ソフトバンク・古谷優人【写真:荒川祐史】

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和田直伝の2シームを封印したドラ2古谷「ここでラクをしても成長しない」

 もはや、そのレベルにはないのかもしれない。ソフトバンクのドラフト2位ルーキー、古谷優人投手のことだ。24日、タマホームスタジアム筑後で行われたホークス3軍と、四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンパイレーツとの定期交流戦。最速154キロを誇る左腕が先発マウンドに上がり、6回を投げて、許した安打はわずか2。無失点に封じる好投だった。

 許した2本の安打も、痛打されたものではない。初回2死から、ドミニカ人のポロに許した二塁打は、どん詰まりの打球が右翼線にポトリと落ちたもの。2回先頭の古川の安打も、詰まった当たりが二遊間に飛んだ二塁内野安打と、2本とも不運な当たりだった。3回以降はパーフェクト投球。5個の三振を奪い、6回を81球で片付けた。

 結果は秀逸ではあったが、古谷本人は「今日は良くなかったですね。球速もあまり出ていませんでしたし、いい球がいったと思っても、142キロとかだった。悪い中で低めに集めてゴロを打たせることは出来ましたけど……」と言う。この日の最速は147キロ。初回は140キロ台中盤をマークしていたが、2回以降は140キロ台前半がほとんどだった。

 この日も真っすぐとスライダーが組み立ての大部分を占め、カーブをいくらか交えた程度。練習中のチェンジアップはまだしも、以前に記した「和田毅直伝」の2シームも使わなかった。なぜか――。「2シームを使うと、ラクになるんです。でも、ここでラクをしても、それでは成長しないと思うので」と、飽くなき向上心に基づく狙いだった。

6回無失点、結果を残す裏で…

 調子が悪い、なおかつ球種を限定した中で、6回2安打無失点と、文句のつけようがない結果である。だが、左腕が「良くなかった」というように、この試合を見ていて感じたのは、これまでに感じた躍動感、迫力が乏しかった。それでも抑えられてしまうのだから能力が高いのだろうが、少し気になった。

 思い当たる点がある。遡ること4日前。古谷はホークス2軍と3軍による紅白戦で1イニングを投げた。ここまで独立リーグの打者との対戦だけだった左腕にとって、初めてプロの打者と対戦する機会だった。

 塚田、高田、江川といった1軍経験もある先輩と対峙し、江川には中堅フェンス直撃の適時二塁打をかっ飛ばされた。全力で真っ向勝負する姿、そして、試合後に反省はしつつも「楽しかった」と笑う表情が印象的だった。

 ここなのではないか。今季はここまで四国アイランドリーグplusとの交流試合で7試合に登板(先発は6試合)。失点を喫したのは、4月30日の徳島インディゴソックス戦(タマスタ筑後)の1試合のみ。この時は4回7安打5失点(自責2)だったが、急激に気温が上がり、北海道で生まれ育った古谷にとって暑さが堪えた部分があった。

7試合で防御率0.55、NPB球団と初対戦「打たれないと、ダメなところは出てこない」

 この7試合で33イニングに投げて自責点2、防御率は0.55である。左腕にとって、もはや、独立リーグは物足りない相手となっているのではなかろうか。気が抜けるといっては語弊があるが、気持ちの昂ぶり、モチベーションが、本人の気付かないところで十分に沸いていない、そんな印象を感じた。

 今季がルーキーイヤーで、体作りが最優先、怪我のリスクを避けて大事に育てたいというチーム方針は十分に理解出来る。課題も、まだまだあるだろう。それでも、一度でいいから、ワンランク上の2軍の舞台でどれほどのピッチングが出来るか、試してもらいたいのである。

 幸いにも、3軍は27、28日に舞洲サブでオリックスのファーム、30、31日に由宇で広島のファームと交流試合が組まれている。最速154キロの左腕は31日の先発が有力。他のNPB球団と初めての対戦でどんなピッチングを見せてくれるだろうか。

「打たれないと、ダメなところは出てこない」とこぼした古谷。18歳の大器は、目の前に立ちはだかる高い壁を求めているのではないだろうか。

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani