ふじみ野駅は「ふじみ野市」じゃなくて、隣の「富士見市」にある
埼玉県内には、「富士見市」と「ふじみ野市」というよく似た名前の市が隣接して存在している。「富士見市 ふじみ野市」で検索すると「紛らわしい」「違い」「ややこしい」などの関連ワードが表示されるほどだ。
事態を複雑にしているのが、東武東上線の「ふじみ野駅」の存在だ。この駅、「ふじみ野市」には無く、「富士見市」の方にあるのである。このややこしい状況が生まれた経緯を紐解いてみた。
ふじみ野駅(京浜にけさん撮影。Wikimedia Commonsより)
ふじみ野駅の住所は「埼玉県富士見市ふじみ野東」
地名と駅名が一致しない場所は珍しくないが、ふじみ野駅と富士見市の関係は複雑だ。
まず、「ふじみ野」という地名が、富士見市内とふじみ野市内の両方に、隣り合って存在している。
ふじみ野駅は「富士見市ふじみ野東」にあるし、そこから約1キロのふじみ野市立亀久保小学校があるのは「ふじみ野市ふじみ野」だ。「ふじみ野」がゲシュタルト崩壊を起こしかねない。
更に、名前の違いが「の」の有無にかかっているので、聴感上で「富士見の市役所」と「ふじみ野市役所」は同じになってしまう、というトラブルも起こりかねない。まぁ、文脈で判断は出来るだろうが......。
このような状況を生み出した歴史を紐解くと、事の始まりは90年代前半まで遡る。
90年代前半、(もともとあった)富士見市、上福岡市、入間郡大井町、入間郡三芳町の2市2町は、合併を目指して協議を進めていた。その時、合併後の新たな名前は「ふじみ野市」にすることが決まっていた。
そんな合併に向けての協議が進められていた93年の11月、東武東上線の新たな駅として誕生したのが「ふじみ野駅」だ。東武鉄道の公式ウェブサイトによると、富士見市の市名と、「広い野原をあわせて」「ふじみ野駅」と名付けられたとのこと。市よりも駅の方が先に出来たのだ。
そして、この先走ったネーミングがのちに混乱を生むことになる。
というのも、この協議は2004年に行われた住民投票の結果、否決されてしまったため、「ふじみ野市」構想は一度白紙になっているのだ。
その後、上福岡市と大井町の1市1町のみで合併を協議。05年に現在の「ふじみ野市」が誕生するのだが、その際には富士見市は不参加だったため、「富士見市」と「ふじみ野市」という似た名前の市が隣接することになった。「地理的、地域的にふさわしい」、「わかりやすく、親しみやすい」などの応募理由が多かったという。
合併に伴って、旧大井町大字亀久保の一部は「ふじみ野市ふじみ野」に。また、2010年には富士見市大字勝瀬の一部が「富士見市ふじみ野東」「富士見市ふじみ野西」になった。上手くいかなかった市町村合併や、住民の意思などが複雑に絡み合い、現在の状況が生まれたのだ。