肉眼でも見ることができる、オリオン座の三ツ星付近に存在する「オリオン大星雲」。膨大な量のガスや星間物質が集まってできたとされるこの大星雲の新たな姿を、国際チームがヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTとHAWK-Iの赤外線観測装置を利用して撮影することに成功しました。
 
オリオン大星雲は地球から約1,350光年の場所に位置します。この星雲は「星が生まれる場所」としても有名なのですが、今回の観測では従来の予想の10倍もの褐色矮星や低質量の惑星が発見されました。なお、褐色矮星とは太陽ほどの質量がないために、核融合が続けられずにだんだんと冷却している天体を指します。
 
このような予想を上回る量の褐色矮星や低質量な惑星の存在は、オリオン大星雲において星が生成されている部位が従来の予想よりも少ないことを予測させます。これまで星の生成過程は星の数と質量の関係(初期質量関数)によって決定されていたのですが、今回のオリオン大星雲の観測によってそのモデルが変更を迫られることになりそうです。
 
今後ヨーロッパ南天天文台はチリに「欧州超大型望遠鏡」を建設し、観測を開始します。欧州超大型望遠鏡は複数の鏡を組み合わせることで39メートルクラスの主鏡を搭載する世界最大の望遠鏡となり、ハッブル宇宙望遠鏡よりも詳細な天体観測を行う予定です。さらに数年以内にはハッブル宇宙望遠鏡の後継となるNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も稼働を開始しますし、私達が宇宙の新たな姿を知る日が刻々と近づいているようですね。
 
Image Credit: ESO/H. Drass et al.
■Latest look beyond Orion’s clouds forces star birth model rethink
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