サッカー・J1リーグにおいて、2015年シーズンから復活した「Jリーグチャンピオンシップ」。12年前の2005年シーズンまでは、リーグを1stステージと2ndステージに区切り、両ステージの王者が頂上決戦としてJリーグチャンピオンシップを戦う仕組みで行われていた。

 

復活後は1stステージ王者、2ndステージ王者に加え、年間勝ち点1位〜3位までのチームにも参加権が与えられ、最大5チームで優勝を争うトーナメント形式となった。しかし、大会方式の複雑化や、公平性の欠如などに疑問を抱いたファン・サポーターからは、実施決定の際に不満の声も聞かれた。

とはいえ、準決勝と決勝がともに地上波で放映されるなど、メディアの注目度が高い大会であったことに違いはないが、Jリーグチャンピオンシップの存在は一般層にどれほど認知されていたのだろうか。

 

※Jリーグチャンピオンシップの大会認知率と大会観戦率(2016年)

上記のデータを参考にすると、大会の認知率は2016年3月時点で惜しくも全体の半数に満たなかった。だが、Jリーグチャンピオンシップを終えた12月下旬では約2パーセント上昇し、その認知率は半数を超えた。この要因には、先に述べたように地上波で放映されたことが考えられ、大会の観戦率に目を向けても大会認知者の4分の1が「観戦した」と答えている。決勝で年間順位3位の鹿島アントラーズが、年間1位の浦和レッズを破ったという“下克上”が話題を呼んだことも、認知率の向上に影響しているだろう。

 

しかし、認知率が半数を超えたとはいえ、地上波放映や下克上などの話題性がありながら、3月から12月にかけてわずか2パーセントの上昇に留まっている。チャンピオンシップ制度導入によって「優勝決定戦」という大きな試合が用意され、新規顧客の獲得が期待できたが、一般層への認知を図りきれなかった印象だ。地上波での生中継は行われたものの、事前・事後の報道が不足していたことも考えられる。

 

 

そして、Jリーグチャンピオンシップ制覇を果たした鹿島アントラーズに与えられたのが「FIFAクラブワールドカップ2016」への出場権だ。ヨーロッパ王者や南米王者など、世界各6大陸の王者に輝いたクラブチームが日本に集結し、クラブ世界一を争う同大会に、“開催国枠”での参戦が決まった。

 

※FIFAクラブワールドカップの大会認知率と大会観戦率(2016年)

FIFAクラブワールドカップは2005年に新設以降、たびたび日本で開催されていたことから、一般層にも一定の認知度がある。Jリーグチャンピオンシップ終了5日後から10日間に及んで開催されたが、5位決定戦や3位決定戦を含む全8試合中4試合が地上波で放映され、観戦率はJリーグチャンピオンシップを約5パーセント上回った。

 

興味深いのは、FIFAクラブワールドカップもJリーグチャンピオンシップと同様、3月時点よりも12月下旬の大会終了後に認知率が上がっていることだ。ヨーロッパ王者のレアル・マドリードが来日し、世界的人気を誇るクリスティアーノ・ロナウドが活躍したことを考えれば、当然と言えるかもしれない。

しかし、それ以上にインパクトを与えたのは、日本の鹿島アントラーズが決勝に進出したことだろう。決勝ではレアル・マドリード相手に延長戦まで持ち込み、最後は2-4と敗れたものの、世界一にあと一歩のところまで近づいた。その快進撃が、大会の認知率と観戦率に影響したのではないだろうか。

 

スポーツにはドラマがある。今回取り上げたJリーグチャンピオンシップとFIFAクラブワールドカップも、1つのクラブチームがドラマチックな展開を繰り広げ、周囲の感動を呼んだことが、大会自体の注目度に影響を与えたはずだ。

一方で、両大会とも開催後に認知率は向上したものの、飛躍的な変化は得られなかった。劇的な展開だったにも関わらず、このような結果に終わったことは、業界にとってはマイナス面とも捉えられる。今シーズンからJ1リーグはチャンピオンシップ制度が廃止され、再び1シーズン制に戻ったが、昨シーズンを超える様々な感動がもたらされることを期待したい。