若手不作の影響は今の日本代表にも及んでいる。ロシア・ワールドカップではベスト16だけど、アジアカップで準優勝に終わった現実を受け止めないといけない。日本はアジアでも勝てなくなってきているんだ。

 スター不在で日本代表の結果も出なければ、当然ながらサッカー人気も低下する。ワールドカップを自国開催した2002年のピーク時と比べれば、テレビの視聴率も落ちたよね。民放やスカパーでの中継が格段に減り、ダ・ゾーン中心の放送形態になった変化からも、サッカー人気が低下したことがよく分かる。
 
 そうなった原因は、企業によってJリーグの興行的価値ばかりが重視されていたからだ。初期の頃は表面上では華やかに見えたけど、例えば若手育成などに力を入れていたのか。そのツケは平成の終わり頃に回ってきて、今は日本人スターが不足している。イニエスタやF・トーレスなどが日本に来たけど、同じ轍を踏んではいけない。過去の反省を次につなげたいね。
 新元号の令和では、サッカー人気が他のスポーツに負けてほしくない。

 もしかしたら、敵になるのはeスポーツ(コンピュータゲームをスポーツの競技として捉える際の名称/ウイニングイレブンなど)かもね。昔のJリーグと同じくらいの人気があるし、夢はJリーガーじゃなくてプログラマーと言う子どもも多い。他には卓球がテレビで生中継されているし、フィギュアスケートの羽生結弦が結果を残してメディアでスターのように扱われている。今は個人競技の勢いが凄いんだ。

 そういう面では東京五輪で、サッカーが他の競技と比べてどれくらい集客できるか注目だ。他のスポーツより劣るようなことは避けたい。そのためには、減少傾向になりつつある少年サッカーの競技人口を増やすことに力を注いでほしい。
 
 鍵となるのは、Jリーグの理念にある「地域密着」。選手たちが所属クラブのある地域の子どもたちと触れ合い、サッカーの普及に尽力するホームタウン活動が行なわれているね。すごく良い活動だと思う。そうしてサッカーをプレーする、もしくはスタジアムに足を運ぶ子どもが増えていけば、理想的だ。

 正直に言えば、昔は「地域密着」ではなかった。もし、上手く推進していれば、人口が多い大きな町を本拠地にするチームは、クラブ規模が大きくなっているはず。でも、結果的には、札幌のコンサドーレ、仙台のベガルタ、福岡のアビスパなどは、田舎の鹿島にあるアントラーズより、クラブ規模が小さい。

 なんとしてでもプロ化させる意地でJリーグが始まり、クラブ数は10から55にまで増えた。しかし、ベースができあがっているように見えるけど、若手が育っていない現実を受け止めるべきだ。まだまだ土台が安定していると勘違いしてはいけない。

 創世記のJリーグは企業の資金で発展した側面があるけど、ホームタウン活動のような地道な努力はきっと未来につながるはずだ。これからも頑張ってもらいたいね。