結婚相手に求める条件は人それぞれですが…(写真:Fast&Slow / PIXTA)

女性の婚活の現場では、相手男性への希望条件としての「年収」は、相変わらず大きな比重を占めています。株式会社ぐるなびが運営する結婚式情報検索サイト「ぐるなびウエディング」が2018年6月に発表した最新婚活事情調査によれば、女性が男性に求める理想の年収を100万単位で見ると「400〜500万円未満」が19.4%で最も多く、400万円以上を希望する女性をすべて合算すると68.9%となり、ほぼ7割になります。

400万円以上の年収があるのは、たったの25%

結婚は経済生活ですから、パートナーの収入を気にすることは当然です。が、未婚男性の収入分布が現実的にどうなっているかはご存じでしょうか? 2012年就業構造基本調査に基づいて、年収400万を境にした全国年齢別未婚男性の構成比は、以下のとおりです。


未婚男性全体で400万円以上の年収があるのは、たったの25%です。20〜30代のいわゆる結婚適齢期の年代だけに限定するとわずか14%になります。要するに、年収400万円以上の30代までの男性を、7割の女性が希望したとすると、55%以上の女性はマッチングされないという計算になります。


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非婚化の要因として、こうした年収に限らず、男女の希望のアンマッチ問題は深刻です。女の希望が男の実情とかけ離れていたり、その逆も多いのです。

今回は、未婚男女のマッチングを阻害する要因についてさまざまなデータを取りまとめて紹介します。

まず、未婚男女の年齢および年収による分布を図解してみます。2012年就業構造基本調査より、全国の未婚の有業者だけを抽出し、年齢や年収別に、全体を100としてまとめてみました。かつて、「世界がもし100人の村だったら」というコンテンツが話題になりましたが、それの未婚男女版です。年収は男女合計の平均給与が約420万円(国税庁2016年「民間給与実態統計調査」より)であることから400万を分岐点としました。


100人中、未婚男性が57人で未婚女性が43人。仮に未婚女性が全員、この中の未婚男性と結婚したとしても、14人の男はあぶれることになります。未婚男性の数が多いのは、以前「茨城県が1位!『ニッポン男余り現象』の正体」でも紹介したとおり、20〜50代未婚男女の数を比較すると300万人も男余りであるためです(2015年の国勢調査より)。

平均給与が400万円以上なのに、400万未満の数が多すぎると感じるでしょうか。この平均400万円というのは、未婚だけの平均ではなく40〜50代人口の多い既婚者を含めての数値です。20〜30代人口の多い未婚者はどうしても低いほうに偏ります。

同年代でのマッチングは4.3倍の競争率

100人の村で見てみると、400万円以上の収入のある未婚男性はたった14人しかいません。この14人を43人で争うのだとすると、競争率3倍以上の熾烈な戦いになります。しかもこの14人のうち、20〜30代は半分の8人のみです。一方、20〜30代未婚女性は34人います。同年代でのマッチングを望むなら、なんと4.3倍の競争率になります。

年収に関係なく見た場合、40代以上の未婚者が男15人、女9人います。未婚者のうち40歳以上の占める割合が、男26%・女20%にも達しています。しかも、40歳以上だからといって、男が全員400万円以上ではなく、6割の男がそれ以下の収入しかありません。

婚活女性が高年収男性を希望したい気持ちはわかりますが、未婚男性全体の中で高年収層は圧倒的マイノリティであるという事実をご認識いただきたいと思います。当然、地域差もあります。

マッチングの重要な要素として、年収や年齢以外にもたくさんの要素があり、そのすべてをここでご披露できませんが、一部前述の年収分布比率に合わせて、私が主宰するソロもんラボで実施した未婚男女1万人を対象とした調査の結果を報告します。

まずは、「モテ要素」についてです。「モテ要素」とは、容姿のよさ(自己評価で「容姿に自信がある」)というものだけではなく、過去の生活において、「付き合った異性がいた」「異性から告白されたことがある」などの複数の要素を加味して指数化したものです。


全体で、モテに分類される人は男性で26%、女性でも31%です。私は独身研究を長く続けていますが、このモテるという能力、いわゆる「恋愛強者」は少なくとも過去30年間通して男女とも大体3割で変わりません。逆に言えば、7割は非モテです。私は、それを「恋愛強者3割の法則」と名付けています。

