52歳の三浦は今季、2試合でスタメン出場。Jリーグ初期から現役を続けるベテランだ。(C)SOCCER DIGEST

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 年号が変わる前に平成の出来事を振り返ると、日本サッカーは良かったと言い切れないね。

 歴史を遡る上でまず触れておきたいのは、Jリーグ発足の功労者だ。前身の日本サッカーリーグからプロ化へ尽力した中心人物は、森(健兒)さんと木之本(興三)さん。すでに韓国が1983年にプロリーグを創設し、1986年に2度目のワールドカップ出場で結果を残していた見本もあって、「このままではワールドカップに出られない」という危機感でJリーグ創設に奔走してくれた。こうしてJリーグがあるのも、必死になって活動してくれたふたりのおかげだ。心から感謝したい。

 採算をとれるか懸念もあったなか、読売クラブや日産自動車などはプロ化に積極的だった。2チームの存在もあって、なんとか1993年にJリーグが開幕。この頃の勢いは凄かったと、素直に認めたい。

 Jリーグが始まり、当時はまだバブル景気だった影響もあって、開幕の演出も豪華だったね。選手の年俸も高額で、民放も全試合を中継してチケットもほとんどのゲームで完売。アントラーズがブラジルのジーコ、ジェフがドイツのリトバルスキーといった世界的なスターを獲得した。おかげで海外からも注目され、スポーツはアマチュアばかりだった日本で、Jリーグが革命を起こしたと言ってもいい。

 プロ化で競争力が上がって日本代表の強化につながり、しっかり結果もついてきた。ワールドカップは1994年アメリカ大会の出場を逃したけど、1998年のフランス大会以降は継続して出場権を獲得している。2002年には韓国との共催でワールドカップの招致に成功し、サッカー人気も加速したね。フランス大会から本大会の出場国数が24から32に増えたおかげもあるけど、Jリーグ発足の目的であるワールドカップ出場は達成された。

 サッカー人気が高まった相乗効果で、Jリーグも成長した。初期の10チームから、今ではJ1からJ3までカテゴリーが設けられ、全国各地に55クラブができた。着実に日本サッカーは発展した。でも、本当に評価していいのだろうか。
 
 なぜなら、日本サッカーはいまだに企業に支えられたスポーツだと思うからだ。Jリーグ開幕からほどなくしてバブル景気が崩壊し、経済不況は徐々にサッカー界にも影響が及んだ。

 象徴的なクラブがヴェルディだ。1993年にJリーグ初代チャンピオンに輝き、翌年もリーグ連覇。カズやラモスを中心に黄金期を謳歌したチームは、本当に強かった。ただ、1998年に読売グループが経営から撤退し、経費削減のためにカズなどを放出すると、チームの成績も伸び悩んだ。2008年のJ2降格以降は、J1に戻れていない。

 また、フリューゲルスは、出資会社の佐藤工業が本業の経営不振によりチーム運営から退き、横浜マリノスと合併している。事実上、クラブは消滅してしまった。

 平成が終わる前には、昔なら鹿島のジーコに匹敵する大物、イニエスタが神戸に加入した。おかげで、観客動員数は増えているようだけど、親会社が楽天だからこそ海外スター獲得が実現できただけだろう。

 企業に支えられたおかげであって、日本人選手の活躍でサッカー人気が上がったと思えないんだ。下の世代から継続してスターが生まれてこないし、海外組も所属クラブで出番を得られていない選手が多い。ここ最近で言えば、ドイツにいる宇佐美や浅野は伸び悩んでいる印象だ。一方で高校サッカーで好パフォーマンスを見せたヒーローも、Jリーグですぐに活躍できる選手は数える程度しか出てこなくなった。結局、今でも騒がれるのは、52歳のカズが先発したという話題ばかり。たしかに偉大な選手ではあるけど、いつまでもベテランが目立つようではダメだよ。