神戸で初練習を行ったイニエスタ。パス回しでは高質な技術を見せ、世界トップレベルの技術を披露した。写真:川本学

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 7月20日、スペイン代表のアンドレス・イニエスタがヴィッセル神戸の全体練習に初合流した。

 約80人の取材陣が待ち構えるピッチに姿を現して通訳やトレーナーと軽く言葉を交わすと、GPS測定器を付けたスポーツブラを上半身に装着。スペイン語とポルトガル語でコミュニケーションが取れるウェリントンと会話をする表情からは、自然体である様子が伺える。
 
 9時30分から行なわれた練習前にはチームメイトに挨拶をすると、拍手で歓迎された。この日は一般非公開で、メディアのみ冒頭の10分間だけ公開される予定だったが、吉田孝行監督の計らいにより約20分間の練習を見ることができた。
 ウォーミングアップのボールリフティングでは柔らかいタッチを披露。6対2のボール回しでは約5分間で1度だけ守備側に回ったものの、それ以外ではインサイド、アウトサイト、足裏を巧みに使ってパスを通していた。
 
 この日、2日前の試合に出場した選手はリカバーのみ。イニエスタはそれ以外の選手とともに汗を流した。練習後に取材に応じたイニエスタは「まず、このチームに合流して仲間とともにプレーできるワクワク感をチームメイトに伝えました。コンディションは良い感じです。もちろん休暇から戻ってきてフィット感を上げていくことは大変な作業ではあるんですが、これからチームに合流していくことに対する期待があります」と初練習の感想を語った。

 さらに「日曜日の試合に出る可能性はあると思います。コンディションは100%ではないけれど、練習を通してできるだけベストの状態で挑めるように準備したい」と次節でのJリーグデビューに意欲を見せた。
 質疑応答ではサッカー以外にも話が及んだ。初めてスペイン国外へ拠点を移すことについては、「国を変えるというのは大きな決断でしたが、それを分かった上でよく考えて決めました。期待と挑戦の意識を持ってこの国にやってきました」と改めて決意を示した。

 また、日本語の習得についても「最初は少しずつ覚えていきたいが、いろんな言葉がある中で、まず『暑い』という言葉を覚えました(笑)。仲間たちやスタッフにも教えてもらって、1週間後、1か月後にはもっと話せるようになっていたい」と意欲的だ。

 同じピッチで汗を流した渡部博文も、「最初に『日本は暑いね』や『家がまだ決まっていないんだ』という話をしました。それに『一緒に写真を撮ろうよ』とかフランクに話しかけてくれます」と、積極的にコミュニケーションを取ろうとする印象を受けた様子だ。
 背番号8を譲った三田啓貴は「コンディションがまだの状況でも、日本人には出せないようなすごいパスを出していた。ルーカス(・ポドルスキー)が出すような浮き球のスルーパスを何度も出していました」と感銘を受けおり、一緒にメニューをこなした郷家友太も「パスがすごく綺麗で、まったく浮かない。フリーマンでパスを付けたら、必ず走ったところへ戻ってくる。あの上手さを一緒にいる間に学んでいきたい」と目を輝かせていた。

 渡部は「合流初日だったけれど、自然とみんなの気持ちも高ぶっていた。必ずパスが帰ってくるので、いい動き出しをしないといけないという相乗効果が期待できるんじゃないか」とチームに与える影響にも期待を寄せている。
 
 神戸は22日にJ1リーグ17節・湘南戦を控えており、イニエスタもメンバー入りが濃厚。ホームスタジアムでのJリーグデビューの可能性が高まっている。スペインの至宝はJリーグでどのようなプレーを見せてくれるのだろうか。
 
取材・文●雨堤俊祐(サッカーライター)