿を含め、金曜日の試合で得たものは間違いなく、若武者の糧となっていくだろう。

取材・文●熊 介子(サッカーダイジェストWeb編集部)