たとえば、男性で言うと、年収の高い方にモテが集中しているというわけではなく、年収の多寡には関係なく、どの層でも大体3割のモテ男女が存在しているという状況は変わりません。

恋愛相手に「容姿を重視するか否か」

次に、恋愛相手に対して「容姿を重視するか否か」についてマッピングしてみました。


結果は、全体で男性の77%が「容姿重視派」で、女性は半々でした。女性の場合、高収入ほど相手の男性の容姿を重視しない傾向が見て取れます(容姿を重視する人の割合は、年収400万円以上に限ると36%であるのに対し、年収400万円未満では52%に上る)。

一方、男性の場合、年収が高いほうが容姿を重視する人の割合が高く、400万円以上年収層に限ると82%にまで達します(年収400万円未満では76%)。「カネを稼いだ男が美人の女性と付き合いたがる」というトロフィーワイフの心理なのかもしれません。

しかし、残念なことに、男性の8割近くが容姿重視だとしても、女性のモテ比率=容姿のよさと解釈すると、全体で3割しかないわけで、5割の男は希望どおりにならないのです。もちろん、容姿のよさというのは絶対的なものではなく個人の感覚ではありますが。

女性は高収入男性を望み、男性は容姿のよい女性を望む。しかし、現実は、高収入男性を希望する女性の5割が余り、容姿のよい女性を希望する男性の5割が夢破れることになるのです。まさに、ここにこそマッチングできない問題があるのではないでしょうか。

日本人は男女ともに恋愛受け身体質

最後に、恋愛に対する能動意識についてまとめます。「『告白は男からすべし』は女の願望に過ぎない」の記事でもご紹介したように、日本人は男女ともに恋愛受け身体質で、能動的にアプローチできる層が多くありません。合気道の達人が試合で向かい合っているようで、互いに微動だにしないという状態が続き、一向に進展しないのです。


こちらの調査結果によると、男性は42%、女性は24%が能動的となりました。年収の低い男のほうが能動的な人の割合が若干高いですが、これは前述したモテ比率の違いと連動していると言えるでしょう。

では、実際に結婚した既婚男女と未婚男女を比べた場合、この能動意識の違いはあるのでしょうか?

未婚と既婚の男女でその差分を比較してみると、収入の低い男の場合は既婚より未婚のほうが能動的でしたが、それ以外はすべて既婚のほうが能動的です。何より、未婚と既婚とで大きな違いがあるのは女性の能動意識の差です。


収入にかかわらず、女性が能動的にアプローチするほうが結果として結婚できているという証明かもしれません。もちろん、この能動的アクションは、あからさまなものばかりではなく、「受け身の体で能動的に相手の男性をその気にさせる」ことが上手な場合もあるでしょう。

男たちに任せて物事が進展するはずがない

まとめると、6割の男は受け身であり、7割が非モテで恋愛に自信がないわけです。そのくせ、8割が相手の女性の容姿を重視するという「完全なる矛盾」に陥っているわけですから、男たちに任せて物事が進展するはずがないのです。

1980年代までの皆婚時代は、こうした「何もできない男たち」にお見合いと職場縁というお膳立てが提供されたからこそ、多くが結婚できたわけです。そうした社会的お膳立てが消えつつある中、もともと受け身で意気地のない男性をけしかけても何も起きません。これは何もイマドキの男性が草食化したわけではなく、古来よりそんなもんだと考えるべきです。

恋愛ができて、モテる男性と能動的に恋愛できる男性というのは大体3割で、それらは同一人物であると考えられます。そうした男たちは放っておいてもなんとかしていくでしょう。問題はそうできない7割の男たちのほうです。

単純に数字合わせだけをするならば、能動的な4割の男性が受け身の女性をめとり、能動的な2割強の女性が受け身の男性を上手にコントロールする。そうすれば6〜7割の男女はマッチング可能です。

あとの3割はどうなるか? 2035年には男性の生涯未婚率は3割になると推測されていますし、確実にそうなるでしょう。つまり、そうした予測からも、数字のつじつまは合っているのです。

だからといって、「能動的にいけばなんとかなる」という恋愛精神論を言うつもりはありません。人には向き不向きがあります。無理しても長続きしません。年収や容姿といった可視化された情報だけに頼るのではなく、そうした性格や内面の特性も数値化・可視化したうえでの「デジタルお膳立て」というべきマッチングの仕組み、そうしたものを具現化していく必要があると考えています。