また、新たな問題となっているのが、外国生まれの患者の増加だ。新規患者は’17年は前年より192人増え、1500人を超えて患者全体の約9%、20代では新規の63%を占めた。フィリピンや中国、ベトナム、ネパールなどが多く、留学や技能実習などでの来日が増加し、日本語学校での集団感染なども報告されている。

 「今後は長期ビザを申請してくる外国人を対象にした入国前の結核検査を実施する予定。目標達成には総合的な対策が必要です」(結核予防研究所関係者)

 前述の通り、結核は結核菌による感染症だ。保菌者が咳やくしゃみをすると、空気中に菌が飛び散り、それを吸い込むことで感染する。その後、菌が増殖して体の組織を冒し、発病する。

 感染してもほとんどの人は免疫によって菌が封じ込められて一生発病しない。1割程度は免疫が落ちたときに発病するが、感染しただけや、発病しても菌を体外に排出していない場合は、周囲の人に移すことはない。換気の悪い環境では感染しやすいが、菌は外に出て紫外線に当たると急に感染力を失う。

 しかし、結核菌はしぶとい菌だ。ある程度の期間は薬で抑えないとぶり返す。また、その間に薬に慣れて抵抗性の「耐性」になるので、2種類以上の薬を一緒に使うのが鉄則だ。

 最新の方式は「リファンピシン」、「ヒドラジド」という2種類の薬剤を軸に最初4剤、続いて2〜3剤を合計6カ月使うというもの。

 結核菌の耐性を作らせないためには、
(1)薬をきちんと服用する(飲んだり飲まなかったりは最悪)
(2)十分強い薬を複数組み合わせて治療する。

 不幸にもこの原則が活かされず薬剤耐久性になった人から出た結核菌で感染した人は、発病した時から耐性なので治療はかなり厄介と言われる。大切なことは、耐性を作らせないために患者と医師が連係プレーをとることだという。

 結核の初期症状は咳、痰、発熱など、風邪と似ている。長年、結核治療に携わる医師は、こうアドバイスする。
「結核の対策として、感染予防・発症予防のどちらにも共通する重要なことは、体の免疫力を高めておくことです。これを高めるには、規則正しい生活と栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動などが必要不可欠です。普段から、夜更かしなどの不規則な生活や喫煙をせずに、健康的な生活を心掛けましょう」