「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「赤」。真っ赤なポインセチアが、冬枯れの街を彩る季節です。



「赤」という字の甲骨文字は、チューリップの花の上で人が踊っているように見えます。

「赤」という字の上の「土」の部分は「ヒト」を、チューリップの部分は「炎」を表しているようにも思えます。

白川文字学で「赤」という漢字は「大きい」という字に、燃える「火」を組み合わせた形。

「大」は手足を広げて立つ人を正面から見た様子をあらわし、これに「火」を加えて、穢れをはらい清める儀礼を意味しています。

神事や祭りで焚かれる「赤い火」は、信仰心を深める大切な要素。

人類が畏怖の念を抱き、同時に安らぎを得る特別な色でした。

また、「赤子」とは生まれて間もない子のこと。

赤い心、と書く「赤心」はうそいつわりのない心。

「赤裸々」とは、あからさまで、包み隠すことのない様子。

「赤」という漢字は「はだか」や「あるがまま」という意味でも用います。

命をはぐくむ太陽、光や熱をもたらす炎、熟れた木の実や果実。

そして、戦で傷ついたときに流れ出る血潮。

赤は自分たちが生き延びる術を示す色であり、同時に、危機を知らせる色でもありました。

やがて人は、赤がもたらす絶大な力を利用するようになります。

土偶や埴輪の顔の部分を染める赤は、悪霊の進入を防ぐための魔よけ。

戦国時代、よろいかぶとや陣羽織、旗指物にいたるまで、あらゆる武具を赤く染め上げて戦ったのは「赤備え(あかぞなえ)」。

武田軍や真田軍が編成したといわれるこれらの部隊は、敵から目立つ赤をまとうことで、優れた武将が率いる精鋭部隊であることを印象づけ、自らの士気を鼓舞したといわれています。

ではここで、もう一度「赤」という字を感じてみてください。

二十五年ぶりにセ・リーグ優勝を飾った広島東洋カープ。

近年まれにみる大接戦の末、日本一は逃したものの、その健闘ぶりに、チームカラーの赤が目に染みたという人も多かったはず。

一方、世界の注目を集めたアメリカ大統領選の結果は、共和党支持を意味する赤の州が優勢となり、ドナルド・トランプ氏が次期大統領の座を獲得しました。

世の中が予想外の「赤」に染まって終わろうとしている、二〇一六年。

そんな今年一年を、あなたらしい歩幅で歩いてこられたでしょうか。

うそいつわりのない心を意味する「赤心」とは、ありのままの自分を大切にする心でもあるのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『色はことのは』(末永蒼生/文、内藤忠行/写真 幻冬舎)

12月17日の放送では「納」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/



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聴取期限 2016年12月17日 AM 4:59 まで

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