「本人が『相撲が取れる状況じゃない』と。簡単な決断ではなかった」

 七月場所が荒れに荒れている。六日目、大関・照ノ富士に続き、横綱・稀勢の里(31)が左足関節靭帯損傷で、途中休場に追い込まれた。冒頭の田子ノ浦部屋の関係者によると、「その予兆はあった」と明かす。

「あ〜っ!」
 稀勢の里の表情が歪み、稽古を中断したのは場所直前のこと。それを見ていた多くの担当記者は、「左上腕の怪我が再発したのでは」と眉を曇らせた。

 だが、前出の関係者によれば「痛いと言って途中でやめたのは、左足首を捻ったから」。当初は軽傷と楽観視されていたが、思いのほか足首はダメージを受けていた。それでも稀勢の里は出場した。

「彼の横綱に対する思いは誰よりも強い。強行出場の理由は、責任感と名古屋の人たちに初めて横綱の姿を見せたいという思い。懸賞金が七月場所最多となったことも、少なからず影響したはず。現役中は、すべてを土俵に懸けるという覚悟がある」(担当記者)

 その覚悟を物語るエピソードがある。大関に昇進後、稀勢の里には将来を意識した女性の存在があった。部屋近くのスーパーで仲よく買い物をしている姿がたびたび目撃され、行きつけのちゃんこ料理店では、馴染みの客に「従姉妹です」と紹介するなど、微笑ましいエピソードを残している。

「偶然、上野でのデート現場を見かけたことがあります。 187cmの横綱に対して、150cmほどの小柄できれいな感じの女性でした。場所中の険しい表情とは一転、笑顔で幸せそうな感じだったことを覚えています。2人は、中学時代の同級生だったと聞いています」(後援会関係者)

 だが、そんな2人の関係も突然、別れを迎えることとなる。

「横綱の父・萩原貞彦さんは、常々『現役を引退するまでは相撲のことだけを考え、1回でも多く優勝賜杯を抱き、 先代の恩に報いるように』と、相撲に集中するよう助言していた。また、当時大関だった本人も、『自分は不器用な人間。一度にふたつのことはできない』と、綱取りへの道を決断した。そのために2人は、別れを選んだのです」(前出・後援会関係者)

 不器用ゆえに、愛する女性と袂を分かち相撲道に邁進。ついには横綱、角界の頂点を極めた。

 2場所連続の途中休場に、“短命横綱”に終わるのでは、と危惧する声も囁かれる。怪我を完治させ、完全復活を遂げることこそが、過去の決断に応える唯一の方法だ。

(週刊FLASH 2017年8月1日号)